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連邦公開市場委員会の見通し
連邦公開市場委員会の見通し
2021/12/10
今年最後の連邦公開市場委員会
12月14・15日の両日、米国の政策金利を決定する会合である連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されます。
今回のミーティングの焦点は前回、すなわち11月3日のFOMCで示された「2022年の前半で債券買入れプログラムを終了する」というタイミングが更に加速され、「2022年3月頃に終了させる」と変更されるかどうかです。
ウォールストリート・ジャーナルは既に12月6日(月)にこれに関する観測記事を掲載しています。
この記事が出た以降の米国株式市場の動きは堅調であり、市場参加者は債券買入れプログラム終了の繰上げに余り危機感を抱いていない様子です。
これに勇気づけられる格好で連邦準備制度理事会(FRB)はテーパーの終了を3月に繰上げる可能性があります。
ハチャメチャ感が出る?
その場合、市場関係者は(ちょっとまて、これは少し性急すぎるのでは?)とテーパーの加速を嫌気する可能性もあります。
およそ市場関係者が最も嫌う事は金融引き締めではありません。周到に根回しされ、事前に周知徹底された金融政策の変更は市場を混乱に陥れることは稀です。
その反面、すこしでも唐突感、焦っている印象を投資家に与えてしまうと投資家は取り乱すリスクがあります。
11月3日に打ち出された「半年かけて債券買入れプログラムを手仕舞う」というスケジュール自体、前回、すなわち2013年のテーパーの時に比べて2倍のスピードでした。それが今回のミーティングでさらに加速されるのだとしたら居心地悪く感じる投資家も出てくることが予想されます。
目先の投資戦略
12月と1月は例年季節的に米国株が強い時期です。したがって現在は強気で臨むべきだと思います。
それを断った上で12月15日は上に書いたような理由で市場参加者が取り乱すリスクもあると思います。その場合、金融引き締めはとりわけ高バリュエーション株に打撃を与えることが心配されるのでハイグロース株などに対するガードを下げるべきではないと思います。
予防策としては株価が出遅れている株、株価収益率(PER)が低い株、配当利回りが高い株などの比率を引き上げることが考えられます。
タックスロス・セリングはどうか?
12月はタックスロス・セリングが出やすい月であることが知られています。タックスロス・セリングとは来年4月の確定申告の際、すこしでも納税額を少なくするため、今年度中に大きくヤラレになっている株をこの際処分し、実現損を出すことで、その損を今年の実現益と相殺、結果として課税の対象となるキャピタルゲインの金額を減らすことを指します。
タックスロス・セリングは今年新規株式公開(IPO)されたような若い会社の株で市場に出回っている浮動玉が比較的少ないような銘柄ほど顕著に見られます。
そのような銘柄が、IPO後ずっといいとこなしでダラダラ安となっている場合、タックスロス・セリングの集中砲火を浴びやすいわけです。
通常、そのようなタックスロス・セリングは12月の声を聞くと加速し12月15日くらいに売り尽くされると言われています。
売り物が消えれば、プレッシャーが取れるので、株価はフラフラと上昇しやすいです。このような売られ過ぎの反動による上昇のことをデッドキャット・バウンスと言います。つまり死んだ猫でも地面に思い切り叩きつけると、あたかも未だ生きているように跳ねるというわけです。ちょっと残酷な表現ですがウォール街ではこの表現が良く使われます。
そしてそのようなフラフラとした上昇はタックスロス・セリングの売り物が切れる1月に起こりやすいことから1月のそのような小型株の上昇のことを「1月効果」と呼ぶ場合もあります。
この経験則は、あまりに米国の投資家の間でよく知れ渡っているため、それに先回りしようとする投資家が後を絶ちません。その関係で、「1月効果」が現れるタイミングが年々早まっています。いまでは12月15日くらいから気の早い投資家は買い始めることが通例です。
まとめ
12月15日のFOMC声明文発表とそれに付随するジェローム・パウエル議長の記者会見では債券買入れプログラムの3月切り上げが発表される可能性もあり、意表を突かれた投資家が慌てる場面が見られるかもしれません。
ちょうどその時期は例年タックスロス・セリングが最高潮に達する時期でありIPOされて日が浅い小型グロース株が大きな売り物を浴びるリスクがあります。
これらの売り圧力を消化すれば、今度は一転してマーケットは猛烈な反騰を演じる可能性があります。
したがって我々投資家は、このような交錯する要因をよく事前に理解し、心の準備をしておく必要があるでしょう。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。