先週の米国株式市場は、トランプ大統領の発言から米中通商協議が進んでいないことが嫌気されて反落しました。今週は4-6月期決算発表のピーク週を迎えて企業業績への注目が高まるほか、週末にかけては来週開催のFOMCが意識され神経質な動きとなることも想定されます。
今回は先週発表の4-6月期決算が市場予想を上回った銘柄から、マイクロソフト(MSFT)、シンタス(CTAS)、インテューイティブ サージカル(ISRG)、バンク オブ アメリカ(BAC)、イーベイ(EBAY)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 1週 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
生活必需品 | 0.2% | 2.3% | 5.5% |
素材 | 0.2% | 1.3% | 2.0% |
公益事業 | -0.4% | -1.1% | 5.5% |
情報技術 | -0.7% | 2.9% | 3.4% |
ヘルスケア | -0.8% | -2.2% | 6.7% |
S&P500 | -1.2% | 0.9% | 2.4% |
資本財・サービス | -1.2% | 0.4% | -0.8% |
金融 | -1.3% | 2.5% | 2.5% |
一般消費財・サービス | -1.7% | 2.2% | 2.9% |
不動産 | -2.3% | -2.8% | 4.6% |
エネルギー | -2.7% | -1.4% | -8.5% |
通信サービス | -3.1% | 0.0% | -1.0% |
騰落率上位(1週) | 騰落率 |
フィリップ・モリス・インターナショナル | 8.4% |
IBM | 4.9% |
アボットラボラトリーズ | 4.3% |
バンク・オブ・ニューヨーク・メロン | 3.9% |
ダウ | 3.6% |
騰落率下位(1週) | 騰落率 |
ネットフリックス | -15.6% |
シュルンベルジェ | -5.1% |
ロウズ | -4.6% |
バークシャー・ハサウェイ | -3.8% |
オラクル | -3.8% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
トランプ大統領の発言から米中交渉が進展していないことが示唆され、これが嫌気されて反落基調となりました。7/18(木)にはニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁の発言を受けて0.50%の利下げに対する期待が台頭して反発。しかし、翌7/19(金)に同連銀がウィリアムズ総裁の発 言はFRBの政策行動を示唆するものではないと説明したことで大幅利下げの観測が後退して反落しています。S&P500指数は週間で1.2%の下落でした。
業種指数騰落率では、決算が市場予想を上回ったフィリップモリスインターナショナルなどタバコ株を含む「生活必需品」がトップ、4-6月期の加入者純増がガイダンスを下回ったネットフリックスの急落などを受けて「通信サービス」がボトムでした。業界大手から最悪期は脱出したとの見解がでた「情報技術」のサブセクターである「半導体・同製造装置」は週間で0.9%の上昇でした。
個別銘柄では、半導体製造装置のASML ホールディングス NYRS(ASML)と半導体ファウンドリーの台湾セミコンダクター ADR(TSM)の決算が市場予想を上回り、また、TSMCは半導体市場が足もとで底入れしたとの見解を示したことで、半導体銘柄全体に買いが広がりました。また、最近新規上場したサイバーセキュリティのクラウド ストライク ホールディングス A(CRWD)は、実績売上が倍増して市場予想を上回り、7-9月期と19年通期の売上ガイダンスを引き上げたことから、7/19(金)に株価が15%の急騰となっています。
経済指標では、米国の6月小売売上高が前月比0.4%増と市場予想の同0.1%増を上回り、7月ミシガン大学消費者信頼感が98.4と前月の98.2から改善、米国の消費は堅調が確認されました。一方、6月の住宅建設許可件数は前月比6.1%減、年率換算122万戸に低下しました。長期金利の低下でこれまで堅調を保ってきましたが、トレンドの変化があるのか注意が必要でしょう。
今週の米国株式市場
