先週は良好な雇用統計、企業景況感の改善にもかかわらず、10年国債利回りが低下したことから、S&P500指数は史上最高値更新に進みました。今週は1-3月期の決算発表開始、米中の経済指標、日米首脳会談、などが注目されます。
今回は決算発表シーズンを控えて、21年1-3月期の売上・EPSの増加率が20年10-12月期から拡大すると見込まれている銘柄から、コノコフィリップス(COP)、ゴールドマン サックス(GS)、アップル(AAPL)、キャタピラー(CAT)、ダウ(DOW)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
情報技術 | 4.7% | 8.1% | 9.7% |
一般消費財・サービス | 4.2% | 6.1% | 5.0% |
コミュニケーションサービス | 3.2% | 5.2% | 17.7% |
S&P500 | 2.7% | 4.7% | 8.6% |
金融 | 1.9% | 1.3% | 12.1% |
資本財・サービス | 1.8% | 4.1% | 11.1% |
生活必需品 | 1.5% | 4.8% | 3.9% |
ヘルスケア | 1.3% | 3.2% | 1.1% |
公益事業 | 1.3% | 4.6% | 5.5% |
素材 | 0.7% | 2.1% | 3.0% |
不動産 | 0.5% | 4.1% | 15.4% |
エネルギー | -4.0% | -9.1% | 10.8% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
アップル | 8.1% |
ペイパル・ホールディングス | 7.8% |
アマゾン・ドット・コム | 6.7% |
アルファベット | 6.6% |
インテル | 5.7% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
コノコフィリップス | -5.2% |
シュルンベルジェ | -4.8% |
バイオジェン | -3.8% |
デュポン・ド・ヌムール | -2.9% |
シェブロン | -2.7% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
4/5(月)は先週末の良好な3月雇用統計に加え、3月ISM非製造業景気指数の大幅改善、10年国債利回りの落ち着きを受けて大幅に上昇しました。4/6(火)にはIMFによる世界経済見通しの引き上げ、4/7(水)にはFOMC議事要旨の公表がありましたが、いずれもサプライズはなく相場は高値近辺でのもみ合いとなりました。
一方、4/8(木)にはパウエルFRB議長のハト派的発言、それを裏付けるような新規失業保険申請件数の前週比増加(改善トレンドの鈍化)を受けて10年国債利回りが低下、グロース株主導で上昇しました。4/9(金)は米国の3月生産者物価指数が予想を上回る上昇となりましたが、10年国債利回りの上昇は小幅にとどまり、株式は続伸しました。
S&P500指数は週間で2.7%、NYダウは2.0%、ナスダック指数は3.1%の上昇でした。
業種指数では、先週に引き続いてグロース株のウェートが高い「情報技術」「一般消費財・サービス」「コミュニケーションサービス」などが上位となりました。個別銘柄では、テクノロジー系の銘柄がソフトウェア、ハードウェアとも上位となっています。
経済指標では、米国の3月ISM非製造業景気指数が前月の55.3から63.7(市場予想は59.0)と大幅な改善となりました。また、米国の3月生産者物価指数は、前月比1.0%増(市場予想は同0.5%増)、前年比4.2%増(市場予想は同3.8%増)と市場予想を上回る上昇でした。
今週の米国株式市場
1-3月期の決算発表開始、米中の経済指標(米国の小売売上高、中国のGDP、鉱工業生産など)、日米首脳会談、などが注目されます。
1-3月期の決算発表は、4/14(水)に大手銀行から本格化します。先陣を切るJPモルガンチェースのEPSが前年同期比3.8倍、ゴールドマンサックスが同3.2倍、ウェルズファーゴが同9.8倍など大幅な増益が予想されています。
S&P500指数採用企業の1-3月期EPSは前年同期比24.5%増の予想です(FactSet集計、4/9(金)時点)。パンデミックによる前年同期の落ち込みからの反動もあり、20年10-12月期の同3.9%増から大幅に加速する予想です。
業種別には、一般消費財・サービスの同103.2%増、金融の同78.7%増、素材の同46.4%増などが市場平均を上回ってけん引する見込みです。情報技術は同22.4%増の予想です。
米中の経済指標は、4/15(木)に米国の3月小売売上高(前月比5.5%増の予想)、4/16(金)に中国の1-3月期実質GDP(前年比18.3%増の予想)、中国の3月鉱工業生産(前年比27.1%増の予想)・小売売上高(前年比28.0%増の予想)・固定資産投資(前年比26.0%増の予想)などが注目されます。いずれも経済の回復を示すものとなりそうです。
日米首脳会談については、日米間のことよりも中国対応が注目されそうです。米中関係が中国の人権問題や海洋進出を背景に、この先どの程度こじれるかは金融市場のリスク要因と考えられますが、これを占う上で重要な会談と目されます。
S&P500指数の予想PERは、現在の予想EPSである174ポイントに対して23.7倍、予想EPSが今後の上方修正を織り込んで190ポイントになったとしても21.7倍に到達しています。予想PERは長期的な平均水準である17〜18倍を大きく上回っていることから、あまり強気になり過ぎないように注意して臨む必要があるでしょう。
