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東証1部の動きが新興市場にも?〜「ポスト・コロナ」関連銘柄の胎動を見逃すな!?

2022/2/9
投資情報部 鈴木 英之

東京株式市場が落ち着きを取り戻しています。タカ派的内容のFOMC(米連邦公開市場委員会)が嫌気され、1/27(木)に急落した後は、値を戻す展開になりました。ただ、インフレ進展や金利上昇への不透明感という“霧”が晴れた訳ではなく、特に金利上昇に弱い東証マザーズ市場では下げる銘柄が目立ちました。

しかし、“霧”の向こうに光明が灯り始めたことも確かです。米国では新型コロナウイルスの新規感染者数がピークアウトし、我が国でも空運や陸運、レジャー等の「ポスト・コロナ関連銘柄」を物色する動きが「胎動」しつつあります。「新興株ウィークリー」では、「ポスト・コロナ関連銘柄」の中から、決算発表の終わった銘柄を中心に、ご紹介したいと思います。

なお、当ページにつきましてはSBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。ぜひ、ご視聴ください

新興株ウィークリー新しいウィンドウで開きます。※YouTubeに遷移します。

執筆者のプロフィール
SBI証券 投資情報部長 鈴木 英之
・出身 東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味 ハロプロ(牧野真莉愛推し)の応援と旅行(のりテツ)
・特技 どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物 サイゼリヤのごはん
・よくいくところ 京都
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。

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1ジャスダック市場と東証マザーズ市場で明暗が分かれる?

2/1(火)〜2/8(火)の東京株式市場では、日経平均株価やTOPIX等の主要指数に加え、日経ジャスダック平均が上昇しました。米FOMCのタカ派的な内容を受け、1/27(木)に急落した後、戻りを試す展開になりました。ただ、株式市場のインフレ進展や金利上昇に対する懸念はくすぶり続けており、高PER・高PBR銘柄が多い東証マザーズ銘柄は下落しました。

金利の動きのみならず、主力銘柄の業績の良し悪しも、ジャスダック市場と東証マザーズ市場の明暗を分けました。これまで長く、新興市場の時価総額トップの座を守り続けてきたメルカリ(4385)ですが、2/3(木)に2022/6期・第2四半期の決算発表を行い、2021/10〜12期が7四半期ぶりの営業赤字になったことが判明。株価下落率(2/1〜2/8)は18%を超え、新興市場時価総額トップの座を日本マクドナルドホールディングス(2702)に譲りました。

一方ジャスダック市場では、東映アニメーション(4816)が1/27(木)に業績予想上方修正(減益予想から一転増益予想に)していましたが、2/2(水)には大手証券会社による投資判断の引き上げ等があり、上昇の勢いを維持しました。株価乱高下局面が一巡するとの期待も手伝ったようです。

総じて軟調だった東証マザーズ市場では、遺影等写真関連の事業を展開するアスカネット(2438)が買われました。1/28(金)にセブン&アイ(3382)が、アスカネットの非接触・空中ディスプレー技術をセルフPOSレジに採用した実証実験を開始すると発表し、期待が集まりました。同社は「メタバース関連銘柄」の一角として注目されることもあるようです。

図表1 日経ジャスダック平均と東証マザーズ指数の推移

  • ※SBI証券チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※2021/6/30終値を1として指数化。 期間:2021/6/30〜2022/2/8

