“噴出する米国株失速懸念、米国株の意義を再認識”
- 8月の雇用統計発表の翌週になって、急に米国株式相場失速の懸念が市場に広がり始めた。ゴールドマン・サックス・グループは「高いバリュエーションが市場の脆弱性を高めている」、「重要なのは、大きなネガティブサプライズが発生した場合、市場に緩衝材が殆ど残っていないことだ」と指摘。シティグループのストラテジストは、S&P500株価指数のロングポジションがショートポジションの10倍近くの超強気ポジションとなっている現状から、小幅な調整でもロングポジションの強制的解消によって損失が増幅されるおそれがあると警告。モルガン・スタンレーは8/7、10月末までに経済成長に「特大のリスク」があることを理由に挙げて米国株の投資判断を「アンダーウェイト」に、世界株式を「イコールウェイト」にそれぞれ引き下げた。
- 既にアフガニスタン駐留米軍撤退の進め方への批判等を受けてバイデン大統領の支持率が急落し、世論調査の平均で不支持率が上回るなか、9/10発表の8月の生産者物価指数が前年同月比8.3%上昇と、コロナ禍によるサプライチェーン圧迫に伴う高インフレが当面続く公算が高いと見られ、FRBによるテーパリング(量的緩和の縮小)が年内に開始される可能性が懸念されている。また、米連邦債務上限問題でイエレン財務長官が「10月にも政府資金が枯渇する可能性が高い」と繰り返し警告している。
- 株式市場のバリュエーションについては、著名投資家のウォーレン・バフェット氏が重視するとされ、Bloombergによると株式の時価総額を名目GDPで割ってパーセント表示にした数値の「バフェット指数」が9/3に史上最高の229%に達した。一般に100%を上回るか下回るかで株価の割高・割安を解釈するといわれるなか、割高感は否定できないだろう。なお、日本のバフェット指数は9/10で123%にとどまる。「高いバリュエーションが市場の脆弱性を高めている」という指摘は的を射ている面もあり、日本株など割安市場への資金をシフトする投資家が続出しても不思議ではない。
- 一方で、米国株は将来の成長期待によって割高感が正当化されてきた面が強い。FRBのバランスシート拡大に伴って過剰流動性マネーが時価総額の大きいGAFAMなどハイテク株に流入するペースはテーパリングによって減速を余儀なくされ、その影響が米国株全体に及ぶ可能性はあろう。それでも、成長途上のグロース株が日本株に殆ど見られないような成長のスピード感とスケールを伴って時価総額を拡大していくのを妨げるものではないだろう。その意味では、米国株の投資意義が再認識されよう。(笹木)
- 9/14号では、AGCO(AGCO)、 Allegro MicroSystems Inc(ALGM)、 Avalara(AVLR)、 イーグル・マテリアルズ(EXP)、 ペンティア(PNR)、 オン・セミコンダクター(ON)を取り上げた。
ウィークリーストラテジー
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(9/10現在)
主要企業の決算発表予定
9月20日(月) | レナー |
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9月21日(火) | アドビ、フェデックス、オートゾーン |
主要イベントの予定
9月14日(火) |
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9月15日(水) |
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9月16日(木) |
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9月17日(金) |
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9月20日(月) |
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9月21日(火) |
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- ※Bloombergをもとにフィリップ証券作成
銘柄ピックアップ
AGCO(AGCO)市場:NYSE・・・2021/11/3に2021/12期3Q(7-9月)の決算発表を予定
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AllegroMicroSystemsInc(ALGM)市場:NASDAQ・・・2021/11/4に2022/3期2Q(7-9月)の決算発表を予定
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Avalara(AVLR)市場:NYSE・・・2021/11/5に2021/12期3Q(7-9月)の決算発表を予定
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イーグル・マテリアルズ(EXP)市場:NYSE・・・2021/10/29に2022/3期2Q(7-9月)の決算発表を予定
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ペンテア(PNR)市場:NYSE・・・2021/10/20に2021/12期3Q(7-9月)の決算発表を予定
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オン・セミコンダクター(ON)市場:NASDAQ・・・2021/10/21に2021/12期3Q(7-9月)の決算発表を予定
(注)日足の始値と終値をローソク足で表示。「始値>終値(陰線)」なら緑、「始値<終値(陽線)」なら赤。 |
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- (※)決算発表の予定は9/10現在であり、変更される可能性があります。