-
7/6に米10年国債利回りが急低下した同日、WTI原油先物価格は一時1バレル77ドル近くまで急騰したものの一転して反落。翌日7/7は取引時間中に4ドル近く下落するなど荒れた値動きとなった。また、7/6-7の2日間は米長期金利低下に対しドルインデックスが小幅上昇のほか、米ドルが買われる際に売られ易い金も上昇するなど、平時と異なる動きだった。
このような金・原油・米長期金利・米ドルの相関は2018年10月に当時のペンス副大統領の演説で米中冷戦が深刻化した際にもみられたことから要注意だろう。
2018年10月近辺の推移と類似の展開も〜金高・原油安・金利低下・ドル高?
-
米バイデン政権は、「米国雇用計画」について当初の規模(2.25兆ドル)を縮小した譲歩案を5/25に共和党に提示。交渉が頓挫していたなか、超党派上院議員団で調整を続け、6/24に合意に至ったとの声明を発表。合意案では輸送部門インフラ整備に3,120億ドル、非輸送部門インフラ整備に2,660億ドルが新規支出として充てられるほか、同分野で毎年度支出される分と合わせた支出規模は8年間で約1.2兆ドルにも及ぶとしている。
道路・橋梁整備で建設骨材製造のバルカン・マテリアルズ(VMC)や設備レンタルのユナイテッド・レンタルズ(URI)が、電力グリッド網整備で太陽電池モジュールのファーストソーラー(FSLR)のほか、固定酸化物形燃料電池(SOFC)を扱うブルーム・エナジー(BE)も要注目だ。
インフラ投資の米国雇用計画〜毎年度支出分と合わせて8年1.2兆ドル
- 米供給管理協会(ISM)が7/1発表した6月の製造業景況感指数は前月比0.6ポイント低下の60.6と減速したものの堅調な活動拡大を示した。ただ、支払価格指数が約42年ぶりの水準に急上昇したほか、雇用指数が49.9と、50を下回るなど原材料調達や熟練労働者の確保が困難になっている面も浮き彫りにされた。
一方、同協会が7/6に発表した6月の非製造業景況感指数は前月比3.9ポイント低下の60.1と拡大ペースの鈍化を示したほか、新規受注指数が同1.8ポイント低下。また、雇用指数が同6.0ポイント低下の49.3と50を下回る縮小に転じたほか、在庫景況感指数も同3.2ポイント低下。米国10年国債利回りは、7/1は1.45%前後だったが、非製造業の景気減速が示されたことで7/6に1.35%割れまで急低下。
米国景況感がガラリ一変か?〜ISM製造業・非製造業景況感指数の内訳
-
今年5月中旬以降、S&P500株価指数が堅調に上昇する一方、グローバル経済の景況感を表しやすいとされる豪ドルの対円レートは下落に転じている。過去1年間の推移を見ても、今年5月頃までは両者の高い相関関係が示されていたなか、足元はダイバージェンス(逆行現象)が発生。また、外航不定期船の運賃指数であるバルチック海運指数と米国10年国債利回りの推移でも、今年6月中旬以降は両者の相関関係が崩れてダイバージェンスがみられるようになった。
豪ドル相場下落や米長期金利低下はグローバル経済減速を示す一方、バルチック海運指数の上昇は海上輸送物流混乱に伴うコスト上昇圧力の高まりを表すと言えよう。これらの関係からは米国株価上昇の持続力に疑問の余地があろう。
2つのダイバージェンスに注目〜米国株の逆行高、コスト高での金利低下
-
6/28、米国立気象局は40度を超える記録的な高温が続く米西部の州の広い範囲に高温警報を出し、屋外での活動を控えて空調設備のある屋内にとどまるよう呼びかけた。極端な高温は水不足をもたらし、カリフォルニア州で売買する水の使用権に係るCMEナスダック・ヴェレス・カリフォルニア水指数が急騰。空調大手で米国でもシェア上昇中のダイキン工業などへの追い風が見込まれる一方、農作物への影響が懸念されよう。
7/14、欧州委員会は包括的気候対策の一環として「排出枠取引制度(ETS)」の改革を発表。現行のETS適用分野の毎年の排出上限削減率を約2倍の4.2%としたほか、適用分野を海運、道路輸送、建物に拡大。2023-2025年までの段階適用を経て2026年から完全適用するとした。
水と排出量取引の先物価格〜水不足の深刻化、EUの排出量取引改革
-
7/9、中央銀行の中国人民銀行が金融機関から強制的に預金を預かる預金準備率を0.5ポイント引き下げた。これにより、新たに約1兆元が市場に供給されると見込まれている。名目GDPに対する与信の伸び率変化を示す「クレジット・インパルス」の下落に歯止めがかかっていないものの、6月の中国の銀行新規融資額が前月比41%増と伸びが加速した。
表向きは原材料価格高騰で厳しい経営状況が続く中小零細企業の資金繰り支援とされているが、巨額債務を抱える大手不動産会社のデフォルトによる信用不安への危機感の表れとの見方もある。中国金融緩和により商品市場への資金流入再開が期待されたなか、7月下旬の市況は、銀を除く銅、アルミニウム、ニッケルが相対的に堅調に推移している。
中国の金融緩和と商品市況〜預金準備率引下げ後の金属価格を注視
米国ウィークリー・マンスリー一覧へ戻る