図表2 主な新興市場銘柄の値動き

コード 銘柄名 市場 株価(2/8) 週間 年初来
2702 日本マクドナルドホールディングス ジャスダックS 5,010 -0.8% -1.6%
4385 メルカリ 東証マザーズ 3,525 -18.1% -39.8%
4816 東映アニメーション ジャスダックS 10,080 9.2% -12.0%
6324 ハーモニック・ドライブ・システムズ ジャスダックS 4,260 -6.9% -12.3%
7564 ワークマン ジャスダックS 4,930 -2.0% -10.4%
4194 ビジョナル 東証マザーズ 8,620 0.7% -11.2%
2782 セリア ジャスダックS 2,974 2.4% -10.8%
4478 フリー 東証マザーズ 3,990 -11.8% -37.3%
6425 ユニバーサルエンターテインメント ジャスダックS 2,458 4.1% 0.7%
7716 ナカニシ ジャスダックS 2,075 2.4% -2.0%
【ご参考】 日経平均株価 - 27,284.52 0.8% -5.2%
  TOPIX - 1,934.06 2.0% -2.9%
  日経ジャスダック平均 - 3,643.64 0.4% -6.1%
  東証マザーズ指数 - 738.47 -4.5% -25.3%
  • ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
  • ※新興市場(マザーズおよびジャスダック)の前月末時価総額上位10銘柄について、2/8時点での各種騰落率を掲載。
  • ※「週間」は2/1〜2/8の騰落率。
  • ※個別銘柄の「年初来」は昨年末時価総額と2/8時点の時価総額の比較。「-」は昨年末時点で上場していない銘柄。
  • ※指数の「年初来」は株価による単純計算。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

図表3 2/1(火)〜2/8(火)で株価上昇が大きかった新興市場銘柄

コード 銘柄名 市場 株価(2/8) 週間 年初来
2438 アスカネット 東証マザーズ 1,085 45.1% 41.3%
2315 CAICA DIGITAL ジャスダックS 172 29.3% 19.4%
7298 八千代工業 ジャスダックS 727 27.3% 6.4%
1407 ウエストホールディングス ジャスダックS 4,065 18.5% -29.1%
4771 エフアンドエム ジャスダックS 1,850 17.5% -21.9%
8844 コスモスイニシア ジャスダックS 480 14.6% 4.3%
9903 カンセキ ジャスダックS 2,012 13.2% -0.6%
6565 ABホテル ジャスダックS 1,289 9.7% 5.7%
7342 ウェルスナビ 東証マザーズ 1,805 9.5% -11.6%
4816 東映アニメーション ジャスダックS 10,080 9.2% -12.0%
  • ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
  • ※新興市場(マザーズおよびジャスダック・前月末時価総額100億円以上)において、週間の株価上昇率が大きい上位10銘柄を掲載。
  • ※「週間」は2/1〜2/8の騰落率
  • ※「年初来」は昨年末時価総額と2/8時点の時価総額の比較。「-」は昨年末時点で上場していない銘柄。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

2物色再開に期待の「ポスト・コロナ」関連銘柄

米国では新型コロナウイルスの新規感染者数がピークアウトしてきた模様です。我が国ではいまだ、ピークに近い状態ですが、新規感染者数のモメンタム自体は減少する兆しをみせています。ウイルスの感染力の強さを示す実効再生産数は1月上旬に6まで上昇していましたが、足元は1.16まで低下しており、新規感染者数も2月上旬にピークアウトになる可能性が出てきました。

株式市場全体の動きを示唆する指数レベルでは方向感が明確でないものの、個別銘柄レベルではすでにポスト・コロナを見据えた動きも出てきたようです。空運や陸運、レジャーといった銘柄を個別に物色しながら、全体の底入れ・反発を待つといった戦略がいいかもしれません。

こうした「ポスト・コロナ」を見据えた動きは、今後新興市場でも本格化してきそうです。「新興株ウィークリー」では、2021/11/24付、および2020/9/30付のレポートで、「ポスト・コロナ」に関連する銘柄をご紹介してきました。図表4の銘柄は、それらの一部を再びご紹介したものです。ただ、決算発表シーズン真っ盛りであるため、今月内に決算発表を予定している「発表間近」の銘柄は除きました。また、直近四半期までの累計営業損益が黒字の銘柄に限定しました。

これらの銘柄は、業績的に底を打ったとは言い切れない可能性があります。しかし、株価自体は、今後新型コロナウイルスの感染拡大がピークアウトするにつれ、上昇基調を強める可能性がありそうです。

