もうすぐ3月です。次第に日の出の時刻が早くなり、出勤時が明るくなってきて気分良く職場に向かうことができます。株式相場も世界的にFRB(米連邦準備制度理事会)の金融スタンスの変更や、米中貿易問題での妥協成立を見越して比較的堅調です。ただし一方では、企業業績にかげりが見えるためか、東京市場の株式出来高の水準は低く、相場はやや力強さに欠ける印象があります。
このような株式市場の環境下、良好な投資パフォーマンスを得るためには「ひと工夫」が必要かもしれません。そこで、今回の「新興株ウィークリー」では、3月末で権利が取れる高配当銘柄を、スクリーニングにより抽出してみました。より安全にインカムゲインの確保を目指すことにとどまらず、業績面でも好調で、キャピタルゲインも積極的に狙っていくことを目的にしています。皆様の投資のご参考になれば幸いです。
それではさっそく、スクリーニングを実施してみたいと思います。今回の条件は下記の6点です。
(1)東証マザーズまたはJASDAQ上場銘柄であること
(2)3月決算銘柄であること
(4)会社予想配当利回りが3.5%超であること
(5)今期の会社予想経常利益が黒字かつ増益の見込みであること
(6)今期予想配当性向が60%未満で、成長と配当のバランスが良好とみられること
上記のすべての条件を満たした銘柄について、予想配当利回りの高い順に並べたものが表1となります。これらの銘柄は、高配当利回りはもちろん、好業績予想銘柄でもあり、キャピタルゲインも積極的に狙っていくことが可能な銘柄であるとみられます。
表1:新興市場の高配当利回り銘柄はコレ!?
取引 | チャート | ポート フォリオ |
コード | 銘柄名 | 株価(円) 2月26日 |
予想配当利回り | 予想一株配当金 (円) |
予想経常増益率 (%) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
追加 | 9687 | KSK | 1,945 | 4.8% | 94 | 0.8% | ||
追加 | 9888 | UEX | 663 | 4.7% | 31 | 9.5% | ||
追加 | 7551 | ウェッズ | 620 | 4.5% | 28 | 1.4% | ||
追加 | 7523 | アールビバン | 667 | 4.5% | 30 | 106.3% | ||
追加 | 6889 | オーデリック | 3,865 | 4.4% | 170 | 3.6% | ||
追加 | 8893 | 新日本建物 | 229 | 4.4% | 10 | 25.6% | ||
追加 | 5990 | スーパーツール | 2,314 | 4.3% | 100 | 21.6% | ||
追加 | 6254 | 野村マイクロ・サイエンス | 727 | 4.1% | 30 | 9.0% | ||
追加 | 9696 | ウィザス | 403 | 4.0% | 16 | 44.4% | ||
追加 | 5820 | 三ッ星 | 1,570 | 3.8% | 60 | 13.2% | ||
追加 | 6337 | テセック | 1,311 | 3.8% | 50 | 57.3% | ||
追加 | 2763 | エフティグループ | 1,418 | 3.8% | 54 | 14.4% | ||
追加 | 5280 | ヨシコン | 1,140 | 3.7% | 42 | 10.3% |
- ※弊社スクリーニングシステムおよび会社資料等よりSBI証券が作成。予想配当利回り、予想一株配当金、経常増益率はいずれも会社側の予想数字を使って作成。UEX(9888)の会社業績予想はゾーン表示のため、ゾーンの中間値を採用した。また同社は配当金の予想を公表していないが、3Qまでの業績が好調である上、中間配での増配を実施していることから、前期と同様の配当を実施すると仮定した。KSK(9687)の期末配当には記念配が含まれている。予想配当利回りは年間の配当をすべて受け取った場合の利回りになる。また、スーパーツールは株式併合を行っており、予想一株配当金の数値はそれを勘案した実質的数値から計算。
高配当銘柄への投資で一番注意しなければならない点は、減配のリスクです。減配が発表されれば、株価は値下がりし、キャピタルロスが発生する可能性が高く、配当によるインカムゲインが帳消しになってしまう恐れがあります。また、会社によっては配当政策で配当性向のメドを設定する利益連動型の制度を採用している企業もあります。この場合、決算が減益となると減配が実施される可能性が高い(逆に増益になれば増配)ことに注意が必要です。したがって、各社の業績動向には十分注意が必要だと思われます。
また、配当や株主優待を狙う投資家の買いは3月末にかけて盛り上がり、それ以降はいったん収束するという傾向があります。特に「権利落ち」の直後は反動で売り優勢になりやすいので注意が必要です。
なお、配当利回りは年間の配当をすべて受け取った場合の利回りである点に注意が必要です。例えば、表1のウェッズ(7551)は上期末に一株10円の配当を実施済みで、期末(下期末)には同18円の配当を実施する計画となっています。この場合の予想年間一株配当金は28円(10円+18円)で、これを株価(2/26)である620円で除した数字が「予想配当利回り」の4.5%になっています。この銘柄を現在保有していない投資家が、3月末までにこの銘柄を買い付け、仮に権利落ち直後に買い付けた時と同じ株価で売却した場合、それでは「4.5%」という利回りを確保できないことになる訳です。
