マーケット > レポート > 広瀬の外国株式・海外ETFデビュー講座 > 心では一刻も早くインフレの息の根を止める必要があると思っているけれど市場が荒れているので強いメッセージを出せないFRB
心では一刻も早くインフレの息の根を止める必要があると思っているけれど市場が荒れているので強いメッセージを出せないFRB
心では一刻も早くインフレの息の根を
止める必要があると思っているけれど市場が荒れているので
強いメッセージを出せないFRB
2022/1/28
連邦公開市場委員会
2022年1月26日、連邦公開市場委員会(FOMC)が閉幕し、声明文が出され、ジェローム・パウエル議長の記者会見が持たれました。
今回の記者会見では、次の3月のFOMCから米国の政策金利であるフェデラルファンズ・レートの利上げが開始されることが確認されました。
そして6月15日のFOMCあたりをメドに連邦準備制度の総資産の圧縮(=バランスシートの縮小)にも着手することが明らかにされました。
これらは既にこれまでに幾度か仄めかされてきた事なのでニュースではありません。
そもそも今週の月曜、火曜に米国市場が荒れた理由は(FRBがきびきびしたペースで粛々と利上げするというロードマップを示すのではないか?)という観測が流れ、それにマーケットが動揺した事が原因です。
しかし相場が荒れたのでパウエル議長は何も言質を与えない、とっ散らかった答弁に終始しました。つまりへっぴり腰だったわけです。
結果として「どうやってインフレの息の根を止める?」という火急の問題に関しては、次のFOMCで仕切り直しせざるを得なくなりました。
スゴロクの振出に戻ることを余儀なくされた投資家としては(まったく骨折り損のくたびれもうけ)だったということです。
インフレは一層ひどくなっている
さて、「手をこまねいている!」という印象を与えてしまった今回のFOMCなのですが、それじゃあインフレの問題は改善しているのか? と言えば、それに関しパウエル議長は「どちらかといえば一層ひどくなっていると思う」と答弁していました。
つまり早く手を打たないといけないのに、一層、追い込まれているのです。
このことは次回のFOMCが今回以上に苦しいミーティングになることを暗示しています。
今回の引締めサイクルが過去より苦しいものになる理由
今後の引締め策を模索するにあたりパウエル議長が指摘した点は:
FRBのバランスシートは過去より随分肥大してしまっている在庫になっている債券の平均償還期限はリーマンショックの時の在庫状況にくらべて短期債が多いインフレは前回とは比較にならないほど高いなどです。
それらの理由から、パウエル議長は今回のバランスシートの圧縮は前回より早いタイミングで着手し、前回よりも早いペースで圧縮してゆくと述べました。
しかも利上げとバランスシートの圧縮は同時並行で行われるそうです。
投資戦略
いまFRBはインフレ対策が完全に後手に回ってしまって何処から手を付けていいのか手をこまねいているような印象を醸し出しています。
これは投資環境としてはとても危険だと言わざるを得ません。
いまは「市場全体を買う!」式の、怠惰なアプローチで投資しても儲けることは至難の業です。
ここは素直にインフレが来てもむしろそれで恩恵をこうむるような、石油株、素材株、農業関連株のような地味なセクターで、いま新高値を更新しているような新鮮味のある銘柄の方が、手垢が付き、ストーリー的にくたびれてきているネット株やテクノロジー株より遥かに有利に投資をすすめることができると思います。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。