過去最高値付近で伸び悩んでいるNY市場
ニューヨーク株式市場が過去最高値付近で伸び悩んでいます。下記は米国を代表する株価指数であるS&P500指数です。
S&P500指数 (コンテクスチュアル・インベストメンツ作成)
株価が伸び悩んでいる理由は、株価指数が過去の上値抵抗線の近くまで来ており、これを上に抜ける保証は無いことに加えて、6月23日に予定されている英国でのEU離脱をめぐる国民投票の行方が混とんとしていること、再び世界経済に鈍化の懸念が出ており、日本や欧州でマイナス金利の状態が起きていることなどによります。
そこで今日はマーケットの見通しが難しい局面で注目されるETFについて書きます。
債券ETFを混ぜることでリスクを下げる
機関投資家はポートフォリオのリスクを抑えようとするとき、まず基本動作として、株式の比率を下げ、債券へシフトします。
ひとくちに「債券へシフトする」と言っても、昔は個人投資家にとってこれはかなり手間のかかるアクションでした。なぜなら手持ちの投資資金が限られている中で、自分が描くような株式と債券の比率になるように債券を購入することは取引単位などの関係で、容易では無かったからです。
幸いなことに、債券のETFが登場してくれたおかげで、「一部の資金を株式から債券へ逃がす」という作業が、ほんとうに簡単に実行できるようになりました。
このような措置を取る場合、アメリカの個人投資家に特に好まれているETFは、iシェアーズ・コア米国総合債券市場ETF(ティッカーシンボル:AGG)とバンガード米国トータル債券市場ETF(ティッカーシンボル:BND)です。
この2つのETFは、ちょっとポートフォリオ全体のリスクを下げたいときの避難先として、とても重宝するので、是非、覚えておいてください。
株式の中でのリスク順位に注意
さて、「債券へ逃げる」という行動に出る前に、そもそも株式ポートフォリオの中で先ずやれるリスク軽減法というのがあります。
一般論として、リスクの順番は:
個別株>セクターETF>市場全体に投資するETF
という順序になります。つまり個別株をひとつないし二つ程度持っているポートフォリオは分散が十分ではないので最もリスキーだということです。
それに比べれば特定の業種に投資する、セクターETFの方がリスクは低いです。
しかしセクターETFに投資した場合、そのセクターが人気の圏外になってしまった場合、大きくパフォーマンスが劣後するリスクがあります。
そこでもっと安全な方法として市場全体に投資するETFを選ぶという方法があります。
つまり株式投資では、市場全体に投資するETFが、いちばん値動きがマイルドであり、波乱相場に耐えることができるというわけです。
この視点からアメリカの個人投資家にとりわけ愛用されているETFは、バンガード・トータル・ストック・マーケットETF(ティッカーシンボル:VTI)でしょう。
さらにリスクを減らすには?
なるべくマーケット全体を買うことでリスクを減らすという行為に加えて、さらにリスクを減らしたいと皆さんがお感じになるのなら、これから書く2つの法則を利用することです。
法則1:バリュー株はグロース株より相場の下げ局面に強い
法則2:比較的高い配当のある株は株価が下がりにくい
そこで典型的なバリュー株のETFとしてバンガード・米国メガキャップ・バリューETF(ティッカーシンボル:MGV)を紹介したいと思います。同ETFは米国の大型株の中でバリュー株に特化したETFです。
次に高配当株は配当利回りが株価の下支えを提供しやすいです。この法則を利用するにはiシェアーズ・コア米国高配当株ETF(ティッカーシンボル:HDV)が手頃だと思います。
異質なリターンを生むETFを混ぜる方法
機関投資家がリスクを分散しようとする際、好んで使うもうひとつのやり方が、「異質なリターン」を生む投資対象を、少し混ぜておくというやり方です。
ここで言う「異質なリターン」とは、株式の動きと連動性が低い、もっと言えば「ちぐはぐな」動きをしやすい投資対象を指します。
具体的にはゴールド(金)は「連動性の低い」投資対象の代表格で、ある意味、古典的とすら言えるリスク・ヘッジの手法と言えます。SPDRゴールドシェアETF(ティッカーシンボル:GLD)が最もポピュラーです。
ここまで書いてきたことを実際にどう活用するか? をイメージしやすいように、下記にサンプルのポートフォリオを掲げておきます。