米国の「適温相場」に黄色信号が灯り、世界的に投資家のリスク回避姿勢が強まる中、日経平均株価は2/14(水)に一時2万1千円の大台を割り込む水準まで売り込まれました。しかしその後はやや落ち着きを取り戻し、2/19(月)には2万2千円台を回復しました。ただ、続く2/20(火)は反落するなど、東京株式市場は不安定な状態が継続しています。
一方、日経平均株価の水準に影響を与えるとみられる同平均株価の予想EPS(一株利益)は1,681円の過去最高水準まで上昇しました。今後の日経平均株価の想定レンジについてはどう考えたらよいでしょうか。
<今週のココがPOINT!>
底値は確認されたとみられるものの、不安定な状態が継続 |
米国の「適温相場」に黄色信号が灯っているようです。すでに米国経済は潜在成長率(推定で2%)を上回る2.3%の経済成長率(2017)となっていますが、そこに大型減税や大規模インフラ投資の計画を追加しようとしているため、同国ではインフレ懸念や財政悪化懸念が強まってきました。
それを織り込む形で、米10年国債利回りは昨年末の2.41%から本年1月末には2.70%まで上昇。2/2(金)に発表された雇用統計(1月)で平均時給が市場予想を上回ったことが判明すると、さらに上昇が加速し、2.84%となりました。2/14(水)に発表された消費者物価指数(1月)も市場予想を上回る上昇となり、その日には10年国債利回りが2.91%まで上昇しました。
米10年国債の利回り上昇は本質的に、米経済の力強さを反映しており、必ずしも悪材料とは言い切れません。しかし、一定水準(一説には2.75%)を超えたり、上昇が急すぎる場合は米国の金融に引き締め効果をもたらし、悪材料となることがあります。今回も、米雇用統計の発表で金利上昇に拍車がかかったあたりから、市場でリスク回避姿勢が強まり、株式市場にも動揺が生じ始めました。1/26(金)に史上最高値(26,616.71ドル)まで上昇していたNYダウは、2/5(月)に過去最大の下げ(前営業日比1,175.21ドル安)、2/8(木)に過去2番目の下げ(同1,032.89ドル安)を演じ、23,860.46ドルまで下げてしまいました。
市場では、S&P500指数の予想変動率から計算されるVIX指数(恐怖指数)を売り持ちにするポジション(市場は大きく変動しない方にベットするポジション)が積み上がっており、それが買い戻しを迫られたことで、株式市場の波乱が助長される形になりました。そうした中、日経平均株価は年初来高値水準の24,124円15銭(1/23)から2/14(水)には一時20,950円15銭まで下落し、その間の下落率は13.2%に達しました。
米長期金利の急激な上昇は、世界の投資家の「ドル資産離れ」をもたらした可能性がありそうです。そのため、米長期金利上昇にもかかわらず、外為市場で円高・ドル安が進み、日本株の上値を重くする要因となりました。
2/9(金)〜2/16(金)にNYダウが6連騰したこともあり、東京株式市場もやや落ち着きを取り戻し、2/19(月)には2万2千円台を回復しました。ただ、続く2/20(火)は反落するなど、不安定な状態が継続しています。
図1:日経平均株価(日足)〜ようやく落ち着きを取り戻してきた
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2018/02/20現在
図2:NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2018/02/16現在(2/19は休場)
図3:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2018/02/20取引時間中
当面のタイムスケジュール〜パウエル新体制下のFRBが始動 |
米長期金利の上昇が世界的な株価波乱につながったこともあり、FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策にいっそうの注目が集まりそうです。折しもイエレン氏から議長職を引き継いだパウエル新FRB議長の議会証言が2/28(水)に予定されており、市場で強い関心を集めそうです。
なお、米雇用統計(2月)は「12日」を含む週、すなわち2/11(日)〜2/17(土)の週から3週後に相当する3/4(日)〜3/10(土)の週の金曜日に公表されます。すなわち、今度の米雇用統計の発表は3/9(金)の予定です。
表1:当面の重要なタイムスケジュール〜パウエル新体制下のFRBが始動
月日 |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
---|---|---|---|
2/20(火) | ドイツ | 2月ZEW景況感調査 | 今後6ヵ月の景況感を市場関係者等にアンケート調査 |
2/21(水) | 日本 | 1月全国百貨店売上高 | |
2/22(木) | 米国 | 1月中古住宅販売件数(米国時間20日) | 米住宅市場は9割が中古で、新築は1割 |