図表4 「ポスト・コロナ」で株価上昇期待銘柄

取引 チャート ポートフォリオ コード 銘柄 株価(2/8) 会社概要
2469 2469 2469 2469 ヒビノ 1481 コンサートの音響
3931 3931 3931 3931 バリューゴルフ 1250 ゴルフ場予約サイト運営、メディア制作
3995 3995 3995 3995 SKIYAKI 329 ファンクラブサイト
4317 4317 4317 4317 レイ 324 販促、イベント、CM企画立案
4838 4838 4838 4838 スペースシャワーネットワーク 425 音楽コンテンツ、MV、ライブ映像
7050 7050 7050 7050 フロンティアインターナショナル 1875 マーケティング総合支援
  • 会社資料、各種報道等をもとにSBI証券が作成。掲載はコード番号順。

以下、一部の銘柄について、ポイントをご紹介します。

ヒビノ(2469)〜「オミクロン」で足元の株価は下落も、今後は感染拡大ピークアウトに期待か

  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
  • 期間:2021/8/17〜2022/2/9 11時点(日足)

■音響・映像のプローモーター

音響・映像機器の販売やイベント演出などが主な業務。2021/3期の売上構成比は、電気音響・販売施工事業が50.1%、建築音響・施工事業が26.9%、コンサート・イベントサービスが16.3%他となっています。
コンサートについては、コンサート動員ランキング上位20のアーティストのうち、15が同社の担当(2018年・同社Webサイト)であり、大規模コンサートに強みを持ちます。

一方、新型コロナウイルスの感染拡大で大規模でのコンサート開催数が著しく減少し、業績にも悪影響を与えたとみられます。
2019年までの10年間で売上規模が2.9倍に膨らんだコンサート市場ですが、2020年は前年比で78.7%も減る壊滅的な状態に。同社も2021/3期は売上高305億円(前期比25.2%減)、営業赤字40.7億円(前期比53.4億円減益)と苦戦しました。

■株価はボトム圏に接近か?

2022/3期・第3四半期(累計)は売上高322.5億円(前年同期比60.6%増)、営業利益16.4億円(同54.9億円増)と改善しました。通期の会社予想営業利益は19.5億円(前期比60.2億円増)で、10/27に上方修正された後、変化ありません。

2021/10〜12期だけみれば、営業損益は1.25億円の赤字で、回復が止まっている印象もあります。オミクロン株の拡大で中止や延期されるイベントも出てきており、足元の株価下落はそれらを嫌気した形になっています。

ただ過去約半年間、株価は1,300〜1,400円台でボトムを打つ傾向にあり、今回もその水準に接近しています。今後、新型コロナウイルスの感染拡大ピークアウトが鮮明になってくれば、戻り相場が本格化してくる可能性もありそうです。

スペースシャワーネットワーク(4838)〜音楽フェス市場の“消滅”も打撃に

  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
  • 期間:2021/8/17〜2022/2/9 11時時点(日足)

■音楽専門チャンネルを運営。MV制作も。

当社は伊藤忠商事(持株比率34.38%)、フジ・メディア・ホールディングス(同16.65%)、KDDI(同13.24%)等を大株主としている企業です。
日本最大の音楽専門チャンネルである「スペースシャワーTV」を運営する一方、ライブイベントの主催、デジタルコンテンツの制作・配信、ミュージックビデオ(MV)の制作等を行います。

当社は夏の音楽フェスである「スウィート・ラヴ・シャワー」の主催者として音楽フェスを運営する企業でもあります。音楽フェス市場の規模は2019年330億円から2020年は6.9億円と市場の98%が消滅するなど、新型コロナウイルス感染拡大の影響をもっとも大きく受けた業界のひとつになりました。

■業績は底入れ傾向か

2022/3期・第3四半期(累計)の売上高は98.7億円(前年同期比14.5%増)、営業利益46百万円(同3.1億円増)、経常利益は4.94億円(同約6億円増)と回復傾向です。

会社側はこれを受けて、通期の業績予想を上方修正。経常利益(一部助成金計上あり)は4.0億円から4.52億円(前期比6.54億円増)と修正されました。

もっとも、イベント市場の回復自体は、まだまだ不安定な面がありそうです。今後新型コロナウイルスの感染拡大ピークアウトが鮮明になってくれば、業績回復もさらに加速しそうです。

  • ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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