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ドル安は我々の投資戦略にどのような影響を与えるか?
ドル安は我々の投資戦略に
どのような影響を与えるか?
2018/01/26
今回は、米国の景気状況と、金利、為替の関係性について書いていきます。
ムニューシン財務長官の発言でドル安
このところドル安が顕著です。
1月24日のドル急落の直接の引き金はダボス会議に出席していたスティーブン・ムニューシン財務長官が「ドル安はアメリカの輸出を助ける」という、ドル安を歓迎するコメントをしたためです。
景気が強いのに、なぜドル安?
アメリカの景気は良いのに、なぜドル安になるのでしょうか?
それに対する回答は、「景気の実勢に比べて政策金利が低すぎるとインフレを誘発しやすいから」ということになります。
過去のアメリカの歴史を紐解くと、米国が1971年8月28日に変動相場制へ移行して以来、金融緩和から引締めへと転じたケースが8回ありました。そのうち実に7回のケースでドルは下落しています。
そもそも金融を緩和するということは、経済をリフレーションさせる努力に他なりません。
つまり金融を緩和することで、わざと物価を上げようとする試みです。緩和は、累積的に効いてきます。
現在のように、景気に勢いがついているということは、リフレーションの努力がようやく実り、インフレになりはじめていることを意味するのです。
インフレとは、モノの値段が上がることでは無く、通貨の価値が薄められたことを意味します。ドルが弱含んでいるのは、そういう理由によります。
ドル安の影響
まずドル安は米国の企業業績にとってプラスです。これは株価支援材料です。ちょうど円安局面で日経平均が上がるのとまったく同じ理屈です。
次にドル安局面では新興国株式が買われやすいという経験則があります。
さらに原油やゴールドはドル建てで取引されている関係で、ドルが安くなると上昇する傾向があります。
なお、ドル安は良い事ばかりではありません。ドル安局面ではインフレが進行しやすいので長期金利は上昇しやすいです。
長期金利の上昇は株式バリュエーションにとってマイナスです。とりわけ株価収益率(PER)の高いグロース株が下げやすいです。
したがってポートフォリオの中身をグロース株から石油株のようなインフレ局面に強い銘柄にシフトすることをお勧めします。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。