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「シーゲル流投資が上手く行ってない」その原因と対処法

「シーゲル流投資が上手く行ってない」その原因と対処法

2018/5/15

最近、個人投資家さんから「シーゲル流投資が、どうも上手く行っていない。どうすれば良いでしょうか?」という相談を受けます。

1 シーゲル流投資法とは?

シーゲル流投資というのは、ペンシルバニア大学ウォートン・スクールのジェレミー・シーゲル教授が、その著書『株式市場の未来〜永続する会社が本当の利益をもたらす』の中で示した手法で、乱暴に言えば着実に配当を出している優良株を中心に投資した方が、長期ではリターンが良くなるという考え方です。

そういう考え方に沿って銘柄を選ぶと、たばこ、薬品、食品、飲料、日用品などの銘柄が多くなるようです。

しかし年初来のパフォーマンスを見るとこれらの銘柄の中にはマーケットをアンダー・パフォームしているものが多いです。

銘柄名

コード

業務内容

年初来%

フィリップモリス・インターナショナル

PM

たばこ

-22.39

アルトリア

MO

たばこ

-21.69

コカコーラ

KO

飲料

-8.94

ペプシコ

PEP

食品・飲料

-19.81

メルク

MRK

薬品

2.99

クラフトハインツ

KHC

食品

-24.79

プロクター&ギャンブル

PG

日用品

-21.23

  • (出典:コンテクスチュアル・インベストメンツLLC)

まず断っておくと今日書くことはシーゲル流投資に対する批判ではありません。私自身、シーゲル流投資には一定の利用価値があると思っています。ただ「いつもそれがアウトパフォームする」と決め付けてしまうのは良くないと思うのです。

2 パフォーマンス順位、セクターローテーション

運用の世界では「グロース株の調子が良かった後はバリュー株が来るし新興国株式がアウトパフォームした後は先進国株式が盛り返す」という感じで、その年の勝者はかなり目まぐるしく入れ替わることが知られています。

言い換えれば、ひとつのセクターやストラテジーだけがずっと勝ち続ける方が珍しいのです。裏を返して言えば、ひとつのアプローチがずっと負け続けることも稀です。だからたまたま年初からシーゲル流投資がボロボロだったからと言って、この手法が有効性を失ってしまったと断定するのは早過ぎると思います。

それを判断する際に考慮しなければいけないひとつの要因は、そもそもシーゲル流投資にあてはまるような投資対象はセクターが偏っているという点です。たばこ、薬品、食品、飲料、日用品はいずれもディフェンシブ銘柄と呼ばれるグループに属しています。ディフェンスとは「守り」という意味ですが、景気後退の局面で「守りに強い」銘柄群だと思ってください。

つまり歯磨き粉や食品は景気に関係なく我々が日常消費するものであり不景気だからと言って買い控えるような性格のものではないのです。

いま景気の話が出ましたが、現在、アメリカの景気は好調で、昨今の原油価格の上昇に見られるようにインフレに対する懸念が高まりつつあります。また政策金利は引上げられつつあります。そこで下の図をみてください。

いま低金利から高金利へ移行しつつあり、しかもずっと景気の拡大が続いてきたということは、時計の針で言えば大体11時から4時くらい(=ハイテク株とエネルギー株に挟まれた、おもにグレーの部分)の間が、株式市場でアウトパフォームしやすいセクターということになります。

たばこ、食品、薬品株は上の図では消費安定株やヘルスケア株に該当するので、「蚊帳の外」だということがわかると思います。

つまりセクターローテーションの観点からは、今の局面に限って言えば、シーゲル流投資が市場平均パフォーマンスに劣後するというのは当然、予想し得ることなのです。

2 業績面での説明、まとめ

もうひとつ、業績面からシーゲル流投資のパフォーマンス不振を説明すると、下のチャートのようになります。

これは5月4日時点でのコンセンサス予想に基づいた、今期(2018年第2四半期)の各セクターのEPS(一株当たり利益)成長率を示したものですが、シーゲル流投資の銘柄が多く含まれる消費安定やヘルスケアの成長率が下位に来ている点に注目してください。

なお、この順位が永遠に続くわけではありません。いまはたまたま原油価格が上昇しているので、エネルギー株は目の覚めるような利益成長を見込まれているだけです。

いまシーゲル流投資は上手く行っていません。その理由はローテーション的にそれらの銘柄が物色の「旬」から外れていること、業績面でも他のセクターに劣後していることなどによります。アメリカの景気が強く、インフレが強まる傾向の下では、とうぶんの間、シーゲル流投資がアンダー・パフォームすることも覚悟する必要があるでしょう。

しかしそもそもジェレミー・シーゲルは長期投資の奨励者であり、「シーゲル銘柄」は長期で保有すれば、均してみればアウトパフォームしやすいという考え方なのだから、半年やそこら下げ続けたからといって匙を投げてしまうような人は、そもそもシーゲル流投資に向いてないと思います。

シーゲル流投資には根気が必要です。

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著者

広瀬 隆雄(ひろせたかお)

コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター

グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。

広瀬 隆雄

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