米国株式市場では最近、小型株指数「ラッセル2000」の上昇が注目を集めています。そこで今回は、「ラッセル2000」を中心に小型株についてご紹介いたします。
図表1 注目銘柄
銘柄 | 株価(7/23) | 52週高値 | 52週安値 |
---|---|---|---|
VG 米国スモールキャップ グロース ETF(VBK) | 261.19ドル | 268.30ドル | 195.63ドル |
iシェアーズ ラッセル 2000 ETF(IWM) | 222.63ドル | 226.64ドル | 161.67ドル |
ハロザイムセラピューティクス(HALO) | 55.40ドル | 56.50ドル | 32.83ドル |
バーテックス A(VERX) | 40.01ドル | 40.04ドル | 17.59ドル |
エスピーエス コマース(SPSC) | 208.65ドル | 218.74ドル | 151.96ドル |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
米国株式市場では、最近小型株に物色が広がる可能性が話題になっていますので、今回は小型株の代表的指数である「ラッセル2000」を中心に小型株についてご紹介いたします。
〇ラッセル2000とは
残念ながら当社ウェブサイトには米国の規模別指数までは掲載していません。しかし、「ラッセル2000」(Russell2000)は、米国「Yahoo! Finance」のトップ画面(※外部のサイトに遷移します)上に、S&P500指数、NYダウ、ナスダック指数とともに掲載され、市場での注目が高い株価指数です。内容は以下の通りです。
ラッセルインベストメント社が開発した米国の代表的な小型株指数で、ニューヨーク証券取引所やナスダックなどに上場している銘柄のうち、時価総額が上位1001位から3000位までの銘柄の時価総額加重平均型の株価指数です。米国の小型株ファンドのほとんどがベンチマークとして採用しています。
〇ラッセル2000とS&P500
このラッセル2000について、2020年初来のパフォーマンスをS&P500と比較したのが図表2になります。
2022年まで両指数とも概ね同じような動きとなっていましたが、2023年の初めから最近までパフォーマンスの乖離が目立ってきました。この期間は「マグニフィセント7」など大型のテクノロジー株が相場上昇をけん引する中、小型株は物色の圏外となる傾向があり、パフォーマンスが劣後しました。
一方、最近小型株が注目されているのは、S&P500指数の予想PERが2025年予想EPS基準で20倍と、大型株はかなり高い水準まで買い上げたとの認識があるとみられ、出遅れている小型株を物色できるか、打診買いが入っているためと考えられます。
過去1年半余りで20%近いパフォーマンス格差が生じているため、ある程度物色は継続する可能性が高いとみられます。
〇米国小型株のETFをご紹介
米国の小型株に投資するには、相対的にリスクが高いことを考えると、まず、分散投資ができているETFが考えられるでしょう。当社で取り扱っている主な商品は、図表3の通りです。
純資産額が最も大きいVG 米国スモールキャップ グロース ETF(VBK)とラッセル2000への連動を目指すiシェアーズ ラッセル 2000 ETF(IWM) を取り上げます。
前者のETFは、運用会社のバンガード社が提供、シカゴ大学関連の市場指数提供会社CRSPの「CRSP USスモールキャップ・グロース・インデックス」のパフォーマンスへの連動を目指します。7/22(月)時点の分配利回りは0.68%、経費率は0.07%です。
後者のETFは、運用会社のブラックロック社が提供、ラッセル2000への連動を目指します。7/22(月)時点の分配利回りは1.22%、経費率は0.19%です。
図表2 ラッセル2000とS&P500
注:最後のデータは7/23(火)です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表3 米国の小型株ETF(当社取り扱いETFの純資産額上位10銘柄)
注:データは7/19(金)時点です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
小型株への投資はリスクが高いため、基本的には銘柄分散が効いたETFで投資するのが良いと考えています。特に米国の小型株となると情報も少なく、リスクはかなり高い部類の投資となります。
情報が少ないという点については、例えば、S&P100指数の採用銘柄であれば、Bloombergの業種アナリストがカバーしていて、業界の動向、企業の動向をフォローして発信されています。一方、ラッセル2000を構成する銘柄では、Bloombergの業種アナリストがカバーしているものは稀といったような違いがあります。
ただ、リスク許容度が高い投資家の中には、リスクが高い小型株でも成長性の高い良いものに投資したいという方もいらっしゃるかと思います。そのような方に向けて、ラッセル2000の採用銘柄について、以下の条件でスクリーニングを行い、図表4にリストアップしました。
