日本GDP 前期比(%)
- ※出所:内閣府
輸入減がGDPの上振れをサポート
5/20(月)8時50分発表の日本1?3月期GDP速報値は、前期比+0.5%と市場予想(-0.1%)を上回る結果となりました。
設備投資が市場予想(前期比-1.7%)を上回る前期比-0.3%となったほか、米中貿易問題の影響で輸出が減少したものの、それ以上に輸入が減少したことがGDPの上振れをサポートする格好となりました。
5/13発表の3月景気動向指数の低下を背景に、内閣府が景気の基調判断を6年2ヵ月ぶりとなる「悪化」へ引き下げた中、予想を上回ったGDP速報値が5/24の月例経済報告での政府の景気判断に影響を及ぼすか注目されます。
政府の景気判断は、前月「緩やかに回復している」としており、内閣府の「悪化」との判断と乖離があり、今秋の消費増税先送り議論に影響を及ぼす可能性があるだけに注目されます。
ファーウェイの規制は日本経済にも影響
一方、米中通商問題は、6/28-29にかけて大阪で行われるG20の米中首脳会談に向けて、大きな進展は期待しにくい状況です。
さらに、トランプ政権が打ち出した中国・通信大手ファーウェイに対する部品等の米国から中国向け輸出の禁止措置の世界経済への影響も懸念されます。
ファーウェイ向け部品の輸出停止措置は、米国議会が定めた「輸出管理改革法」(ECRA)によって、国防権限(NDAA)に基づき守られるべき国家機密情報の漏えい防止の目的で定められた法律です。
仮に米中通商交渉が合意に達した場合でも、ECRAによってファーウェイ向け輸出停止は継続されるほか、トランプ大統領が退任して以降も、議会の定めたECRAの改正案が議会で承認されるまで継続されることになります。
昨年、トランプ政権は中国企業ZTE向けの規制で、米国が中国通信設備、通信端末大手ZTE製品を「買わない、使わない」としていましたが、今回のECRAによるファーウェイ向け規制では「売らせない、作らせない」といったより厳しい内容となっています。
ファーウェイと日本企業との昨年の取引高を見ると、昨年1年間で66億ドル(7,000億円)に達しており、日本企業、日本経済への影響も無視できない問題となっています。
実際、3月景気動向指数の悪化はアジア向け情報端末関連財の輸出が大きく落ち込んだことが影響しており、内閣府の景気の基調判断「悪化」につながった要因となりました。
消費増税は予定通り?それとも先送り?
5/20発表の1-3月期GDPが前期比+0.5%、年率換算+2.1%と2四半期連続のプラス成長が維持されたとはいえ、消費増税を予定通り実施できるか、先々の影響にも配慮する必要があると思われます。
政府が消費増税を見送るか、予定通り実施するかを左右する可能性のある主なイベントのスケジュールは以下の通りとなっており、今後の動向が注目されます。
消費増税を再度見送ることになれば、7月の参院選を前にアベノミクスの失政を問う可能性のほか、IMFをはじめ世界からの日本の財政に対する信用失墜に陥るとの懸念が聞かれています。
一方、日本が議長国となるG20の場では、世界経済の減速懸念も議論のテーマの一つになる中で、景気減速への対応とは逆行する動きを議長国自ら実施することを疑問視する声も聞かれます。
さらに、消費増税見送りの是非を問う大義ができることで、安倍政権として7月の参院選前に衆院を解散、衆参同日選挙を行う可能性も浮上することになることから、米中通商交渉の行方のほか、新たに加わったファーウェイに対する米国の部品等の輸出禁止措置が日本経済や世界経済への減速懸念につながる可能性もあるだけに、政府の判断が待たれるところです。
ドル円は、先週末発表の米5月ミシガン大消費者景況指数が15年4ヵ月ぶりの高水準となったことが好感され、110円台を回復しました。週明けの東京市場では、今週末のトランプ大統領の来日に合わせ、ライトハイザー米通商代表部代表も来日、日米の通商閣僚協議を行うとの報道も聞かれる中、ドル円は110円32銭まで上昇しました。
今週末の日米首脳会談では、共同声明の発表はないと公表されただけに、北朝鮮問題や米中通商問題、ファーウェイに対する米国からの協力要請など、1ヵ月後に迫るG20を前にした日米の政治的協調が話し合われる可能性もありそうです。
こうした中で、消費増税先送りは日本の信用低下を招く懸念から円売り?あるいは消費増税は日銀への緩和期待を高めることにつながり円売り?と、いずれにしても円安が加速するのでしょうか。消費税議論、米国のファーウェイ制裁の影響など政治的動きが注目されます。