経済指標では上記のほか、4/13(火)に中国の3月貿易統計(輸出は前年比37.4%増、輸入は同24.6%増の予想)、米国の3月住宅着工・建設許可件数(着工件数は前月比12.6%増の予想、建設許可件数は同1.7%増の予想)、4月ミシガン大学消費者マインド(前月の84.9から89.0に改善の予想)などの発表が予定されています。
企業決算では、ウェルズファーゴ、JPモルガンチェース、ゴールドマンサックス、TSMC、バンクオブアメリカ、シティグループ、ブラックロック、ペプシコ、ユナイテッドヘルスグループ、デルタ航空、モルガンスタンレーなどの発表が予定されています。
また、4/14(水)にビットコインなど暗号資産の取引所を運営するコインベースがナスダック市場に上場することも注目を集めています。
今週の5銘柄
今回は決算発表シーズンを控えて、21年1-3月期の売上・EPSの増加率が20年10-12月期から拡大すると見込まれている銘柄をS&P100指数採用銘柄からご紹介いたします。
【スクリーニング条件】
(1)21年1-3月期の売上増加率が20年10-12月期より3%ポイント以上大きく、増収である。
(2)21年1-3月期のEPS増加率が20年10-12月期より10%ポイント以上大きい。
(3)過去3ヵ月のEPS修正率が5%以上である。
図表3に抽出された銘柄から景気敏感株を中心に、コノコフィリップス(COP)、ゴールドマン サックス(GS)、アップル(AAPL)、キャタピラー(CAT)、ダウ(DOW)の5銘柄を選んでご紹介いたします。
図表3 21年1-3月期決算の加速が見込まれている銘柄(S&P100指数採用銘柄)
コード | 銘柄名 | 1-3月期 売上増加率 (%) |
1-3月期 EPS増加率(%) |
10-12月期 売上増加率 (%) |
10-12月期 EPS増加率 (%) |
売上増加率 の変化 (%ポイント) |
EPS増加率 の変化 (%ポイント) |
COP | コノコフィリップス | 30.7 | 8.9 | -28.8 | 赤字転換 | 59.4 | ‐ |
XOM | エクソンモービル | 4.2 | 1.5 | -30.7 | -92.7 | 34.9 | 94.2 |
CVX | シェブロン | 1.3 | -36.0 | -30.6 | 赤字転換 | 31.8 | ‐ |
TSLA | テスラ | 70.1 | 231.1 | 45.5 | 86.9 | 24.6 | 144.2 |
GS | ゴールドマン・サックス・グループ | 40.5 | 214.0 | 17.9 | 157.6 | 22.6 | 56.4 |
CAT | キャタピラー | 5.9 | 19.6 | -14.7 | -19.4 | 20.6 | 39.0 |
AAPL | アップル | 31.7 | 53.9 | 21.4 | 34.7 | 10.3 | 19.2 |
ABT | アボットラボラトリーズ | 38.8 | 96.0 | 28.7 | 52.6 | 10.1 | 43.4 |
DOW | ダウ | 11.6 | 92.5 | 4.9 | 3.9 | 6.6 | 88.7 |
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
買付 | チャート | 銘柄 | 株価 (4/9) |
予想PER (倍) |
ポイント |
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コノコフィリップス(COP) | 51.23ドル | 20.7 | 【原油価格回復に加え、買収効果も】 ・石油・天然ガスの探鉱・生産の上流部門に特化するエネルギー企業の大手です。原油価格が回復基調にあることに加え、21年1月にパーミアン盆地で操業するコンチョ・リソーシズの買収を完了していることから、21年1-3月期の業績の伸びが高くなっています。 ・3月末に発表された1-3月期の業績概況では、生産量は1日当たり石油換算バレルで前年同期の129万に対して147〜149万(前年同期比14〜16%増)、原油の平均販売価格は前年同期の48.8ドルに対して56〜58ドル(前年同期比15〜19%増)と、生産量・価格とも伸びています。通年の設備投資額55億ドルと1日当たり150万石油換算バレルのガイダンスは維持されました。1-3月期の決算発表は5/4(火)の予定です。 | ||
ゴールドマン サックス(GS) | 330.81ドル | 10.1 | 【M&A助言、株式関連業務がけん引】 ・世界有数の投資銀行部門をもつ大手銀行です。M&A助言などの投資銀行業務、機関投資家などへの金融サービスを中心とする一方、資産運用分野や消費者向けのデジタルサービスへ多角化を進めています。 ・20年10-12月期は、M&A助言、株式の引受業務、株式のトレーディング収入などが前年同期比で高い伸びとなって収益は前年同期比18%増となりました。1-3月期も同様の業務がけん引すると見込まれ、前年同期の収益の伸びがパンデミックの影響で低調だった反動もあって前年同期比40%に高まると見込まれています。1-3月期の決算発表は4/14(水)の予定です。 | ||
