7/1(月)の早朝にうれしいニュースが飛び込んできました。F-1の第9戦オーストリアGPでホンダのエンジンを搭載したレッドブル・チームが優勝しました。ホンダにとっては実に13年ぶりの優勝です。
ホンダは1980年代後半から1990年台初めにかけて伝説のドライバーである故アイルトン・セナ(故本田宗一郎氏がかわいがっていた)を擁し、黄金時代を築きました。ただしその後リストラの一環で撤退して、2015年にF-1に復帰しています。それ以降の4年間は長いブランクの影響で成績は振るわず、メルセデスとフェラーリの後塵を拝してきました。この間のホンダのエンジニア達の苦闘は、NHKのBS1スペシャルで4回にわたって放送されています。今回のエンジンには同社が航空機製造(ホンダジェット)で培った技術が応用されているそうです。やはりホンダはこうじゃなければ・・・。第17戦の鈴鹿サーキットで行われる日本GP(10月)は、久しぶりに盛り上がりそうです。チケットの値段がやや高いのがネックですが、F-1は現場で見ると、強烈なエンジン音、車体の風切り音、タイヤの溶ける匂い、ブレーキ時に熱で真っ赤になる炭素繊維製のブレーキ・ディスクなど五感全てに訴える素晴らしいものがあります。お勧めです。
G20での米中貿易戦争の「一時停戦」、中国通信機器大手ファーウェイ(華為技術)と米国企業等の取引維持が容認され、世界的なサプライチェーンの混乱が避けられたことなどが背景となって、東京市場の株価は急反発となりました。7月末には米国の政策金利が引き下げられるとの見方が支配的です。このため、短期的に株式市場はリバウンド局面を迎える可能性が出てきているように思われます。
そこで、今週の「新興株ウィークリー」では、今後のリバウンド候補銘柄として、最近の株価は大きく下落しているものの、業績が好調そうな銘柄をピックアップしてみました。皆様の投資のご参考になれば幸いです。
マザーズ市場の特性として、東証1部との比較では、流動性が低く、成長企業が多いためPERを始めとするバリュエーションが高いということが指摘されます。このため、米中貿易摩擦など株式市場にとっての不透明要素が現われ、株価が下がるケースではマザーズ市場のパフォーマンスは日経平均などに比べ割り負けするケースが多くなります。
ただし、その逆のケースではマザーズ市場の株価パフォーマンスは日経平均を上回るケースが多くなります。先週の日経平均とマザーズ指数はその通りの展開となりました。米中の本質的な覇権争いは当面解決が難しいと思われますが、米中交渉の破綻リスクが後退したこと、7月末のFOMCでの政策金利引き下げ期待や、需給関係の揺り戻しもあり(ネット裁定残高が大幅なマイナス)短期的な株価は、強含む可能性が出てきました。
そこで今週の「新興株ウィークリー」では、新興市場のリバウンド候補銘柄をピックアップしてみることにしました。それでは早速スクリーニングにより、銘柄を抽出してみたいと思います。今回の条件は、下記の5項目です。
(1)東証マザーズまたはJASDAQの上場銘柄であること
(2)今年の年初来高値から株価が40%以上下落していること
(3)今期の会社側経常利益予想が30%以上の増益であること
(4)前期実績の税引後利益が黒字であること
(5)時価総額が100億円以上であること
上記の全条件を満たす6銘柄を株価下落率が大きい順に並べたものが表1となります。
表1:リバウンド狙い、好業績の新興株はコレ!?
