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“「高配当利回り銘柄の債券化」は進むのか?”
2019/10/8
提供:フィリップ証券株式会社
リサーチ部:笹木 和弘、増渕 透吾
- 景気後退入りの影が差しつつあるのだろうか。10/1発表の米ISM製造業景況感指数(9月)が47.8と10年3ヵ月ぶりの低水準となった。これに続き、10/2発表のADP全米雇用レポート(9月)で非農業部門(除く政府部門)の雇用者数が前月比13.5万人増と市場予想を下回り、10/3発表の米ISM非製造業景況感指数(9月)も52.6と2016年8月以来の低水準となった。そして、10/4発表の雇用統計(9月)では非農業部門の雇用者数が前月比13.6万人増と前月(同16.8万人増)から減速し、製造業の就業者数が同2千人減となったことに加え、平均時給も前年同月比2.9%増と約1年ぶりに3%台を割り込んだ。
- これを受けて米国株式市場は、9/30こそダウ工業株30種平均(NYダウ)で27,000ドルを意識した堅調な動きだったものの、10/1-3は景気指標悪化を反映して10/3の25,743ドルまで下落。その後は景気指標の悪化がFRBによる利下げへの期待を高め、NYダウは反転して10/4の26,590ドルまで上昇した。
- 一般的には景気後退懸念が強まって利下げサイクルに入れば、企業業績悪化と金利低下を見越して株式が売られ、債券が買われる展開になりやすいと言われる。ところが、既に米国10年国債年利回りが1.5%台の低位水準であり、トルコのような新興市場債券を除けば主要国の10年国債利回りが軒並み米国債利回りを下回っている。ギリシャの10年国債利回りは7-8年前の欧州債務危機時に年利回りが30%台まで上昇し、4年前のユーロ離脱危機時に同18%台まで上昇したが、現在は米国10年国債利回りを下回っている。株式からシフトすべき有力な資産を見つけにくいのが現状だろう。その一方、NYダウ構成銘柄の5社が市場予想ベースの今期配当年利回り(9/30終値基準)で4%を超えている。確定利息と配当金の違いはあるもののキャッシュフローが安定した高配当利回り銘柄を債券投資の代替手段と位置付ける動きが進むことが考えられ、利下げ期待に対する株価指数上昇の感応度が今後増していく可能性もあろう。
- また、9/27に更新されたファクトセットの「Earnings Insight」によれば、同日までに2019年3Q(7-9月)におけるEPSガイダンスを発表したS&P500構成企業113社のうち、82社が下方修正、31社が上方修正となっている。セクター別に同時期における過去5年平均のEPSガイダンス修正の状況と比較した場合、ITとヘルスケアの下方修正発表企業数の割合の高さが目立つ。これらのセクターにおける3Q決算が会社ガイダンスを上回るかどうかが要注目点だろう。(笹木)
- 10/8号ではKBホーム(KBH)、レナー(LEN)、マコーミック(MKC)、ペプシコ(PEP)、スカイワークス・ソリューションズ(SWKS)、エクソンモービル(XOM)を取り上げた。
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(10/4現在)
10月10日(木) | デルタ航空 |
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10月11日(金) | ファスナル |
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10月15日(火) | ジョンソン・エンド・ジョンソン、プロロジス、ユナイテッドヘルス・グループ、JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー、ファースト・リパブリック・バンク、ブラックロック、ゴールドマン・サックス・グループ、シティグループ、ウェルズ・ファーゴ、ユナイテッド・エアラインズ・ホールディングス、JBハント・トランスポート・サービシズ |
10月8日(火) | - パウエルFRB議長・シカゴ連銀総裁・カーニー英中銀総裁が講演
- ミネアポリス連銀総裁がタウンホールのディスカッションに参加
- ノーベル物理学賞受賞者 発表
- PPI(9月)
- 独鉱工業生産(8月)、中国財新サービス業・コンポジットPMI(9月)
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10月9日(水) | - パウエルFRB議長がFRBの金融政策再点検のためのイベントに出席
- FOMC議事要旨(9月17-18日開催分)
- ノーベル化学賞受賞者発表
- ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)
- IMF世界経済見通し(WEO)分析部分公表
- 求人件数(8月)、卸売在庫(8月)
- 中国経済全体のファイナンス規模・新規融資・マネーサプライ(9月分、15日までに発表)
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10月10日(木) | - クリーブランド連銀総裁が講演
- 中閣僚級貿易協議(11日まで、ワシントン)
- ノーベル文学賞受賞者発表、EU財務相理事会、朝鮮労働党創建記念日
- OPEC月報
- CPI(9月)
- 独貿易収支(8月)、英鉱工業生産(8月)
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10月11日(金) | - ミネアポリス連銀総裁がQ&Aに参加
- ボストン連銀総裁・ダラス連銀総裁が講演
- 英EU離脱を含むEU首脳会議の議題設定期限
- ノーベル平和賞受賞者発表
- 国際エネルギー機関(IEA)月報
- 輸入物価指数(9月)、ミシガン大学消費者マインド指数(10月)
- 独CPI(9月、改定値)
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10月15日(火) | |
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- 1957年に設立。米国内で主に住宅の購入や買い替えが初めての顧客を対象とする一世帯住宅を建設する。ロサンゼルスを本社とし、西海岸、南西、中央、南東の4つの地域セグメントで運営。
- 9/25発表の2019/11期3Q(6-8月)は、売上高が前年同期比5.3%減の11.60億USDと市場予想を下回った。平均販売単価が同7%下落の38万1,400USDとなったことが響いた。純利益も同22.1%減の6,813万USD。その一方、先行指標となる新規受注件数は同24%増と堅調に伸びた。
