先週はCOVID-19の新規感染者数の増加に対する懸念が広がったものの、FRBによる社債の購入開始や小売売上高の改善などが好感されて反発となりました。今週はCOVID-19の感染者数の状況に加え、インフラ整備計画の議論、FRB(米連邦準備制度理事会)による大手銀行のストレステスト(健全性審査)の結果などが注目されます。
トランプ政権が検討していると言われるインフラ投資の関連銘柄から、ユナイテッド レンタルズ(URI)、バルカン マテリアルズ(VMC)、ニューコア(NUE)、チューター ペリーニ(TPC)、ジェイコブス ソリューションズ(J) を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 1週 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
ヘルスケア | 3.1% | 1.0% | 27.6% |
情報技術 | 2.8% | 5.9% | 43.3% |
生活必需品 | 2.4% | 3.1% | 17.4% |
一般消費財・サービス | 2.3% | 5.8% | 46.2% |
素材 | 2.0% | 5.7% | 38.5% |
通信サービス | 2.0% | 2.1% | 32.7% |
S&P500 | 1.9% | 4.8% | 34.4% |
金融 | 0.6% | 9.1% | 26.9% |
資本財・サービス | 0.6% | 8.4% | 35.1% |
不動産 | -0.8% | 7.7% | 29.9% |
エネルギー | -1.0% | 2.6% | 52.8% |
公益事業 | -2.4% | 1.1% | 20.1% |
騰落率上位(1週) | 騰落率 |
イーライリリー | 11.4% |
アムジェン | 9.5% |
ネットフリックス | 8.5% |
セールスフォース・ドットコム | 6.8% |
ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス | 6.6% |
騰落率下位(1週) | 騰落率 |
サイモン・プロパティー・グループ | -11.7% |
デューク・エナジー | -5.3% |
ゼネラル・モーターズ(GM) | -4.9% |
サザン | -4.6% |
アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG) | -3.7% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
15日(月)にFRB(米連邦準備制度理事会)が社債の購入を16日(火)から始めると発表して大幅反発、16日(火)には米国の5月小売売上高が前月比17.7%増と急回復したほか、トランプ政権による1兆ドルのインフラ整備計画の報道が好感されて続伸しました。
17日(水)、18日(木)は小動きとなった後、19日(金)にS&P500指数は前日比0.8%高で始まったものの、前日のCOVID-19新規感染者数が2万7千台に増え、少なくとも6州で過去最高となったことが嫌気されて前日比0.6%安で引けました。S&P500指数は週前半の上げが効いて週間で1.9%の上昇です。
業種指数では、COVID-19の感染第2波に対する懸念の広がりを受けて、COVID-19による打撃が比較的小さいと考えられる「ヘルスケア」「情報技術」「生活必需品」などが騰落率の上位となりました。「ヘルスケア」はFDA(米食品医薬品局)による医薬品の承認が相次いだことも追い風になりました。一方、景気敏感業種はいずれも市場平均を下回りました。
個別銘柄では、乳がん治療薬「Verzenio(ベージニオ)」が第3相臨床試験で好結果を出したイーライ リリィ(LLY)が上昇率トップでした。
経済指標では、米国の5月小売売上高が前月比17.7%増と市場予想の同8.4%増を大幅に上回りました。前年比でも4月の19.9%減から6.1%減に大きく改善しています。前年比で伸びている分野は、建材・ガーデン用品の16.4%増、食料品店の14.5%増、スポーツ用品・趣味・楽器&本の4.9%増、無店舗販売(ネット販売)の30.8%増などです。
今週の米国株式市場
今週はCOVID-19の新規感染者数の状況に加えて、インフラ整備計画の議論、FRBによる大手銀行のストレステスト(健全性審査)の結果などが注目されます。また、中印の軍事衝突のその後や朝鮮半島の緊張など地政学的リスクにも目を配っておく必要がありそうです。
米国のCOVID-19新規感染者数は、6/20(土)までの7日平均で2万3千人台と、6/13(土)の同2万千人台から増加しています。6月第1週を底に2週連続で増加となっており、今週も増加傾向が続くようなら株式市場への影響も大きくなる可能性がありそうです。