取引 | チャート | ポート フォリオ |
コード | 銘柄名 | 株価(円) 7月2日 |
今期会社予想 経常増益率 (%) |
年初来高値からの 株価下落率 (%) |
時価総額 (億円) |
主な事業内容 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
追加 | 7172 | ジャパンインベストメントアドバイザー | 1,866 | 57.6 | 58.1 | 564 | 航空機のリース業、太陽光発電商品 | ||
追加 | 4425 | Kudan | 11,300 | 106.6 | 55.1 | 780 | AP(人工知覚)を専門に研究開発 | ||
追加 | 3989 | シェアリングテクノロジー | 770 | 210.6 | 52.2 | 142 | 住まい関連トラブルのマッチングサイト | ||
追加 | 6046 | リンクバル | 777 | 39.6 | 51.1 | 152 | 街コンなどイベント情報のECサイト運営 | ||
追加 | 4424 | Amazia | 3,260 | 266.1 | 48.8 | 108 | 無料購読の漫画アプリ「マンガBANG!」 | ||
追加 | 7826 | フルヤ金属 | 3,380 | 40.7 | 42.9 | 246 | 結晶製造るつぼ、金属ターゲット材 |
- ※各社公表データ等を用いてSBI証券が作成。シェアリングテクノロジー(3989)はIFRS採用のため増益率は税引前利益の比較。
それでは表1で抽出された銘柄の一部について、チャートと注目ポイントを簡単にご紹介したいと思います。
ジャパンインベストメントアドバイザー(7172)は、2014年にマザーズに上場した航空機のオペレーティング・リース(物件価格から残存価値を差し引いた金額でリース料金を設定)を主力とする会社です。航空機以外にも船舶やコンテナのオペレーティング・リース、太陽光発電、航空機の部品販売・改造なども手がけています。世界的な航空機需要の増加と、上場による資金調達力の向上も手伝い、主力事業の拡大が続いています。リース資産のオンバランス化(IFRS会計基準移行)によるリース市場への影響を懸念して、株価は下落傾向にありますが、同社の顧客はもともとIFRS準拠のグローバル企業が多く、影響は軽微と考えられます。直近では墜落事故を起こしたボーイング737MAXの同社の10機の発注残が、株価的には嫌気されている可能性がありますが、納入は2021年以降のため大きな問題はなさそうと考えられます。
Kudan(4425)は、2018年12月にマザーズに上場したコンピューターやロボットなどの機械に、視覚を付与する人工知覚の研究開発会社です。英国に研究開発拠点を有し、日本法人が管理業務および市場開拓を行っています。AI(人工知能)の発展を受けて、機械と人工知覚を融合することにより、様々な分野の製品への応用が期待されます。とりわけ、自動運転、IoTなどの分野での市場拡大が期待できそうです。新規顧客の開拓により、前3月期に営業損益で黒字転換を達成。今期、会社側は経常利益で倍増を計画しています。成長ストーリーが描きやすい事業内容のため、新規公開後に人気化し2月末には25,000円台まで株価は上昇しました。しかしPERで現在でも300倍以上の評価となったため株価は調整しています。ただし、前期実績で黒字転換を果たし、業績がテイクオフ局面を迎えてきたため、株価の転換点も近いように思われます。高株価のため、将来投資単位の引き下げも考えられます。
リンクバル(6046)は、2015年にマザーズに上場した街コン主力のイベントECサイト「machicon JAPAN」を運営している会社です。婚活マッチングや恋愛情報等のWEBサービスも提供しています。自社イベント中心の業態から、近年は20代から30代を中心とした強固な顧客基盤を背景に、他社開催のイベント掲載が増加しています。この結果イベント参加者拡大、費用の効率化により業績が拡大基調に転じています。今後は「街コン・婚活市場」から、さらに市場規模の大きい「コト消費市場」や、海外での事業展開が予想されます。株価は5/8(水)の2Q決算発表で会社想定を上回る前年同期比82%経常増益での着地であったにもかかわらず、市場の期待が大きかったのか下落しました。ただし戦略的な事業構造の転換により中期的な成長余力は大きいと思われます。マザーズから東証1部への昇格期待も持てそうです。
