5月23日に日経平均株価が前日比で1,143円安と急落したが、その後も長期金利の上昇懸念が残る中、米国でも量的金融緩和政策の縮小観測が高まったことで世界的に投資家のリスク回避スタンスが台頭、マーケットではやや株式売り/円買いの流れにシフトしつつあるように思われる。当然のことながら、円買いは我が国輸出企業にとって収益へのネガティブインパクトが大きいが、足元では1ドル=100円前後で推移しており、円買いへのリスクはあるものの、依然として円相場はこれまでの円売りの流れにおける短期的な調整局面ではないかと考えられる。
このような中、6月5日には安倍首相が成長戦略第3弾を発表した。それによると、規制改革を「成長戦略の1丁目1番地」と位置づけており、特に戦略の目玉になりそうなのが「国家戦略特区」であろう。これは、街の中心部での居住を促すため、容積率規制を見直す」という内容であり、これにより都市部の開発に強みを有する大手不動産会社などが注目を集めることが予想されよう。さらに、一般用医薬品(大衆薬)のインターネット販売について全て解禁する方向であり、結果的にネット販売関連企業にとっては商機の拡大につながる可能性が高まりそうだ。
そして、空港や高速道路などの社会インフラを巡っては、PFI(民間資金を活用した社会資本整備)について今後10年間で、過去10年間の実績の3倍に当たる12兆円規模の事業を推進していくとしている。公共工事事業に定評のある大手ゼネコンや橋梁及び道路工事関連銘柄などが人気化する公算もあろう。今後10年間の我が国の電力関係投資についても過去10年間の実績の1.5倍である30兆円規模に拡大する方針である。
このような施策を推進することで成長シナリオを実現できれば「1人当たりの国民総所得は年3%を上回る伸びとなり、10年後に現在の水準から150万円増やせる」としている。
成長戦略第1弾では再生医療を巡る研究開発の支援促進、第2弾では農業改革、そしてインフラ輸出の促進、今回の第3弾では規制緩和が目玉となったことで、これらを巡って今後もテーマ性の強い銘柄を循環物色する流れが続くと思われる。
下の表1は、成長戦略で注目を集めそうな銘柄を掲載した。日経平均株価の年初来高値(15,942円)から6月6日の終値(12,904円)の騰落率−19.1%に対して、掲載した銘柄の多くがそれを下回っている。今後も企業業績の回復が続けば、株価調整は一時的とも捉えられる。業績が好調で年初来高値からの下落率が大きな銘柄は、反発局面において株価の見直しが入る可能性が高いともいえるだろう。投資をする際の参考とされたい。
表1:(参考)アベノミクス成長戦略で注目を集めそうな銘柄
テーマ |
コード |
銘柄 |
株価(円) |
今期予想売上高 |
今期予想経常利益(増減率) |
騰落率 |
予想PER |
---|---|---|---|---|---|---|---|
不動産開発 |
8801 |
2,743 |
1,530,000(+5.8) |
132,000(+7.3) |
-24.0 |
37.06 |
|
8802 |
2,320 |
1,070,000(+15.4) |
122,000(+32.1) |
-30.7 |
55.50 |
||
インフラ整備 |
1801 |
305 |
1,390,000(-1.9) |
34,000(-3.0) |
-25.8 |
15.30 |
|
1803 |
330 |
1,410,000(-0.4) |
15,500(-10.6) |
-23.6 |
43.13 |
||
1883 |
1,306 |
220,000(+3.2) |
18,200(+2.0) |
-18.4 |
10.73 |
||
5911 |
836 |
90,000(+1.4) |
3,300(-8.5) |
-26.0 |
18.05 |
||
訪日外国人 |
2450 |
122,000 |
5,337(+10.1) |
1,900(+11.3) |
-35.1 |
31.35 |
|
農業改革関連 |
6326 |
1,427 |
1,400,000(+19.9) |
165,000(+37.0) |
-20.4 |
17.92 |
|
インフラ輸出 |
1963 |
3,210 |
690,000(+10.5) |
74,000(+2.1) |
-19.6 |
17.24 |
|
再生医療関連 |
4974 |
2,600 |
22,100(+7.5) |
2,000(+1.8) |
-39.5 |
227.07 |
- ※各社の決算資料より作成。
- ※今期予想売上高、今期予想経常利益は会社予想。単位は百万円。増減率は前期比。
- ※株価は6月6日終値。
- ※PER算出の基準となる株価は6月6日終値、一株当たり利益は会社の今期予想。
- ※騰落率は6月6日終値と年初来高値比。騰落率等のデータは過去の実績であり、将来の運用成果等を保証するものではありません。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。