今週はS&P500指数採用企業の約30%が4-6月期決算を発表するピークを迎え、企業業績が中心的な材料になると見込まれます。一方、週末にかけて来週開催のFOMC(米連邦公開市場委員会)への意識が高まりそうです。また、米中通商協議が再び動き出す可能性、イランが英国のタンカーを拿捕して緊張の高まる中東情勢、Brexitの行方に影響する英国の新首相誕生などにも目を配っておく必要がありそうです。
米企業の4-6月期決算は、S&P500指数採用企業のEPSが前年同期比1.9%減の見込みです(FactSet社の7/19(金)時点の集計)。この数字は6/30(日)時点で2.7%減でしたので、ここまで発表が終わった企業は予想を上回ったことが示唆されています。全体としては、サプライズのない進捗と言えそうです。
7月FOMCでの利下げは確実と市場で見込まれており、0.25%の利下げとなる確率が83%、0.50%の利下げの確率が17%と予想されています(7/19(金)時点)。0.50%の確率は7/18(木)に40%まで上昇しましたが、ウィリアムズ総裁の発言に関するニューヨーク連銀の説明を受けて低下しました。
米中通商協議については、7/18(木)に高官レベルの電話会議が実現して、対面での協議実現への期待が出てきていると見られます。中国当局が米農産物の輸入拡大の準備を進め、中国人民銀行が金融市場の開放策を発表するなど、通商協議再開に向けた地ならしと捉えられる動きも出ています。
経済指標では、7/23(火)に米国の6月中古住宅販売件数(前月比0.1%増の予想)、7/24(水)に米国の6月新築住宅販売件数(前月比5.3%増の予想)、7/25(木)に米国の6月耐久財受注(前月比0.8%増の予想)、7/26(金)に米国の4-6月期実質GDP(前期比年率1.8%増の予想)などの発表が予定されています。
企業決算は4-6月期決算発表のピークを迎え、コカ・コーラ、ビザ、AT&T、フェイスブック、テスラ、スリーエム、アマゾンドットコム、アルファベット、マクドナルド、アッヴィなど当社の保有人数上位銘柄も多く含まれます。
今週の5銘柄
今回はS&P500指数採用企業で先週に4-6月期決算を発表した48銘柄から、業績が好調だったものをご紹介いたします。
図表3に抽出したのは、(1)売上・EPSとも前年同期比プラス、(2)市場予想との乖離が売上はプラス、EPSは3%以上のものになります(当社取扱のない銘柄を除く)。
中期的な事業環境なども考慮して、マイクロソフト(MSFT)、シンタス(CTAS)、インテューイティブ サージカル(ISRG)、バンク オブ アメリカ(BAC)、イーベイ(EBAY)を選んでご紹介いたします。
図表3 先週発表の4-6月期好決算銘柄(S&P500指数採用企業が対象)
銘柄(コード) | 売上高 前年同期比 |
EPS 前年同期比 |
売上高 市場予想比 |
EPS 市場予想比 |
インテューイティブ サージカル(ISRG) | 20.9 % | 17.8 % | 6.5 % | 13.0 % |
マイクロソフト(MSFT) | 12.1 % | 21.2 % | 2.9 % | 12.7 % |
イーベイ(EBAY) | 1.8 % | 28.3 % | 0.4 % | 9.0 % |
ユナイテッド レンタルズ(URI) | 21.1 % | 23.1 % | 0.9 % | 7.2 % |
シンタス(CTAS) | 7.4 % | 17.0 % | 0.9 % | 7.1 % |
バンク オブ アメリカ(BAC) | 3.0 % | 15.6 % | 0.5 % | 4.6 % |
BB&T(BBT) | 5.7 % | 10.9 % | 2.1 % | 3.8 % |
JPモルガン チェース(JPM) | 4.2 % | 12.5 % | 2.4 % | 3.7 % |
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
買付 | チャート | 銘柄 | 株価 (7/22) |
予想PER (倍) |
ポイント |
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マイクロソフト(MSFT) | 136.62ドル | 26.5 | 【クラウドサービス事業の牽引による成長続く】 ・米中摩擦による影響から遠いソフトウェア分野を主力としていることから、物色が集中していると見られ時価総額は1兆ドルを超えました。アナリストの目標株価平均は150.72ドルで、依然として上値が期待できるでしょう。 | ||
