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長期金利の急低下は景気後退の前兆ではない

長期金利の急低下は景気後退の前兆ではない

2021/11/24

1長期金利が急低下

先週米国の10年債利回りが2020年春以来最大の低下幅を記録しました。

その結果、10年債利回りから2年債利回りを引き算した長短金利差は11月15日の1.1%から11月19日には1.02%へ縮小しています。

1長短金利差縮小をどう捉える?

普通、長短金利差がゼロになるとそれは景気後退の予兆であるとされています。
長短金利差は好景気の後半局面にじりじり低下し始め、0%を割り込んだ後、半年から2年後に不況が来ると言われています。

ひるがえって今日の状況を見ると、金利差は未だ1.02%と余裕があります。だからこれがゼロになることを心配するには遠く及びません。

まだ金融引き締めすら始まっていない

今回はちょうどこの11月から債券買入れプログラムの縮小が始まったばかりです。来年の6月にテーパーが完了するまでは利上げは無いと思います。

FRBが全然利上げしていないのに、突然、景気が腰折れするというシナリオは過去に例がありません。

景気が大丈夫だと思われる理由

米国のGDPの7割は消費で占められています。すると消費が好調であれば米国経済は好調、消費がダメならGDPもダメという構図に他ならないのです。

それでは消費は何によって決まるのか? といえばそれは消費者が自分の雇用に安心感を持っているか? ということに大きく左右されます。

いま労働市場は好調であり、人々は職の不安におびえていません。

次に家計部門のバランスシートは健全です。銀行決算を見てもローンの焦付きは極めて低水準です。

つまり「職は安定している。フトコロも暖かい」わけで、今年のクリスマス商戦期間は好調が予想されるのです。

3それでは何故長期金利が低下した?

むしろ先週の長期金利の低下は中国経済の鈍化で様々なコモディティーに対する価格プレシャーが和らいだことが関係していると思います。

これに加えて欧州で新型コロナの陽性者数が再び増加に転じたというニュースに投資家が落胆したことも原因です。

これらは手のつけられないインフレが発生するリスクが大きく後退したことを意味すると私は解釈しています。

言い直せば先週の長期金利低下は悪い金利低下ではなく良い金利低下なのです。

港湾の積み下ろし作業の遅延にもかかわらず小売業者は在庫確保に成功

先週相次いで発表された小売各社の第3四半期決算ではクリスマス商戦期間に向けて仕入れがどうなっている? という点にアナリストたちの質問が集中しました。

結論を言えば、各社とも商品の仕入れは完了しており、サプライチェーンの乱れによる在庫戦略への悪影響を訴える業者は少なかったです。

むしろ逆に小売各社の現在の在庫水準は例年より高くなっています。

それは商品が無いことが原因の売り上げ不振が発生するリスクが低いことを示唆しています。

まとめ

先週の長期金利の低下は悪い兆候ではなくインフレ・リスクの後退を示唆するものです。長期金利の低下は株式バリュエーションにとっては強気材料ですので、ここは慌てることなく強気の姿勢を堅持すべきだと思います。

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著者

広瀬 隆雄(ひろせたかお)

コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター

グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。

広瀬 隆雄

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