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今年のクリスマス商戦は「デジタル・クリスマス」にならざるを得ない
今年のクリスマス商戦は「デジタル・クリスマス」にならざるを得ない
2020/11/25
クリスマス商戦期間が到来
今週の木曜日はサンクスギビング・デー(感謝祭)です。その翌日の金曜日からクリスマス・イヴまでの期間をアメリカではクリスマス商戦期間と言います。例年、クリスマス商戦期間は1年間で一番小売店がたくさん売上げる時期であり、たいへん重要です。
ブラックフライデーは例年と違う様相に
特にサンクスギビング・デーの翌日の金曜日はブラックフライデーと呼ばれています。これは年初来ずっと赤字で操業してきた小売店が初めて通年ベースで黒字化する日であることからそのような名前がついています。
普通、ブラックフライデーにはドア・バスター(扉を蹴破って来店客がお店に殺到すること)と呼ばれる特売が行われます。年々、ドア・バスターの特売はエスカレートし、来店客で混雑する店内で死傷事故が起きたこともありました。
しかし今年は新型コロナでブラックフライデーは例年とはぜんぜん違う様子になることが予想されています。具体的には「三密」を避けるためにドア・バスターの特売をネットだけにしてしまう小売店も出ているのです。新型コロナを契機としてブラックフライデーの慣習そのものがなくなってしまうと予想するアナリストも居ます。
ブラックフライデーの週末の翌月曜日は近年、サイバー・マンデーと呼ばれ、ネット通販の特売が行われてきました。しかし今年はブラックフライデーの特売そのものをネットに移してしまう業者が相次いでいるのでサイバー・マンデーとの区別があいまいになることが予想されます。
いずれにせよ実店舗での販売の大部分が新型コロナでネットに移ってしまうと予想されるのでショッピングモールは閑散、一方、宅配の業者は大忙しとなると予想されています。
消費者の懐具合
春に新型コロナで全米の多くの州が外出禁止令を出した際、失業した労働者を支援するために議会が景気刺激法案(CARES ACT)を成立させました。それに基づいて裕福層を除く国民ひとりひとりに13万円の見舞金が配られたとともに失業者に対しては通常の失業保険に上乗せするかたちで毎週6万円、一カ月で24万円の支援金が配られました。このため失業している人のほうが銀行の小切手口座の残高は働いている人より早いペースで現金が積み上がるという現象が起きました。下のチャートの6月、7月あたりを見ると失業者(青)のほうが小切手口座残高が高くなっていることがわかります。
米国民全体の貯蓄率自体もピーク時には33.6%に達しました。
つまり米国民は新型コロナで外出できなくなった機会に倹約につとめ貯金をしたのです。
新型コロナが再び猛威を振るい景気はダブルディップへ
いま政府からの支援金が切れて新型コロナの第三波が全米を襲っている関係でまたまたアメリカの景気は暗転する兆候を見せています。すでにクレジットカードの利用状況などのリアルタイム・データは消費者が不活発になっていることを示唆しています。
それにもかかわらず、今年のクリスマス商戦がそれなりに良い売上を記録すると予想されている理由は上に述べた貯金があるからです。
まとめ
まとめると今年のクリスマス商戦は新型コロナを避けて「デジタル・クリスマス」にならざるを得ないと思います。そしてネット通販各社は空前の売上を上げることが予想されます。
しかしその一方で新型コロナワクチンの承認が近いとあって、それが承認されたあかつきには、市民は大挙して街に出ることが予想され、来年のネット通販各社の業績は、なまじ今年が良すぎた関係で前年比較がとても苦しくなることが予想されます。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。