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“増税提案とファミリーオフィス、ワクチン接種と株価”
“増税提案とファミリーオフィス、ワクチン接種と株価”
2021/4/27
提供:フィリップ証券株式会社
リサーチ部:笹木 和弘、李一承
“増税提案とファミリーオフィス、ワクチン接種と株価”
- 4/22、バイデン大統領が所得が100万ドル以上の個人に対するキャピタルゲイン税率を現行の20%から39.6%へ引き上げることを提案する見通しと伝えられた。キャピタルゲインに対する連邦税税率は付加税を併せると最高で43.4%に上る可能性があり、4/28の上下両院合同会議での演説で発表される見通しだ。この増税案に対し、民主党上院議員の中からも反旗を翻す動きが出る可能性があり、投資銀行UBSのように「ベースシナリオは28%」と引上げ幅の縮小を見込む向きもあることや、増税の対象となる投資家保有株式の市場全体に占める比率が相対的に小さいことから、4/23の米株式市場は増税の影響が限られるとして買い優勢の展開となった。
- しかし、大統領就任100日間の「ハネムーン期間」が過ぎる5月以降、増税を前にしてGAFAをはじめ含み益が大きい銘柄を富裕層が早めに売却に動く可能性は無視できないだろう。特に、アルケゴス・キャピタルの巨額損失取引で問題視されたファミリー・オフィス口座の中には、個人名義または実質的に個人と認定されて増税の対象となる場合が含まれる可能性がある。市場調査会社のカムデン・リサーチによれば、2019年時点で世界のファミリー・オフィスが運用する資産が総額約6兆ドルとされ、ヘッジファンド(約3.6兆ドル)とベンチャーキャピタル(約1.4兆ドル)の合計額を大きく上回る。増税の影響は軽視できるものではないと言えよう。
- 短期的には、年初からのNYダウ平均株価の推移は、米国の日別の新型コロナワクチン接種回数の動向に強く影響されていると見受けられる。同ワクチン接種回数が約396万6千回の過去最高となった4/16に、NYダウ平均株価も34,182ドルの過去最高値を付け、その後、同ワクチン接種回数が約180万7千回に低下した4/20に、NYダウ平均株価も33,687ドルまで下落。同ワクチン接種回数が約337万5千回に回復した4/23に、NYダウ平均株価が終値で34,000ドルを超えた。集団免疫の獲得に全人口の7割以上の接種が必要とされるなか、州ごとに人口当たり摂取割合にバラつきが見られることは短期的に株価上昇の足枷となる可能性があろう。
- 4/27以降の主要銘柄の決算発表および4/28のFOMCでの声明発表とともに注目されるのは、4/28に予定されているバイデン大統領の上下両院合同会議での演説である。同演説では、子育てなどの支援を軸とする「米国家族計画」が発表される見通しであり、保育・早期教育サービス会社で仕事と育児の両立を支援するサービスを展開するブライト・ホライズン・ファミリー・ソリューションズ(BFAM)の株価動向が注目されよう。(笹木)
- 4/27号では、アムジェン(AMGN)、Bill.com Holdings Inc(BILL)、エクスペディア・グループ(EXPE)、ゴールドマン・サックス・グループ(GS) 、HUYA Inc(HUYA)、バルカン・マテリアルズ(VMC)を取り上げた。
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(4/23現在)
4月27日(火) | アルファベット、マキシム・インテグレーテッド・プロダクツ、イルミナ、テキサス・インスツルメンツ、ビザ、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ、スターバックス、マイクロソフト、アムジェン、モンデリーズ・インターナショナル、キャピタル・ワン・ファイナンシャル、ゼネラル・エレクトリック、パッカー、ファイサーブ、イーライリリー、レイセオン・テクノロジーズ、3M、ユナイテッド・パーセル・サービス |
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4月28日(水) | クアルコム、フェイスブック、オライリー・オートモーティブ、フォード・モーター、アライン・テクノロジー、シリウスXMホールディングス、オートマチック・データ・プロセシング、アップル、ボーイング、ゼネラル・ダイナミクス、イーベイ |
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4月29日(木) | デクスコム、KLA、シージェン、アトラシアン、アマゾン・ドット・コム、ギリアド・サイエンシズ、スカイワークス・ソリューションズ、バーテックス・ファーマシューティカルズ、サザン、メルク、ブリストルマイヤーズスクイブ、コムキャスト、マクドナルド、マスターカード、エクセル・エナジー、サーモフィッシャーサイエンティフィック、クラフト・ハインツ、アルトリア・グループ、キューリグ・ドクターペッパー、キャタピラー |
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4月30日(金) | コルゲート・パルモリーブ、アッヴィ、シェブロン、チャーター・コミュニケーションズ、エクソンモービル |
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5月3日(月) | アレクシオン・ファーマシューティカルズ |