アップル(AAPL) | 133.00ドル | 30.0 | 【店舗閉鎖の反動で高い伸び】 ・スマートフォンの「iPhone」、タブレットの「iPad」、パソコンの「Mac」、ウェアラブルデバイスの「Apple Watch」、音楽ストリーミングの「Apple Music」、決済サービスの「Apple Pay」などの機器やサービスを手がけています。ウェアラブルやサービスが業績拡大をけん引しています。 ・1-3月期は前年同期がパンデミックによる影響で一部店舗が閉鎖された反動もあって、売上は前年同期比32%増に高まる見通しです。主力のiPhoneの売上は前年同期比42%増の予想であるほか、サービス売上も同17%増と好調持続が見込まれています。半導体不足の影響は競合他社と比べて相対的に小さいと想定されています。1-3月期の決算発表は、4/28(水)の予定です。 | ||
キャタピラー(CAT) | 230.75ドル | 28.0 | 【7四半期ぶりに増収の見込み】 ・世界首位の重機メーカーで、資源開発・建設業者向けの油圧ショベル、ブルドーザー、工業用エンジンなどが柱です。資源開発向けの出荷は、2012年のピークから65%の減少となっており、更新需要を考慮すると複数年にわたる売上回復が期待されます。今回の成長局面では、機械のネット接続や監視に関連したサービスによって利益率を改善することが期待されています。 ・19年7-9月期から6四半期連続で前年同期比減収となってきましたが、21年1-3月期は7四半期ぶりに増収に転じる見通しです。建設機械の最終需要増がけん引するほか、販売シーズンに向けてディーラーの在庫積み増しもプラスに作用する見込みとしています。1-3月期の決算発表は、4/29(木)の予定です。 | ||
ダウ(DOW) | 63.14ドル | 13.3 | 【景気敏感の代表的企業】 ・19年4月にダウ・デュポンからスピンオフした化学素材メーカーです。スピンオフ以来、事業の透明性が増し、コスト削減への踏み込みが強まって、株式市場からの信頼性が増しているとみられます。また、天然ガスを主な原料としていることで原油を原料とする同業他社に対してコスト競争力が高く、景気回復時には業績の伸びが相対的に高くなると期待されます。 ・20年10-12月期決算は、景況の回復を受けて製品の平均販売価格が7-9月期比8%上昇して、売上は同10%増となり前年同期比でも5%増に改善しました。21年1-3月期についても前四半期比で価格は強含みとなる見通しです。特にパッケージ&特殊プラスチックは、ポリエチレンの需給がタイトな上にワクチン配布による需要増もあり、前四半期比2〜5%の上昇が見込まれています。1-3月期の決算発表は、4/22(木)の予定です。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、アップルが21年9月期、その他は21年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
12(月) | ・日本工作機械受注(3月) | |
13(火) | ・中国貿易統計(3月) ・ZEW景気期待指数(4月) ・NFIB中小企業楽観指数(3月) ・米消費者物価指数(3月) |
ファスナル |
14(水) | ・日本機械受注(2月) ・ユーロ圏鉱工業生産(2月) ・パウエルFRB議長講演 (ワシントンのエコノミッククラブのオンラインイベント) ・米輸入物価指数(3月) ・米地区連銀経済報告(ベージュブック) |
・暗号資産取引所コインベースの上場 ウェルズファーゴ、JPモルガンチェース、ゴールドマンサックス |
15(木) | ・米新規失業保険申請件数(4月10日に終わる週) ・米小売売上高(3月) ・フィラデルフィア連銀景気指数(4月) ・米鉱工業生産(3月) ・NAHB住宅市場指数(4月) |
TSMC、バンクオブアメリカ、シティグループ、ブラックロック ペプシコ、ユナイテッドヘルスグループ、デルタ航空 |
16(金) | ・中国実質GDP(1-3月期) ・中国鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資(3月) ・中国調査失業率(3月) ・ユーロ圏27ヵ国新車登録台数(3月) ・日米首脳会談 ・米住宅着工・建設許可件数(3月) ・米ミシガン大学消費者マインド)4月) |
モルガンスタンレー |
19(月) | ・日本貿易統計(3月) ・ユーロ圏建設業生産高(2月) |
IBM、コカ・コーラ、ユナイテッドエアラインズ |
20(火) | ・日本工作機械受注(3月、確報値) | ジョンソン&ジョンソン、P&G、ネットフリックス フィリップモリスインターナショナル インチュイティブサージカル |
21(水) | ベライゾンコミュニケーションズ、ラムリサーチ テキサスインスツルメンツ(E)、TEコネクティビティ |
|
22(木) | ・ECB主要政策金利 ・米シカゴ連銀全米活動指数(3月) ・米新規失業保険申請件数(4月17日に終わる週) ・ユーロ圏消費者信頼感(4月) ・米中古住宅販売件数(3月) |
AT&T、インテル、ダウ、アメリカン航空、ユニオンパシフィック フリーポートマクモラン、ネクステラエナジー |
23(金) | ・じぶん銀行日本製造業PMI(4月) ・マークイットユーロ圏製造業PMI(4月) ・マークイット米製造業PMI(4月) ・米新築住宅販売件数(3月) |
アメリカンエキスプレス、シュルンベルジェ |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1〜30位、青字のハイライトは31〜50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成