- 2019/11通期の市場予想(Bloomberg)は、売上高が前期比0.9%増の45.88億USD、営業利益が同6.9%減の3.30億USD、当期利益が同57.6%増の2.68億USD。3Qは新規受注額も前年同期比25%増、取消件数率が同6%ポイント低下、四半期末の受注残が同14%増と先行指標は堅調。FRBの政策金利の引下げ次第では住宅ローン金利低下が同社業績への追い風となろう。(笹木)
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- 1954年にマイアミで設立した米国最大の住宅建設会社。一世帯向け戸建て住宅のほか、集合住宅や商業用不動産、不動産金融サービスを提供する。子会社のRialtoを通じて資産運用も行う。
- 10/2発表の2019/11期3Q(6-8月)は、売上高が前年同期比3.3%増の58.57億USD、純利益が同13.3%増の5.13億USD。EPSは1.59USDと市場予想の1.31USDを上回った。価格の低下が需要を刺激し住宅市場が堅調に推移。新規受注戸数が同9%増、引渡戸数が同7%増とそれぞれ伸びた。
- 2019/11期4Q(9-11月)会社計画は、新規受注が12,200-12,400戸、引渡戸数が16,000-18,500戸、平均販売価格が38.5-39万USD、粗利益率が21.25-21.5%、EPSが1.81-1.94USD。通期会社計画は、平均販売価格は40万USD、粗利益率は20.5-21%、フリーCFが15億USD、引渡戸数が51,000戸。引渡戸数は6/25の50,500-51,000戸から下限を引き上げた。長期金利低下が追い風。(増渕)
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- 1889年創業。スパイスやシーズニングミックス、調味料、香料などを小売業者や食品メーカー、フードサービス事業に提供している。約150の国・地域でMcCormick、French'sなどのブランドを展開。
- 10/1発表の2019/11期3Q(6-8月)は、売上高が前年同期比0.8%増の13.29億USD、純利益が同10.6%増の1.91億USD。EPSは1.43USDと市場予想の1.27USDを上回った。米国・アジア太平洋で投入した新製品が牽引し消費者向け製品が伸びた。包括的改善策により粗利益率は同100bp上昇。
- 通期会社計画を上方修正。増収率を1-2%、為替変動を除く増収率を3-4%、営業増益率を8-9%とそれぞれ従来計画の1-3%、3-5%、8-10%から上限を引き下げた。一方、想定法人税率が21%から20%に下がったためEPSを5.20-5.25、調整後EPSを5.30-5.35USDと従来計画の5.09-5.19USD、5.17-5.27USDから引き上げた。調整後EPSガイダンスは市場予想の5.28USDを上回った。(増渕)
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- 1919年に設立した世界的な飲料・食品メーカー。「フリトレー」や「ゲータレード」、「ペプシコーラ」「クエーカー」、「トロピカーナ」などのブランドを展開。200以上の国・地域で製品を提供している。
- 10/3発表の2019/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比4.2%増の171.88億USD、純利益が同15.9%減の21.00億USD。調整後EPSは1.56USDと市場予想の1.50USDを上回った。為替変動の影響を受けたが、オーガニック売上高が同4.3%増と伸びた。広告宣伝費などの費用が響き減益。
- 通期会社計画は、為替変動やコモディティー価格の変動の影響を除くオーガニックベースの増収率が4%かそれ以上、コアEPS(2018年の戦略的資産売却やリフランチャイズ化に伴う利益、実効税率の上昇、事業強化のための追加投資を含む)が同1%減、営業CFが90億USD(前期:94.15億USD)、フリーCFが50億USD(同:62.67億USD)、資本的支出が45億USD(同:32.82億USD)。(増渕)
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- 1962年にAlpha Industriesとして設立。2002年に社名変更。高性能アナログ半導体を手掛ける。製造業、医療、防衛、コンピューティングなど幅広い分野向けに半導体ソリューションを提供する。
- 8/7発表の2019/9期3Q(4-6月)は、売上高が前年同期比14.2%減の7.67億USD、純利益が同49.7%減の1.44億USD。調整後EPSは1.35USDと市場予想の1.34USDを上回った。IoTアプリケーション数の増加や提供分野の拡大により一部相殺されたものの、スマホ需要低迷の影響により減益。
- 2019/9期4Q(7-9月)の会社計画は、売上高が8.15-8.35億USD、調整後EPSが売上高ガイダンスの中央値ベースで1.50USD。四半期配当を1株あたり0.38USDから0.44USDに引き上げた。日経新聞社の報道によると、アップル(AAPL)は新型iPhoneの3機種の2019年生産計画を7,000-7,200万台からと見込んでいたが、最大8,000万台へ引き上げたもよう。同社は主要サプライヤーの1つ。(増渕)
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- 1999年にエクソンとモービルの合併により設立。「スーパーメジャー」6社の1社。世界各地で石油とガスの探査・生産を行う。発電、鉱山事業やガソリン、潤滑油の製造・販売も手掛ける。
- 8/2発表の2019/12期2Q(4-6月)は、売上高が前年同期比6.0%減の690.91億USD、純利益は同20.8%減の31.30億USD。原油・天然ガスの生産は増加したが、原油価格の下落が響いた。セグメント利益は上流部門が同13%増だったが、下流部門が同38%減、化学部門が同79%減だった。
- 10/1発表の2019/12期3Q(7-9月)の暫定決算では、原油安と化学部門の不調、および前年同期に受けた税制優遇の恩恵が無くなることから前年同期比で約40億USDの減益を見込む。同社の営業キャッシュフローは前四半期比で59.47億USD増と堅調な伸びを示し、株式報酬関連の希薄化に対応した自社株買いも積極的に実施。高配当利回りに着目した投資に妙味があろう。(笹木)
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