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連邦準備制度理事会の緩慢な手綱さばきで米国経済はリセッションのリスクも
連邦準備制度理事会の緩慢な手綱さばきで米国経済はリセッションのリスクも
2022/2/16
なぜ利上げする?
中央銀行が利上げするとそれは景気にブレーキを踏むことになります。それをわかっていて何故中央銀行は金融の引き締めをするのでしょうか?
その理由は、すこしブレーキを踏み、景気が強くなり過ぎないようにすることでなるべく好景気を長引かせる意図があるからです。
これはクルマを運転するとき、なるべく無駄にエンジンをふかすことを避け、なるべく燃費良く遠くまで行くのと似ています。
遅きに失したFRB
そこへゆくと今回の連邦準備制度理事会(FRB)の手綱さばきは余りにもノロノロしていて既に手遅れだと言っても過言ではありません。下は消費者物価指数ですが、すでに過去40年で最悪となっています。
その一方で政策金利は? といえばいまだに0から0.25%の水準のままです。
米国のインフレが現在のように7.5%を超えたケースは1973年と1978年の2回ですが、そのときの政策金利(=当時はディスカウント・レートが政策金利でした)はインフレ率とほぼ一致していました。現在のようにインフレ率と政策金利が7.5%も乖離してしまっているということは、明らかに異常事態です。
なすすべもなく米国経済がリセッションに突入するシナリオも
いま米国の消費者の懐具合はあたたかく、普通に考えれば消費に急ブレーキがかかるリスクは小さいです。企業の借入コストも低く、その面でも景気の失速リスクはありません。
しかしインフレはまったく野放し状態であり、原油価格の上昇を受けてガソリン価格が上昇すれば消費者はお金を持っていても外出を控える可能性があります。それは消費の失速をもたらすかも知れません。
加えていまは賃金上昇が激しく経営者は儲かりもしないコストをかけてまで新規の採用を拡大することを躊躇しはじめることが予想されます。
経営者はなによりも先行き不透明ということを嫌います。その場合、設備投資なども控えるでしょう。
このように現在はFRBが「なるべく燃費よく遠くへ飛ぶ」努力をまったくしなかったことが原因で、教科書通りの展開で、景気が早すぎる頓死に至るリスクが高いのです。これは過去に例のない未体験ゾーンだと言えます。
投資家はリスク・リワードを判断できないときは投資から足を洗ってしまうものです。つまり「休むも相場」とあきらめる人が増えるということです。それはとりもなおさず投資家が株式に対して支払ってよいと考える妥当マルチプル(=PE倍率)が下がってくることを意味し、何を買っても儲からない相場になる可能性が高いです。
まとめ
今週に入って「FRBの政策ミス」ということがウォール街でちらほら聞かれるようになりました。すなわちFRBの対応が余りにもノロノロしていたため実体経済は賃金やガソリン代の高騰の影響で、パッタリと経済活動が止まりかねない失速寸前の状態が近いのかもしれないということです。
こういうときは株式投資のリスクが極めて高いのでなるべくポジションを小さめにし、無理をしない投資を心がけてください。
著者
広瀬 隆雄(ひろせたかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
グローバル投資に精通している米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
1982年 慶応大学法学部政治学科卒業。 三洋証券、SGウォーバーグ証券(現UBS証券)を経て、2003年からハンブレクト&クィスト証券(現JPモルガン証券)に在籍。