【スクリーニング条件】
・時価総額が50億ドル以上の銘柄(7/17(水)のデータで)
・来期予想増収率10%以上、来期予想増益率10%以上
・過去3ヵ月に予想EPSが下方修正されていない
・今期予想EPSがプラス
時価総額が相対的に大きく、業績の成長性が高く、足もとの業績動向も堅調に推移していると考えられる銘柄をピックアップしたいとの意図です。各社の事業内容は図表5の通りです。業種としては、産業機械やソフトウェアの企業が多くなっています。
これら銘柄から注目できそうなものとしてオレンジでハイライトした3銘柄を、次節で簡単にご紹介いたします。
図表4 ラッセル2000採用銘柄のスクリーニング(業績動向)
注:データは7/19(金)時点です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表5 ラッセル2000採用銘柄のスクリーニング(事業概要)
注:データは7/19(金)時点です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
ハロザイムセラピューティクス(HALO)
【ドラッグデリバリー技術で高成長】
・バイオテクノロジー企業です。主力製品の「ENHANZE」は、普通なら静脈注射で投与される多量の薬剤の皮下投与を可能にする技術で、遺伝子組み換えヒアルロニダーゼ「rHuPH20」(ボルヒアルロニダーゼ アルファ)という、ヒアルロン酸を加水分解する酵素です。「rHuPH20」を薬剤に配合すると、注射部位のヒアルロン酸を局所的に分解してバリアを除去、これにより多量の薬液を皮下空間に注入することが可能となります。皮下投与の最大のメリットは、静脈内投与が数時間かかるのに比べて数分と投与時間を大幅に短縮できることです。
・同技術は、ロシュのがん免疫治療薬「Tecentriq SC」、ジョンソン&ジョンソンの多発性骨髄腫治療薬「Darzalex FASPRO」、ロシュの乳がん治療薬「Herceptin Hylecta」など、現在7つの医薬品に応用されています。同技術を採用する薬が増えることによって売上が拡大しています。
・業績は安定的な高成長が続いています。売上は、2018年の152百万ドルから2023年の829百万ドルに5倍以上となりました。2024年から2026年にかけての売上成長率は19%、17%、21%と見込まれています。予想PERは10倍台前半と低く、業績拡大に伴って株価が上昇していく可能性が高いと考えられます。
バーテックス A(VERX)
【税務コンプライアンスソフトウェアのリーダー】
・税務コンプライアンスソフトウエアの会社。売上税、付加価値税、物品税、通信サービス税、リース税、宿泊税、給与税などの税務管理ソリューションを提供します。税制ルールの電子的な配信を1980年代に始め、1982年に税金処理ソフトウェアを初めて販売、税制関連の業界に40年以上の経験をもちます。
・小売、電気通信、出版、情報システム、産業機械などの業界向けに事業を展開して、「フォーチュン500」企業の60%を顧客としています。また、195ヵ国の市場をサポートして、グローバルに事業展開しています。税務コンプライアンス分野のリーダーと目され、2024年1月にはIDCから顧客満足賞を獲得しています。
・業績は安定的な高成長が続いています。売上は、2018年の272百万ドルから2023年の574百万ドルに倍増以上となりました。2024年から2026年にかけての売上成長率は15%、14%、19%と見込まれています。今期予想EPSを基準とすると予想PERは70倍を超えますが、2026年予想EPSを基準とすると30倍台まで低下します。
エスピーエス コマース(SPSC)
【サプライチェーン管理ソリューションを提供】
・サプライチェーン管理のソリューションを全世界に提供しています。小売業者、サプライヤー、食料品店、流通業者、物流業者がオムニチャネルの注文を管理、履行し、セルスルーを最適化し、新しい取引関係を自動化する方法を強化するクラウド型プラットフォームです。
・また、フルフィルメントを自動化し、既存のスタッフや取引先の電子通信インフラを代替・増強するフルフィルメント・ソリューションや、データ分析アプリケーションで構成され、優れた分析能力によりサプライチェーン全体の可視性を向上させるアナリティクス・ソリューションも提供しています。さらに、正確なオーダー管理と迅速なフルフィルメントを可能にするアソートメント製品や、ベンダーのオンボーディングを促進し、新しいサプライチェーン要件の取引先採用を保証するコミュニティ製品など、さまざまな補完的製品も提供しています。
・業績は安定的な高成長が続いています。売上は、2018年の248百万ドルから2023年の537百万ドルに倍増以上となりました。2024年から2026年にかけての売上成長率は16%、15%、14%と見込まれています。
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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