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5月4日(火) | アクティビジョン・ブリザード、ベリスク・アナリティクス、マッチ・グループ、ザイリンクス、TモバイルUS、CVSヘルス、コノコフィリップス、ファイザー、アイデックスラボラトリーズ、インサイト |
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5月5日(水) | コグニザント・テクノロジー・ソリューションズ、メットライフ、ペイパル・ホールディングス、アンシス、フォックス、ゼネラル・モーターズ、エクセロン、エマソン・エレクトリック、サーナー、CDW |
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5月6日(木) | アメリカン・インターナショナル・グループ、マイクロチップ・テクノロジー、リジェネロン・ファーマシューティカルズ、モデルナ、LindePLC |
4月27日(火) | - 主要20都市住宅価格指数(2月)、FHFA住宅価格指数(2月)、消費者信頼感指数(4月)
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4月28日(水) | - FOMC声明発表・FRB議長記者会見、米大統領が上下両院合同会議で演説、卸売在庫 (3月)
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4月29日(木) | - 米新規失業保険申請件数 (24日終了週)、GDP (1Q)、中古住宅販売成約指数(3月)
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4月30日(金) | - 米個人所得・個人支出 (3月)、雇用コスト指数 (1Q)、ミシガン大学消費者マインド指数(4月)
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5月3日(月) | - 米自動車販売 (4月)、ISM製造業景況指数 (4月)
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5月4日(火) | |
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5月5日(水) | - 米シカゴ連銀総裁が講演(オンライン)、ADP雇用統計 (4月)、ISM非製造業総合景況指数 (4月)
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5月6日(木) | - 米ダラス連銀総裁が討論会に参加、新規失業保険申請件数 (5月1日終了週)
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- 1980年に創業。遺伝子組換え技術や分子生物学的技術を軸とするバイオテクノロジー企業。循環器疾患、癌、骨疾患、神経疾患、腎疾患、炎症性疾患などの治療薬の研究開発を手掛ける。
- 2/2発表の2020/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比7.1%増の66.34億USD、Non-GAAPの調整後純利益が同2.5%増の22.29億USD。19年11月に買収した米セルジーンの乾癬治療薬オテズラが同3.5倍の6.17億USDと増収に寄与したが、販管費が同17.2%増と嵩み営業利益は同2.0%減。
- 2021/12期通期会社計画は、売上高(中間値)が前年同期比3.1%増の258-266億USD、調整後EPS(中間値)が同0.6%減の16.00-17.00USD。骨粗しょう症治療薬のプロリラやリウマチ治療薬のエンブレルなど主力医薬品の販売鈍化のほか、後発医薬品との競争による価格下落見通しの懸念の一方で、MVASIやKANJINTIのようなバイオシミラー(後続品)の販売が伸びている点が注目される。(李)
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- 2006年設立。中小企業向けの業務効率化のソフトウェアを定額制クラウドサービスで提供。2017年に会計ソフト「QuickBooks」内で「Bill Pay」を提供開始。Mastercard、AmericanExpressなどと提携。
- 2/4発表の2021/6期2Q(10-12月)は、売上高が前年同期比38.3%増の5,405万USD、Non-GAAPの調整後純利益が前年同期の▲360万USDから▲209万USDへ赤字縮小。決済総額(TPV)が同40%増、顧客数が同27%増と伸びたことを受け、サブスクリプション・決済手数料が同58.8%増となった。
- 2021/6期3Q(1-3月)の会社計画は、売上高(中間値)が前年同期比31.6%増の5,370-5,470万USD。調整後EPSが前年同期の▲0.04USDから▲0.08−▲0.07USDへ赤字拡大。株式型報酬として1,100-1,200万USDのほか新社屋等の費用を見込んでいる。2Qの前四半期比は、顧客維持率が上昇したほかTPVが21%増と改善。2023/6期の黒字化目標を前倒しで達成する可能性もあろう。(李)