米国 | FOMC 議事要旨(1/31発表分) | ||
米国 | 2月IFO企業景況感指数 | 約7千社のドイツ企業に景況感をアンケート | |
2/23(金) | 日本 | 1月全国消費者物価指数 | 12月(除食品・エネルギー・前年同月比)は+0.3% |
日本 | 2月決算銘柄が権利付最終日 | 2月決算銘柄は株主優待の人気銘柄が多い | |
2/26(月) | スペイン | 携帯電話見本市(バルセロナ) | |
2/27(火) | 米国 | 1月新築住宅販売件数 | コンセンサスは前月比+3.4% |
米国 | 1月耐久財受注 | 米民間設備投資の先行指標 | |
米国 | 12月FHFA住宅価格指数 | ||
米国 | 12月S&PコアロジックCS住宅価格指数 | ||
2/28(水) | 日本 | 1月鉱工業生産 | |
中国 | 2月製造業PMI | ||
米国 | パウエルFRB議長の議会証言 | 米金融政策の方向感を占う? | |
3/1(木) | 日本 | 10〜12月期法人企業統計 | |
3/2(金) | 米国 | 2月ISM製造業景況指数 | 米国の企業マインドを占い、株価にも影響 |
米国 | 2月新車販売台数 | ||
日本 | 1月失業率/有効求人倍率 | 労働市場のひっ迫状態は継続するのか? |
表2:日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2018年 | |
---|---|
日銀金融政策決定会合 | 3/9(金)、4/27(金)、6/15(金)、7/31(火)、9/19(水)、10/31(水)、12/20(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 3/21(水)、5/2(水)、6/13(水)、8/1(水)、9/26(水)、11/8(木)、12/19(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 3/8(木)、4/26(木)、6/14(木)、7/26(木)、9/13(木)、10/25(木)、12/13(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀Webサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
【ココがPOINT!】日経平均株価の割安感が強く、押し目は買い場になる可能性 |
株式市場が波乱となる中、東京株式市場では2017年4〜12月期の決算発表が進捗し、企業業績の好調さが再確認されました。日経平均株価の予想EPS(一株利益)は昨年末に1,511円でしたが、2/19(月)現在では1,681円まで上昇しています。
ただ、株式市場では楽観的な空気はむしろ少ないようです。予想EPSの上振れに米税制改革による減税効果が含まれ、来期以降は剥げ落ちるとみられる上、足元で円高が進んでいるためです。このため、2019年3月期の企業業績は伸び悩む可能性が出てきました。
図4は現在の予想EPSが今後4月下旬頃(本決算発表が開始される時期)まで続くと仮定し、それを予想PER13.5倍〜同16.5倍で乗じた場合の想定株価レンジを示してみました。それによると
1,681円(予想EPS)×13.5倍(予想PER)=22,693円(想定日経平均株価)
1,681円×16.5倍=27,736円
と計算され、日経平均株価の想定レンジは22,693円〜27,736円となります。現在の株価水準は割安感が強いとみられ、押し目は買い場になると考えられます。
ただ、上記したように今後増益率が鈍る可能性を払しょくできない間は予想PERは15倍程度が上限になる可能性があります。
その場合は
1,681円×15.0倍=25,215円
より、日経平均株価で25,000円程度が上値メドになりそうです。
ご参考までに、図表5では1年後の想定日経平均株価についても試算してみました。もし、予想EPSが5%程度増えていれば、予想PER15倍で25,000円台、予想PER16.5倍で29,000円台が視野に入ってくる計算です。
図4:日経平均株価(左軸)と予想PER13.5倍、予想PER15倍、予想PER16.5倍相当ライン
- 当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
図5:1年後に想定される予想EPSと日経平均株価
- ※1年後に、日経平均の予想EPS(一株利益)が、-5%、±0%、+5%増え、予想PERが12.0倍、13.5倍、15倍、16.5倍、18倍になったと仮定し、日経平均株価がいくらと計算されるかを示したもの。現実には増益率や予想PERがこれ以外の数字になる場合もあります。
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