大統領選終盤
トランプ大統領の巻き返しが伝えられる大統領選終盤、トランプ大統領が逆転勝利を収めるためにはフロリダ(選挙人:29人)、オハイオ(18人)、ジョージア(16人)、ノースカロライナ(15人)、アイオワ(6人)の激戦州で勝利することが必要です。さらにアリゾナ(11人)とペンシルべニア(20人)で勝利すれば逆転の可能性が残されているとの指摘も聞かれます。米政治サイトの一つであるリアル・クリア・ポリティクスによれば、バイデン候補とトランプ大統領との支持率格差は10月半ば以降、急速に縮小したとはいえ、依然としてバイデン候補が優勢であると見られています。同様に政治サイトの一つであるファイブ サーティー エイトによる最新の調査でもオハイオ州での拮抗を除き、わずかながらフロリダ、ジョージア、ノースカロライナ、ペンシルべニア、アリゾナの各激戦州でバイデン候補がリードしています。トランプ大統領はアイオワ州でのリードに留まっていると言われています。
しかし、いずれの候補が勝利しても感染拡大による景気下振れへの懸念もあり、来年2021年は今年以上の巨額な財政出動が見込まれることからNY株式市場では株高が続くなどリスクオンの状況が想定されます。
米長期金利上昇が必ずしもドル高に繋がらない?
実際、米債券市場では財政拡大への思惑を背景に米長期金利が上昇しました。財政赤字拡大と共に懸念されるのが貿易赤字の拡大です。10月6日に発表された米8月の貿易統計ではモノの貿易赤字が831.13億ドルと過去最大を記録しました。サービスを合わせた貿易赤字も2008年8月の過去最大の赤字が意識される水準に達するなど「双子の赤字」への懸念が米金利の上昇でもドル円の上昇につながらない一因との見方も聞かれます。
米長期金利の上昇を抑制するためにFRBは大量の国債を購入することで米長期金利の上昇を抑制したい考えですが、こうしたFRBの思惑通りに事は進まず、赤字拡大といったドルの信認低下への警戒のほか、米金利の過度な上昇となればNY株式市場への悪影響につながる懸念も聞かれます。
大統領選後に想定される様々なリスク・・・
また、バイデン候補が勝利し、議会上下両院ともに民主党が勝利した場合、共和党から民主党への政権交代による景気減速を避けるために、想定以上の財政出動を予想する声も聞かれます。さらに、バイデン候補が公約に掲げる法人税や富裕層向け増税が当面見送られる可能性もあり、「ドル安が進行するのでは?」との観測も一部から聞かれます。さらにバイデン候補が勝利した場合、財務長官にはブレイナードFRB理事の名前が取り沙汰されており、FRBと政権との一体化が進むことでドル安への抵抗が希薄になるとの見方も聞かれます。
また、トランプ大統領が再選し、議会上院で民主党が過半数となる「ねじれ」が生じた場合、あるいは、バイデン候補が勝利し、議会上院は共和党が辛勝した場合、追加経済対策を巡る対立により成立が遅れるリスク⇒株高期待の修正を通じた円高進行にも注意が必要です。
さらに、僅差でバイデン候補が勝利した場合、トランプ大統領が郵便投票の正当性や集計に対し異議を申し立て、法廷闘争に発展、政治空白が生じるリスクにも注意が必要かもしれません。こうした様々な大統領選後のリスクが警戒され、先週のNYダウは週を通じて1,833.97ドル安(-6.5%)と、3月第3週(17.3%)以来の下落率を記録しました。さらにナスダックも636.69ポイントと大幅安となり9月25日以来、終値で11,000ポイントを割れたまま取引を終えました。
大統領選後、どちらの候補が勝利してもアメリカの分断(アメリカ至上主義を巡る肯定派・反対派の対立、人種問題、人権侵害・・など)が一段と進むのか、大統領選の結果が金融市場に及ぼす影響も含め、予想以上の波乱を生む結果になるのか注目されます。
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