フルヤ金属(7826)は、2006年にJASDAQに上場しています。現在は三菱商事と田中貴金属が大株主となっています。加工・回収が困難なイリジウム・ルテニウム等の白金族(各種工業製品や電子部品の製造などに使用される)の回収・精製・加工・分析などに高い技術力を持つ会社です。現在の事業の主力は、単結晶育成用ルツボや薄膜(HDやタッチパネル配線材)形成用の各種ターゲット材、半導体製造装置に付随する温度センサーなどです。今期は有機EL向け貴金属原料が急伸しているうえ、触媒向け化合物などの好調もあり業績は順調です。金価格の上昇を受け白金族の市況が堅調なのもプラスとなりそうです。
図1:ジャパンインベストメントアドバイザー(7172)・日足
図2:Kudan(4425)・日足
図3:リンクバル(6046)・日足
図4:フルヤ金属(7826)・日足
- ※図1から4は当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
東証マザーズ指数の7/2(火)終値は921.52と、6/25(火)終値885.19から4.1%の大幅な上昇となりました。JASDAQ平均は1.7%の上昇でした。日経平均は2.6%の上昇でしたから、マザーズ指数は日経平均に対し優位な値動きとなりました。これまでの相場低迷時には、流動性やバリュエーションの観点からマザーズ指数は日経平均に対し劣後してきましたが、前週はその逆のパターンとなりました。
マザーズ市場の時価総額の大きい銘柄では、そーせいグループ(4565)、サンバイオ(4592)などバイオ関連銘柄の上げが目立ちました。またミクシィ(2121)、PKSHA Technology(3993)なども堅調でした。その他の個別銘柄では、前回大幅下落したエルテス(3967)の反発が目立ちました。
JASDAQ市場は、景気敏感型で中国向け比重の大きいハーモニック・ドライブ・システムズ(6324)の大幅上昇が目立ちました。ワークマン(7564)、ユニバーサルエンターテインメント(6425)などの株価も堅調でした。
※東証マザーズ指数について:東証マザーズ市場は近い将来東証1部へのステップアップを視野に入れた成長企業向けの市場です。マザーズ指数は、マザーズ市場に上場する全銘柄の時価総額加重平均型(浮動株調整後)の指数です。ただし、一部の時価総額の大きい銘柄の影響度が大きい点に注意を要します。ちなみに5月末のマザーズ市場の時価総額に占めるメルカリ(4385)のシェアは8.7%、そーせいグループ(4565)が6.0%、ミクシィ(2121)とサンバイオ(4592)がそれぞれ4.7%、などとなっています。
図5:東証マザーズ指数(日足)
図6:JASDAQ平均(日足)
- ※図5、図6ともに当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
表2:主要株式指標の騰落率(6/25〜7/2)
指数 |
終値(7/2) |
騰落率 |
---|---|---|
日経平均株価 |
21,754.27 |
2.6% |
東証マザーズ指数 |
921.52 |
4.1% |
JASDAQ平均株価 |
3,445.54 |
1.7% |
表3:主要新興市場銘柄の騰落率(6/25〜7/2)
コード |
銘柄 |
終値(7/2) |
騰落率 |
---|---|---|---|
マザーズ市場の時価総額上位銘柄 |
|
||
4385 |
メルカリ |
2,929 |
1.0% |
4565 |
そーせいグループ |
2,440 |
5.1% |
4592 |
サンバイオ |
3,565 |
7.4% |
2121 |
ミクシィ |
2,209 |
4.6% |
3993 |
PKSHA Technology |
6,910 |
4.1% |
JASDAQ市場の時価総額上位銘柄 |
|
||
2702 |
日本マクドナルドホールディングス |
4,855 |
1.1% |
6324 |
ハーモニック・ドライブ・システムズ |
4,240 |
8.4% |
7564 |
ワークマン |
5,000 |
4.3% |
6425 |
ユニバーサルエンターテインメント |
3,355 |
3.7% |
4816 |
東映アニメーション |
5,110 |
0.8% |
直近上場銘柄・市場で話題の銘柄 |
|
||
3967 |
エルテス |
1,568 |
5.8% |
4593 |
ヘリオス |
1,757 |
-5.1% |
7676 |
グッドスピード |
2,885 |
-6.9% |
4384 |
ラクスル |
4,135 |
-1.9% |
7806 |
MTG |
1,212 |
0.2% |
- ※表2・表3はBloombergデータをもとにSBI証券が作成。騰落率は6/25(火)終値と7/2(火)終値の比較による。時価総額は5月末基準。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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