トランプ大統領は勝利宣言!
先の中間選挙の大勢が判明した時点で、トランプ大統領は「ほぼ完全勝利だ!」と勝利宣言を行いました。
議会下院で8年ぶりに民主党が過半数を奪還したほか、東部から中西部に広がるラストベルトと言われる5州の上院選では、インディアナで共和党候補が当選した一方、残り4州では民主党の現職が議席を維持しました。
さらに、下院はペンシルベニアで民主党が前回の5議席から9議席へ躍進、ミシガンでも議席を上積みするなど、トランプ政権の保護主義的貿易政策による悪影響のほか、好調な米国経済の恩恵を受けていない白人労働者層からのトランプ政権への批判票が増えたと言われています。
11/9時点の選挙結果
※出所:SBIリクイディティ・マーケット
2020年のトランプ政権継続確率は70%以上
上下両院ともに民主党が過半数奪還には至らなかったことで、減税策が見直される懸念が回避された一方、減税第二弾は財政規律を重視する民主党の下院過半数によって阻止される可能性が高いとされています。
しかし、インフラ整備など設備投資に関しては民主党も前向きと伝えられていることから、両党合意によって推進される可能性もあり、ポジティブサプライズとなれば株式市場の追い風につながるかもしれません。
財源確保を巡り民主党が強く反対をすれば、トランプ大統領は「政策が進まないのは民主党が悪い」として攻撃する可能性もあることから、民主党の出方が注目されます。元々、民主党は労働組合が支持基盤で、米国経済の勢いが後退すれば労働者層の支持を失うことにつながりかねません。
今回の選挙で、民主党内で超党派寄りが増えたとされる中、トランプ政権の政策を支持する可能性もあるだけに、経済政策を巡る「ねじれ」の影響は限られるとの楽観的な見方も聞かれています。
※出所:SBIリクイディティ・マーケット
また、共和党内でトランプ大統領に批判的な勢力が敗退、トランプ大統領が応援演説を行った11人の候補の内9人が当選するなど、共和党内でのトランプ支持が強まったとされます。
2020年の次期大統領選に向けて民主党候補を見ると、クリントン女史、前回大統領選で民主党候補指名争いに敗れたサンダース上院議員、オバマ政権で副大統領を務めたバイデン氏、女性のハリス上院議員やウォーレン上院議員、さらに黒人のブッカー上院議員などの名前が挙がっています。
しかし、この中で最も人気のあるとされるバイデン元副大統領は、11/20で76歳になり、次期大統領選では78歳、サンダース上院議員も現在77歳といずれも高齢であるだけに、リーダー不在、候補不在という現状となっています。
また、テキサス州の上院選で「オバマの再来」と呼ばれていた民主党下院議員のべト・オルークも、次期民主党大統領候補の一人とされていたものの、今回、共和党現職のクルーズ候補に敗退したことで、大統領候補の可能性が大きく後退しました。
今回の選挙では、下院で過半数を奪還したものの、民主党が大きな流れを変えるには至らず、現状では70%以上の確率でトランプ大統領が2020年の大統領選で再選されると見られています。
経済への影響は?
ねじれ議会で様々な法案の成立が難航しても、大統領令の発動で乗り越える可能性があるとの見方に加え、民主党もインフレ整備や農業関連政策で共和党、トランプ政権と協調する可能性があると見られています。
また、中国との貿易交渉について民主党も共和党やトランプ政権の考え方に大きな相違はなく、強硬姿勢が強まる可能性があるかもしれません。
しかし、今後トランプ大統領が2020年の大統領選で再選を目指すために自らの立場を固め、一段の関税を避けて中国との通商協議を妥結に導くのか、今月下旬のアルゼンチンでのG20の場で習近平国家主席との会談の行方を確認する必要がありそうです。
また、日本に対する通商交渉では、自動車関税を高めることになれば日本にとっても打撃は大きくなることが予想されますが、農業分野での交渉に重きを置くとも予想されるだけに、日本経済への影響は懸念するほどの打撃はないとの見方も聞かれています。
民主党が議会下院の過半数を奪還したことで、追加的財政出動の可能性が後退した一方、11/9に発表された米10月卸売物価コア指数が、前月比+0.5%と2016年1月の過去最高と並んだほか、前年同月比+2.6%と7月以来の水準へ上昇するなど、予想以上にインフレ率が上昇していることで、前日FOMCで示された利上げ継続の方針を裏付ける結果になりました。
11/14に発表される米10月消費者物価指数でも、前年同月比+2.2%と、9月と同様に堅調な伸びが予想されています。
それでも、米長期金利が思った以上に上昇することはなく、ドル円は伸び悩みました。
強い米国経済、緩やかな金利上昇が続くことになれば、NY株式市場は例年通り年末に向けて本格的な上昇基調へと転じ、リスク選好の動きを強めることになるかもしれません。