シンタス(CTAS) | 257.85ドル | 30.5 | 【米国への製造業の回帰から恩恵】 ・産業景気の減速はわずかに影響があると見られるものの、貿易摩擦には直接関係しておらず、トランプ大統領が進める製造業の米国回帰の動きから恩恵が期待されます。 | ||
インテューイティブ サージカル(ISRG) | 528.81ドル | 44.3 | 【手術支援ロボット大手、市場予想を大幅に上回る好決算】 ・業績成長は続いていますがPERは来期予想基準でも40倍前後まで近く買われているため、ここ1年の株価は横ばい圏での推移となっています。株価は業績が追い付いてくるのを待っている状態と言えるでしょう。アナリストの目標株価平均は571ドルです。 | ||
バンク オブ アメリカ(BAC) | 29.40ドル | 10.4 | 【金利低下は逆風ながら、株価への織り込みも進んだと見られる】 ・長期金利の低下により銀行の収益環境が悪化する懸念があり、同社は通期の貸出金利ざやのガイダンスを3%から2%へ引き下げています。株価への織り込みはかなり進んだと考えて良さそうです。 | ||
イーベイ(EBAY) | 40.21ドル | 14.6 | 【低成長ながらコスト削減で増益】 ・会社は同社サービスの利用者基盤を拡大することで成長力を高めようとしています。アクティブ・バイヤー数は前年同期比4%増の1.82億人に拡大して、成果が出つつあります。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。マイクロソフトは20年6月期、シンタスは20年5月期、その他は19年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
22(月) | ・シカゴ連銀全米活動指数(6月) | |
23(火) | ・英保守党が決戦投票の結果発表 ・ユーロ圏消費者信頼感(7月) ・米中古住宅販売件数(6月) |
コカ・コーラ、ユナイテッドテクノロジーズ、バイオジェン ロッキードマーチン |
24(水) | ・米新築住宅販売件数(6月) | ビザ、グラクソスミスクライン、AT&T、ボーイング チポトレメキシカングリル、キャタピラー、UPS テキサスインスツルメンツ |
25(木) | ・ドイツIFO企業景況感指数(7月) ・ECB主要政策金利 ・米耐久財受注(6月) |
フェイスブック、テスラ、スリーエム、ザイリンクス ペイパルホールディングス、アラインテクノロジー コムキャスト、ダウ |
26(金) | ・米実質GDP(4-6月期、速報値) | アマゾンドットコム、アルファベット、マクドナルド、アッヴィ インテル、ツイッター、スターバックス |
29(月) | ||
30(火) | ・日本鉱工業生産(6月) ・日銀政策金利 ・ユーロ圏業況判断指数(6月) ・米個人所得・個人支出(6月) ・米PCEコアデフレーター(6月) ・S&Pコアロジック住宅価格指数(5月) ・米中古住宅販売仮契約(6月) ・コンファレンスボード消費者信頼感(7月) |
P&G、ファイザー、アルトリアグループ マスターカード、ワブテック、アンダーアーマー |
31(水) | ・中国製造業・非製造業PMI(7月) ・ユーロ圏実質GDP(4-6月期、速報値) ・ユーロ圏消費者物価指数(7月) ・ADP雇用統計(7月) |
アップル、ゼネラルエレクトリック、サザン アドバンストマイクロデバイシズ、エレクトロニックアーツ ギリアドサイエンス |
8月1(木) | ・FOMC政策金利 ・財新中国製造業PMI(7月) ・米自動車販売台数(7月) |
ブリティッシュアメリカンタバコ、ベライゾンコミュニケーションズ クラフトハインツ(E)、ヤム!ブランズ、ボール |
2(金) | ・ユーロ圏生産者物価指数(6月) ・ユーロ圏小売売上高(6月) ・米雇用統計(7月) ・米貿易統計(6月) ・米製造業受注(6月) ・ミシガン大学消費者信頼感(6月) |
スクエア、エクソンモービル、デンツプライシロナ シェブロン |
注:日付は日本時間によります。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1〜30位、青字のハイライトは31〜50位を示します。(E)はBloombergによる予想を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成