インフラ整備計画は、トランプ政権が1兆ドルの投資を検討しているとされるほか、米下院民主党が1兆5,000億ドルの整備計画法案を6/18(木)に発表しており、議会が休会に入る7/4(土)までに議会を通過させたいとしています。議会での議論が活発化するか注目です。
大手銀行のストレステストでは、資本要件の決定には新型コロナウイルス感染拡大前に策定した基準を利用するものの、配当金支払いなどの余剰資金の配分方法については、コロナ禍に起因する要因を反映する手法を追加的に採用するとの方針が明らかにされています。
JPモルガンチェースのダイモンCEOは資本が規定の水準を割り込む、または、当局による強制的な指示がなければ減配する意向はないとの考えを示していますが、配当が維持できるか注目です。
経済指標では、6/22(月)に米国の5月中古住宅販売件数(前月比5.6%減の予想)、6/23(火)に米国の5月新築住宅販売件数(前月比1.9%増の予想)、6/25(木)に米国の5月耐久財受注(前月比10.9%増の予想)などの発表が予定されています。
企業決算では、ナイキ、アクセンチュア、マコーミックの3-5月期決算発表が予定されています。
今週の5銘柄
今回はインフラ投資関連銘柄をご紹介いたします。
6/16(火)にトランプ政権が景気刺激策の一環として総額1兆ドルのインフラ投資を検討していると報じられて注目が集まっています。運輸省がまとめつつある提案では、道路や橋など交通インフラ整備向けに資金の大半を充てる方針のほか、第5世代(5G)移動通信インフラや、地方でのインターネットブロードバンドの整備にも一部の資金を充当するとされています。
トランプ政権のインフラ投資計画は、前回の大統領選挙があった16年から話には何回も出てきていますが、実現していません。しかし、今回は雇用を増やす施策が必要なこと、すでに2兆ドルの景気対策が成立していることから、実現する可能性はこれまでよりも高いとみられます。
図表4の関連銘柄群から、ユナイテッド レンタルズ(URI)、バルカン マテリアルズ(VMC)、ニューコア(NUE)、チューター ペリーニ(TPC)、ジェイコブス ソリューションズ(J) を選んで今週の5銘柄といたします。
図表3 米国の建設骨材使用量
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表4 インフラ投資関連銘柄
建機 | ユナイテッド レンタルズ(URI) |
キャタピラー(CAT) | |
素材 | バルカン マテリアルズ(VMC) |
マーチン マリエッタ マテリアルズ(MLM) | |
ニューコア(NUE) | |
エンジニアリング | チューター ペリーニ(TPC) |
ジェイコブス ソリューションズ(J) | |
フルアー(FLR) |
※各種報道をもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
買付 | チャート | 銘柄 | 株価 (6/19) |
予想PER (倍) |
ポイント |
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ユナイテッド レンタルズ(URI) | 155.51ドル | 13.0 | 【建機レンタルの最大手、米国売上が9割】 ・建設機械・産業機械のレンタル会社です。97年の創業以来、積極的なM&Aで事業を拡大、北米に1,175拠点、欧州に11拠点を展開しています。建機と言えばキャタピラーですが、同社の米国売上は42%であるのに対して、ユナイテッドレンタルズの米国売上は91%と高いため、米国のインフラ投資計画への関連性がより高いと考えられます。2019年の市場シェアは13%でトップ、2位のサンベルトの7%、3位のHRIの3%を大きく引き離しています。 ・19年12月期までの5年間の年平均成長率は、売上が11%、調整後EPSが23%と高い伸びとなっています。1-3月期は3月半ばからCOVID-19の影響が出て、売上は前年同期比横ばい、調整後EPSは同1%増にとどまりました。 | ||
バルカン マテリアルズ(VMC) | 120.05ドル | 27.7 | 【砕石、砂利等の建設骨材が主力】 ・米国最大の建設資材の会社で、砕石、砂利等の建設骨材、アスファルトや生コン等の建設資材を手掛けます。高速道路の補修での使用が多く、また、その他の土木工事でも使用されるため、インフラ投資と関連性の高い会社と言えるでしょう。 ・1-3月期の売上は前年同期比5%増、調整後EPSは同2%増でした。計画的に修理、維持コストを増やしたことから利益の伸びは低くなっています。COVID-19については、事業への影響は限定的としています。 | ||
