二転三転するトランプ発言
8/22-23にワシントンで開催された米中次官級による通商交渉に関して、特筆すべき報道は伝えられておらず、この問題の収束には未だ相当な時間を要するものと考えられています。
しかし、中国の貿易・為替政策を批判する一方、中国人民銀行の掲げる3.0%の物価目標そのものを問題視するような批判的な発言は、未だ一度も聞かれたことはありません。
トランプ政権は、貿易問題を大きく問題視する一方、貿易問題の解決にも大きく関係する為替に関しては、貿易問題ほどクローズアップしません。一貫した通貨戦略を持ち合わせていないためか、トランプ政権の為替を巡る発言は二転三転を繰り返しています。
例えば、トランプ大統領は、8/16には「米国経済の強さを背景に米国にドルが流入している」とドル高を歓迎するような趣旨の発言を行ったほか、クドローNEC(国家経済会議)委員長も「強いドルは米国に対する信頼の表れ」とドル高を容認する発言を行いました。
しかし、こうした発言から僅か4日後の8/20に、トランプ大統領は「中国や欧州は為替操作を行っている」と批判、ドル高を牽制する発言をしています。
ECBと日銀は、0%もしくはマイナス金利政策を継続し、形を変えた通貨安政策と受け止められても仕方のない政策を通じて、景気拡大の支援要因につなげているのが現状です。
各国のインフレ目標
※出所:内閣府
ユーロ圏7月の消費者物価指数(HICP)は、前年同月比+2.1%とECBの掲げる2.0%を2ヵ月連続で上回っているにもかかわらず、8/23に公表されたECB理事会議事要旨(7/26開催分)では、「ユーロ圏経済は依然として金融政策によるかなりの刺激が必要」と、0%の政策金利を来年夏まで継続する見通しを印象付ける内容となりました。
先週の米カンザスシティー連銀主催の経済シンポジウム、ジャクソンホールでの講演で、パウエルFRB議長は「強い成長が続けば漸進的利上げが適切になりそうだ」「強い経済が続くと見る十分な根拠がある」と発言し、「所得と雇用の力強い拡大が続けば、さらなる段階的な利上げが適切になる」とした一方、「インフレが2.0%を大きく越えて上昇していく兆しはない」として慎重な一面を見せるなど、強気一辺倒ではない点を強調、バランスに配慮した考えを示しました。
前述したECBの金融政策と違い、米FRBは真摯にインフレと向き合い金融政策を上手く調節していると言えます。
トランプ大統領同様に好調な米国経済が続いている自信が、こうした発言の根拠となっているのかもしれません。
ドルの緩やかな上昇続くか?
※出所:内閣府
こうした中、8/30に米個人消費支出や個人消費支出デフレーターが発表されます。
米FRBがインフレ目標の一つとして注目するデータは前年比+2.3%に前月(+2.2%)から上昇する予想となっています。
依然としてFF金利先物から見た9月FOMC の利上げ確率は90%を上回った状態を維持しており、FRBと各国との金融政策の方向性の違いは明らかで、段階的な利上げとともにドルの緩やかな上昇も続くものと思われます。