トランプ大統領 はなぜ強硬姿勢?
就任から1ヵ月が経過した現在、支持率が40%台に低迷しているトランプ大統領ですが、数々の言動と大統領令が物議を醸しています。
【トランプ大統領が署名した大統領令(一部)】
・TPP離脱
・オバマ政権下で中止した、カナダとのパイプライン促進
・金融改革法(ドッド・フランク法)の見直し
・オバマケアの見直し
・イスラム圏7ヵ国からの入国制限
なぜ、ここまで強硬姿勢なのか? という問いに対する答えの一つとして、
軍事力増強と海洋進出を推し進めながら、国際ルールを軽視する中国に歯止めをかけることを目的とした政策運営だ・・・と考えることもできるかもしれません。
歴史を振り返ると、2001年に当時のビル・クリントン大統領が中国のWTO(世界貿易機構)加盟を承認したことを契機に、低賃金・低コストを求めて、米産業界は一斉に生産拠点を中国に移転させました。
その結果、米国内では約7万もの工場が閉鎖され、失業者・非正規雇用者は最終的に2,500万人以上に増加しました。
さらに米国の貿易赤字は膨らみ、米商務省が2/7に発表した2016年貿易統計によると、モノの貿易での対中赤字は、3,470億ドル(約39兆2千億円)と全体の赤字額の約47%を占めています。
また、習近平・中国国家主席の権力集中、独裁体制は強化されています。
【習近平・中国国家主席 現在のポジション】
・共産党総書記
・中央軍事委員会主席など
【日本の政治家に置き換えると・・・】
・総理大臣
・国家公安委員長
・防衛大臣
・最高裁長官
・行革担当大臣・・・など
一方の米国はオバマ政権下で防衛予算を大幅に削減し、軍が保有する艦船もピーク時の500隻以上から300隻以下に縮小、今後200隻程度までさらに縮小するとされており、オバマ政権での平和主義を横目に中国は軍事力を強化し、海洋進出を推し進めています。
トランプ大統領の対応は?
トランプ大統領はこうした状況に歯止めを掛けるべく、対中国の為替問題や中国からの輸入製品に対する関税引上げなどを検討していると伝えられています。
トランプ政権は新設した国家戦略会議の議長にカリフォルニア大教授のピーター・ナヴァロ氏を任命しています。先の日米首脳会談の席や、大統領令に署名する傍らにペンス副大統領と並んで必ずナヴァロ氏の姿を確認できます。
ナヴァロ氏が昨年10月に刊行した著書「What China's Militarism Means for the World」(⇒直訳「中国の軍事戦略の世界への影響」⇒邦名「米中もし戦わば」)に大きく影響を受けたトランプ大統領は、ナヴァロ氏の就任を要請したとされています。
足元の米経済指標は改善が目立っていますが、貿易赤字の解消と製造業の復活によってトランプ大統領が掲げる強いアメリカの再生を達成するためには、経済の健全化と対中貿易の改善が急務なはずです。
そのためにもトランプ政権は(1)税制改革や(2)公正な通商条件の確保に向けた検討を進めています。
現在の米国は、先進国の中でも最も高い法人税率によって米国の製造業と雇用を海外へ流出させています。
さらに中国に人民元操作を許していれば、中国は貿易黒字の余資を海外からの兵器システム購入にあて、増々軍事力の強化を進めることができます。トランプ政権はこうした事態を転換させるために、中国強硬派を閣僚に据えることを計画しています。
さらにトランプ大統領は、米本国投資法の導入も検討しているといわれています。
米本国投資法(HIA: Homeland Investment Act)とは
米国の多国籍企業の利益・配当金・余剰資金を米国内に送金する際に、税負担を優遇(法人税を35%から5.25%へ引下げ)し、米国内での投資を促進する法律。2004年10月に成立したが、適用は2005年のみ限定だった。
トランプ大統領はこの米本国投資法(HIA)を復活させて、アップル、IBM、キャタピラー、ゼネラル・モーターズなどから中国への技術流出を防ぐと同時に米国の製造業を復活させたいと考えているようです。
中国台頭という事実に対し、トランプ政権がどのように対応するのか、来週28日におこなわれる大統領初の議会演説に続き、来月に予定される予算教書演説が注目されます。
- ※出所:SBIリクイディティ・マーケット