ニューコア(NUE) | 42.70ドル | 27.5 | 【米国最大の鉄鋼メーカー】 ・米国最大の鉄鋼メーカーで、2019年の粗鋼生産量は世界14位です。小規模な電炉による効率生産が特徴で、鋼板、棒鋼から加工品までを製造・販売しています。インフラ投資に使用される鋼材との関連性が高い鉄鋼メーカーです。 ・1-3月期の出荷量は前年同期比6%増となるも、価格低下により売上は同8%減、純利益は同96%減でした。4-6月期は赤字のガイダンスですが、年後半は黒字化の見通しとしています。自動車、エネルギー業界の落ち込みがきつい一方、同社の向け先で最も大きい非住宅建設向けは比較的堅調で、プロジェクトの後ずれはあるもののキャンセルは少ないとしています。 | ||
チューター ペリーニ(TPC) | 12.12ドル | 6.1 | 【鉄道建設の工事比率が高い】 ・建設中堅で、高速道路、橋梁、トンネル、公共事業、商業ビル、教育施設など幅広い工事の設計・施工・監理を請け負います。20年3月末の受注残106億ドルのうち、土木が54%、建設が22%、専門工事が22%を占めます。米国売上が92%を占めます。 ・1-3月期は、ニューアーク空港ターミナル1、ロサンゼルス地下鉄の延伸プロジェクト、カリフォルニアの高速鉄道などの工事が貢献して売上が前年同期比30%増、営業利益は同2.1倍と好調でした。20年のEPSガイダンスを1.8〜2.1ドルとして、COVID-19による重大な影響はないとしています。 | ||
ジェイコブス ソリューションズ(J) | 85.58ドル | 14.7 | 【総合エンジニアリング大手】 ・総合エンジニアリング大手です。建設、エンジニアリングなど幅広く展開し、主要顧客は一般企業、航空宇宙防衛、ビル・インフラなどからなります。2017年に水・環境に強いCH2Mを買収しています。 ・1-3月期は、売上が前年同期比11%増、調整後EPSが同17%増、受注残が同13%増と好調でした。20年9月期のガイダンスは、調整後EPSが前年同期比16〜28%増の4.8〜5.3ドルとしています。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。ジェイコブズソリューションズは21年9月期、その他は20年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
22(月) | ・ユーロ圏消費者信頼感(6月) ・シカゴ連銀全米活動指数(5月) ・米中古住宅販売件数(5月) |
アップルの世界開発者会議(WWDC)(オンライン、26日まで) アマゾンのファッションセールがスタート |
23(火) | ・じぶん銀行日本製造業PMI(6月) ・マークイットユーロ圏製造業PMI(6月) ・マークイット米製造業PMI(6月) ・米新築住宅販売件数(5月) ・ボルトン前大統領補佐官の回顧録、発売予定 |
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24(水) | ・IMF経済見通し発表 ・ドイツIFO企業景況感(6月) |
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25(木) | ・米実質GDP(1-3月期、確報値) ・米新規失業保険申請件数(6月20日に終わる週) ・米耐久財受注(5月) |
FRBによる大手金 融機関のストレステストの結果発表 ナイキ、アクセンチュア、マコーミック |
26(金) | ・米個人所得・個人支出(5月) ・米PCEコアデフレータ(5月) ・ミシガン大学消費者マインド(6月、確報値) |
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27(日) | ・中国工業部門利益(5月) | |
29(月) | ・ユーロ圏景況感(6月) ・米中古住宅販売成約(5月) |
マイクロンテクノロジー |
30(火) | ・中国製造業・非製造業PMI(6月) ・ユーロ圏消費者物価指数(6月) ・米S&Pコアロジック住宅価格(4月) ・コンファレンスボード消費者信頼感(6月) |
フェデックス |
7月 1(水) |
・日銀短観(4-6月期) ・中国財新製造業MPI(6月) ・米ADP雇用統計(6月) ・米ISM製造業景気指数(9月) ・米自動車販売台数(9月、2日までに発表) ・FOMC議事要旨 |
ゼネラルミルズ、メーシーズ |
2(木) | ・ユーロ圏生産者物価指数(5月) ・米貿易統計(5月) ・米雇用統計(6月) ・米製造業受注(5月) |
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3(金) | ・米国市場休場(独立記念日) |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1〜30位、青字のハイライトは31〜50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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