ただ、企業によっては期末配の1回のみで、年間の配当金を全額支払う会社もあります。この場合には権利落ちによる株価の下落を考慮しなければ、短期間でインカムゲインを効率よく取得できる計算になります。表1でこれに該当する年1回の配当金支払いを実施しているのは、KSK(9687)、新日本建物(8893)、野村マイクロ・サイエンス(6254)、三ッ星(5820)、テセック(6337)、ヨシコン(5280)の6社です。逆にアールビバン(7523)の場合、配当金は中間配当と期末配で均等に分配される見通しです。
なお、表1に掲載されたすべての銘柄について、権利付最終日は3/26(火)になっています。2019年3月末付の配当の権利や株主優待を獲得するためには、この日までに買い付けておく必要があります。また、表1の銘柄の中で、現時点で株主優待制度を導入しているのは、ウェッズ(7551)1社でした。優待内容は1000株以上の株主に対し、所有株数に応じクオカードが配布されます。詳しくは弊社のHPの同銘柄の「株主優待」をクリック、あるいは同社のWEBサイトからご確認下さい。
東証マザーズ指数の2/26(火)の終値は932.61と、2/19(火)の終値883.01から5.6%の大幅続伸となりました。時価総額の大きいメルカリ(4385)、そーせいグループ(4565)の上昇が大きく寄与しています。メルカリに関しては、昨年12月半ばに赤字の英国での事業からの撤退発表が株価反発の契機となっています。それ以外ではアンジェス(4563)の株価が急上昇しました。同社が開発した血管再生の遺伝子治療薬(国内初)の承認が期間限定付きで了承されたことが材料となっています。
JASDAQ市場は、指数で0.7%の小幅上昇と日経平均並みでした。銘柄別では、時価総額の大きいワークマン(7564)の上昇が目立ちました。同社が2/21(木)に1株→2株への株式分割を発表したのが手がかりでした。時価総額の大きいハーモニック・ドライブ・システムズ(6324)は、これまでの急騰の反動で値を下げました。
※東証マザーズ指数について:東証マザーズ市場は近い将来東証1部へのステップアップを視野に入れた成長企業向けの市場です。マザーズ指数は、マザーズ市場に上場する全銘柄の時価総額加重平均型の指数です。ただし、一部の時価総額の大きい銘柄の影響度が大きい点に注意を要します。ちなみに1月末のマザーズ市場の時価総額に占める、サンバイオのシェアは10.7%、メルカリが6.1%、ミクシィが5.6%などとなっています。
図1:東証マザーズ指数(日足)
図2:JASDAQ平均(日足)
- ※図1、図2ともに当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
表2:主要株式指標の騰落率(2/19〜2/26)
指数 |
終値(2/26) |
騰落率 |
---|---|---|
日経平均株価 |
21,449.39 |
0.7% |
東証マザーズ指数 |
932.61 |
5.6% |
JASDAQ平均株価 |
3,455.58 |
0.7% |
表3:主要新興市場銘柄の騰落率(2/19〜2/26)
コード |
銘柄 |
終値(2/26) |
騰落率 |
---|---|---|---|
マザーズ市場の時価総額上位銘柄 |
|
||
4592 |
サンバイオ |
2,783 |
-0.6% |
4385 |
メルカリ |
3,275 |
15.4% |
2121 |
ミクシィ |
2,690 |
-1.8% |
4565 |
そーせいグループ |
1,225 |
8.1% |
7779 |
CYBERDYNE |
692 |
-4.6% |
JASDAQ市場の時価総額上位銘柄 |
|
||
2702 |
日本マクドナルドホールディングス |
4,995 |
0.0% |
6324 |
ハーモニック・ドライブ・システムズ |
3,935 |
-5.1% |
7564 |
ワークマン |
7,850 |
6.1% |
2782 |
セリア |
3,735 |
-1.1% |
6425 |
ユニバーサルエンターテインメント |
3,610 |
2.7% |
直近上場銘柄・市場で話題の銘柄 |
|
||
3967 |
エルテス |
1,975 |
-5.9% |
4593 |
ヘリオス |
1,842 |
8.0% |
6572 |
RPAホールディングス |
3,220 |
-1.5% |
4384 |
ラクスル |
3,905 |
2.5% |
4563 |
アンジェス |
1,190 |
77.6% |
- ※表2・表3はBloombergデータをもとにSBI証券が作成。騰落率は2/19(火)終値と2/26(火)終値の比較による。時価総額は1月末基準。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
- ※NISA口座で上場株式等の配当金を非課税で受け取るためには、配当金の受領方法を「株式数比例配分方式」に事前にご登録いただく必要があります。
- ※信用取引において必要となるその他諸費用の詳細は信用取引のサービス概要をご確認ください。