前営業日トピックス
東京市場では、イタリア政権を巡る不透明感を背景に、円買いとなった海外市場の流れを引き継ぎ、序盤からドル円・クロス円は軟調な動きとなった。また、日経平均株価が大きく下落して始まったことも影響した。その後、米長期金利の上昇を受けて、ドル買い・円売りとなる場面もあったが、ドル/円は109円台手前近辺で上値の重い動きとなった。
米国市場では、ADP雇用統計や米GDPが冴えない結果となったことから、ドルはやや軟調な動きとなった。ただ、イタリアの政局混迷を巡る懸念が和らいだことや、米主要株価、米国債利回りが大きく上昇したことを受けて、リスク回避の動きが後退し、ドル円・クロス円は堅調な動きとなった。中盤以降は、米長期金利の上昇が一服したこともあり、やや上値の重い動きが続いた。
米ドル/円
※出所:FX総合分析チャート10分足
(1)イタリア政権を巡る不透明感を背景に、リスク回避の円買いが先行し、ドル円・クロス円は序盤から軟調な動きとなった。月末の五・十日で実需のフローも期待されたが、前日がスポット末日だったことから、実需の動きはやや限定的だった。しかし、米長期金利の反発が下支え要因となり、ドル円・クロス円は堅調な動きとなった。
(2)前日の欧米市場の株価が下落した流れを受けて、日経平均株価も大きく下落したことが影響し、ドル円・クロス円は上値の重い動きが続いた。その後、米長期金利が再び上げ幅を拡大したことから、堅調な動きが見られたものの、上値は限定的となった。
(3)米長期金利の上昇を受けてドル円・クロス円は堅調な動きとなった。そして、注目されていたADP雇用統計や米GDP、個人消費がいずれも市場予想を下回る結果となったことを受けて、ドルは序盤軟調な動きとなった。ただ、イタリア政局混迷を巡る懸念が和らいだことや、米主要株価、米長短金利が大きく上昇したことを受けて、リスク回避の動きが後退し、ドル円・クロス円は堅調な動きとなった。ユーロは、域内主要国の良好な経済指標結果や、イタリア政局に関する懸念が後退したことを受けて、主要通貨に対して堅調な動きとなった。ただ、中盤以降はイタリア政局の行方をにらみながら、やや神経質な動きが続いた。また、カナダ中銀が政策金利を据え置いたものの、慎重な文言を声明から一部削除し、景気拡大の継続はより高水準の金利を正当化しているとの見方を一層強固にしたことで、カナダ・ドルは主要通貨に対して大きく上昇した。
本日のトピックス
米国の金利の動きに左右される展開が続いており、昨日も東京の時間帯(米国債の時間外取引)から影響が出ていたことから、本日も米国の長短金利の動きに注目したい。
米国市場では、主要な経済指標の発表が予定されており、このところ反応にやや乏しい展開が続いているものの、雇用や個人消費、物価関連の指標の結果には比較的反応も出ていることから、本日の指標結果が注目される。また、FRB理事や複数の地区連銀総裁の発言予定もあり、こちらの内容にも注目したい。
5/31の注目材料
時間 | 国・地域 | 経済指標・イベント | 予想 | 前回 |
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22:45 | 米国 |
5月シカゴ購買部協会景気指数
シカゴ購買部協会景気指数は、シカゴ地区の製造業の景況感を指数化したものであり、50が景気の拡大・後退の判断基準となり、50を上回れば景気拡大傾向、50を下回れば景気後退傾向と判断される。
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58.0 | 57.6 |
前回は、市場予想を下回ったものの、4ヵ月ぶりに上昇に転じた。26ヵ月連続で50を上回っており、景気拡大傾向を維持している。今回は、前回から若干の上昇が予想されている。市場予想と大きく乖離しなければ、それほど大きな動きにはつながらないだろう。 | ||||
23:00 | 米国 |
4月中古住宅販売仮契約(前月比)
中古住宅販売仮契約は、全米不動産業者協会が発表する中古住宅販売の仮契約を指数化したもの。2001年を100として表す。仮契約は通常1-2ヵ月以内に本契約に移行するため、仮契約指数は中古住宅市場の先行指数とされる。
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0.5% | 0.4% |
前回は、市場予想を下回る結果となった。悪天候や在庫不足が影響していた。今回は、前回からの伸びが予想されているが、在庫不足が解消されているかが注目される。在庫不足が解消されないようなら、住宅価格などにも影響を及ぼし、今後の住宅販売の懸念要因となる可能性も考えられる。 |
気まぐれ投資コラム
週末の米雇用統計、注目の非農業部門雇用者数、賃金の伸びはどうなる?
4月米雇用統計では、非農業部門雇用者数の伸びが+16.4万人となり市場予想の+19.3万人を下回りました。3月から4月にかけて例年より気温が低かったことが伸びの鈍化につながったとの見方がある一方、労働市場が完全雇用状態であり、雇用の伸びはペースを落としているとの見方も出ています。また、時間当たりの平均賃金は、前月比で+0.1%、前年比で+2.6%となり、ともに市場予想を下回る緩慢な伸びにとどまりました。その一方で、失業率は3.9%と市場予想の4.0%を下回り、2000年12月以来17年4ヵ月ぶりの低水準となりました。そして、求職者を含む働き手の割合を示す労働参加率は62.8%(62.9%)と悪化、職探しを諦めた人や正社員を希望しながらパートタイムで就業している人などを加えた、より広義の失業率は7.8%(前月8.0%)に改善し、2001年7月以来の低水準を付けました。
非農業部門雇用者数の伸びが市場予想を下回ったことを受けて、ドル売りが先行しましたが、失業率が17年4ヵ月ぶりの低水準に改善したことが好感され、ドルは底固い動きとなりました。また、米長期金利が上昇したことや、米主要株価が堅調な動きとなったことが影響し、ドル円・クロス円を押し上げました。
今回、非農業部門雇用者数の伸びは前回から増加が予想されています。ただ、マーケットでは完全雇用に近いことから、雇用者数の変化にはやや関心が薄れています。そのため、結果を受けて以前のように大きな動きとなるケースは少なくなりました。その一方で、賃金の伸びはリーマンショック前の半分程度の伸びまでしか改善しておらず、労働参加率と共に、改善の遅れが際立っています。特に、賃金の伸びは物価や個人消費に影響することから、改善が進むのかどうかに注目が集まっています。やはり、賃金の伸びは前年比ベースで3%以上(リーマンショック近辺では3.3%〜3.5%で推移、リーマンショックによる大幅低下後の最大の伸びは2017年9月の2.8%)の伸びが期待されます。ただ、今回の市場予想でも2.6%が予想されており、過去2年間の平均が2.6%であることから、予想通りの結果でもインパクトに欠ける可能性が考えられます。
非農業部門雇用者数の伸びは、過去3年間の平均が+20万人と良好な伸びが続いています。そして、失業率は3.9%と完全雇用に近い水準との見方も多く、堅調な雇用者数の伸びが続く場合には、失業率をさらに引き下げる可能性も考えられます。その場合には、雇用者を獲得することが困難な状況に陥る可能性もあり、特に高技能の労働者不足は現在でも顕著であり、人材確保がより困難になる可能性も懸念されます。
※出所:SBILMが作成