大統領選挙投票日は11月8日
米国大統領選挙は、本投票まであと3ヵ月を残すだけとなりました。そこで今日は大統領選挙の争点をまとめ、投資戦略を考えたいと思います。
争点
リーマンショック以降、アメリカ経済はゆっくりと回復しています。
10%近かった失業率は現在、4.9%に下がっています。株式市場ではダウ工業株価平均指数とS&P500指数が揃って過去最高値を更新しています。自動車販売台数も年率換算1,700万台前後と、リーマンショック前の水準まで戻ってきました。
このような良いニュースの一方で、格差の拡大はいっそう進行していますし、相次ぐテロ事件で米国民は豊かな暮らしを手に入れる機会が狭められ、安全が脅かされていると感じています。
ドナルド・トランプの主張
共和党のドナルド・トランプ候補は「アメリカ優先」を訴えています。
対外面に関しては、北米自由貿易協定(NAFTA)に反対しているほか、欧州を中心とした軍事協定である北大西洋条約機構(NATO)の見直しを主張しています。
それは国益を最優先し、パワー・バランス(各国の利害が折り合う点)を追求するアプローチと言えます。これは、かつてリチャード・ニクソン大統領が、ヘンリー・キッシンジャー国務長官を通じて実現した外交術です。
国内政治に関しては、白人低教育低所得者層をサイレント・マジョリティ(声なき多数派)だとしたうえで、彼らの境遇の改善を優先する考えを打ち出しています。
白人低教育低所得者層の暮らし向きを劇的に向上するためには、アイゼンハワー大統領が行ったようなインターステート・ハイウエーの建設に代表される、公共工事を増やすのが最も効果的です。
さらに製造業をテコ入れするために思い切ったドル安政策を取る可能性もあります。
したがってトランプ候補が勝利した場合には、道路・インフラストラクチャ建設に関連する銘柄が注目されることになるでしょう。
具体的には建設機械のキャタピラー(ティッカーシンボル:CAT)、エンジニアリング会社のフルアー(ティッカーシンボル:FLR)、建設骨材のマーチン・マリエッタ・マテリアルズ(ティッカーシンボル:MLM)とヴァルカン・マテリアルズ(ティッカーシンボル:VMC)、道路・橋梁建設請負のグラナイト・コンストラクション(ティッカーシンボル:GVA)などになります。
ヒラリー・クリントンの主張
一方、ヒラリー・クリントン候補は、苦しい時だからこそ、国民の団結が重要だと主張しました。
格差社会、相次ぐテロなど、国民を不安にする出来事が多い昨今、わざと不安を煽り、世論を分断することで選挙戦を有利に進めようとするドナルド・トランプ候補に対し、ヒラリー・クリントン候補は、フランクリン・ルーズベルト大統領の言葉を引用し、「われわれが恐れなければいけないのは、不安心理だけだ」と訴えました。
景気対策に関しては、ヒラリー・クリントン候補もドナルド・トランプ候補同様、インフラストラクチャへの投資を約束しました。その場合、恩恵をこうむる銘柄は、上に列挙した銘柄と同じになります。
また、学資ローン返済に窮している人たちへの救済措置を約束しました。
ミレニアルズ(16歳〜36歳)と呼ばれる若者世代は、学資ローンの返済負担が大きく、それが原因で婚期が遅れ、マイホームの購入も難しくなっています。
したがって学資ローンへの救済措置が発表されると、それはミレニアルズ世代が心の底で一番欲しがっている、郊外の一軒家の購入への意欲をかきたてるでしょう。
その場合、高価な家を買えない若いバイヤー層だけをターゲットに絞った宅建業者、LGIホームズ(ティッカーシンボル:LGIH)、それからミレニアルズ向けに安い住宅のブランド「エキスプレス」を立ち上げ、訴求に力を入れているD.R.ホートン(ティッカーシンボル:DHI)の2社が恩恵をこうむると思います。
とりわけD.R.ホートンの「エキスプレス」ブランドは、郊外の少し不便な場所に団地を造成することで土地コストを抑えてあります。その分、解放感があり色々なアメニティが揃ったデザインにお金をかけているわけです。
「エキスプレス」ブランドの平均販売単価は2,091万円です。これはミレニアルズ世代が一番欲しい価格帯だと思います。
最後に銀行株になりますが、住宅ローンで全米No.1であるウエルズファーゴ(ティッカーシンボル:WFC)がミレニアルズ関連で注目されると思います。