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- 2001年に設立の米オンライン旅行通販大手(OTA)。「Expedia」、「Trivago」、「HomeAway」、「Vrbo」などの予約サイトを通じ、世界中のホテル宿泊、各種航空券、オプショナルツアーなどを提供する。
- 2/11発表の2020/12 期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比66.5% 減の9.2億USD、Non-GAAPの純利益が前年同期の1.85億USDから▲3.76億USDへ赤字転落。4四半期連続の最終赤字となり、売上高が前四半期比38.8%減収だったが、最悪期だった2Q(4-6月)の5.66億USDを上回って推移。
- 2021/12通期会社計画を非公表としたが、新型コロナワクチン普及に伴い、米国内旅行の繰延需要が顕在化するとの見通しを示した。また、総予約取扱高は前期4Qが前年同期比67.4%減に対し、今年1月が前年同月比40%台後半減まで改善。民泊予約サイトVrbo(バーボ)の1棟貸し民泊事業に注力し、旅行者との直接契約で高利益率の「マーチャント型」へのシフトが進んでいる。(李)
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- 1869年創業の世界有数の金融機関。「投資銀行部門」、トレーディング事業を主力とする「グローバル市場部門」、「アセットマネジメント部門」、「コンシューマー&ウエルスマネジメント部門」を営む。
- 4/14発表の2021/12期1Q(1-3月)は、純営業収益が前年同期比2.0倍の177.04億USD、営業費用が同46%増の94.37億USDクレジット損失引当金が前年同期の9.37億USDの繰入れから7,000万USDの戻入れに改善、純利益が同6.0倍の67.11億USD。セグメント別の全部門が増収と堅調に推移。
- 2021/12通期会社計画を非公表としたが、企業のM&Aが今後も活発化すると見込むほか、特別目的会社(SPAC)によるIPOブームが継続するとみられることから好業績が見込まれよう。また、米国の新型コロナワクチン普及に伴う与信環境の好転が与信関連費用の減少に繋がるとみられるほか、アルケゴス・キャピタルの巨額損失取引で損失を避けた点は信用リスク管理面で評価されよう。(李)
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- 2014年に中国ライブ動画配信プラットフォームのJOYY(YY)よりスピンオフで設立。テンセント傘下のeスポーツ・ゲームライブ動画配信大手。仮想ギフトやライブ動画のサブスクリプションなどを展開。
- 3/23発表の2020/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比21.2%増の29.90億元、Non-GAAPの調整後純利益が同26.5%増の3.06億元。月間稼働ユーザー数(MAU)が同18.8%増、課金ユーザー数が同17.6%増だったことを受け、主力のライブ動画配信が同20.0%増収(28.15億元)となった。
- 2021/12通期計画は非公表。4Qの課金ユーザー数の85%がモバイル経由となるなか、4Qのモバイルユーザーに係るMAUは前年同期比29.1%増の7,950万人と、3Qの同16.3%増から伸びが加速。昨年10月に同業の闘魚(ドウユウ)を子会社化し、中国ゲーム動画配信市場シェアが80%に拡大。同社はゲームコンテンツ動画配信通じ、テンセントユーザーの取り込みで成長を目指す方針。(李)
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(注)日足の始値と終値をローソク足で表示。「始値>終値(陰線)」なら緑、「始値<終値(陽線)」なら赤。 |
- 1909年創業の米建設資材メーカー。骨材サプライヤーでは最大手。骨材、砂利、アスファルト混合物、生コンクリートを主要製品とする。物流ネットワークも展開し2020年出荷の骨材量は2.08億トン。
- 2/16発表の2020/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比0.9%減の11.75億USD、純利益が同18.8%減の1.15億USD、調整後EBITDAが同4.6%増の3.11億USD。主力の骨材出荷量が同0.9%減の5,113万トンも、製品値上げ(同3.3%上昇)で粗利益が同0.5%増。販管費や金利が嵩んで減益。
- 2021/12期の通期会社計画は、骨材出荷量が前期比▲2.0-2.0%、輸送費調整後の製品価格が同2-4%上昇、継続事業からの純利益が同8.1-21.6%増の4.8-5.4USD、調整後EBITDAが同1.2-8.8%増の13.4-14.4億USD。バイデン大統領が8年間で2.25兆USD規模のインフラ投資「米国雇用計画」を議会に提案。高速道路の改修を主力とする運輸関連に6,200億ドルの予算計上を目指している。(李)
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- (※)決算発表の予定は4/23現在であり、変更される可能性があります。
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