日経平均株価は「米中貿易戦争」への懸念が後退し、TPP(環太平洋経済連携協定)への米国復帰が意識され始める中で、徐々に下値を切り上げる展開となりました。ただ、取引時間中ベースでは、習主席が市場開放策を表明した4/10(火)に21,933円99銭の高値を付けた後、そこを抜けない状態が続いています。東京株式市場は「底固さ」と「上値の重さ」が同居する状態になっていると見受けられます。
本年の日本株は「2014年と同パターン」かもしれません。3月調査の日銀短観に、企業が業績見通しに対して慎重になっていることが例年以上に表れており、それが決算発表の時期まで、株価の頭を抑える可能性がありそうです。しかし、年後半は上昇に転じても不思議ではありません。したがって、ここからの決算発表シーズンは「仕込み場」ではないでしょうか。
「底固さ」と「上値の重さ」が同居する東京株式市場 |
米国のトランプ大統領が3/1(木)に、米国へ輸入される鉄鋼・アルミ製品に関税を課すことを決めて以降、世界は同大統領が繰り出してくる「米国第一主義」的で「保護主義」的な政策に「戦々恐々」となっているようです。3/23(金)には中国からの輸入に最大で600億ドルの関税を課す大統領令に署名。それに対して、中国が報復関税で反撃してくると今度は、同国に対し1千億ドル規模の追加制裁を加えると切り返しました。
トランプ大統領が中国に対する1千億ドル規模の報復関税を表明したのは日本時間の4/6(金)朝で、この日の東京株式市場に一旦織り込まれる格好となりました。同じ日のNYダウは572ドル安と、厳しい下落で反応しましたが、休み明けとなった4/9(月)の日経平均株価は逆に110円74銭高と落ち着いた反応になりました。4/10(火)には中国の習近平主席が市場開放策を打ち出し、それを好感する形で4/11(水)の日経平均株価も116円06銭高と続伸しました。その後は、シリアに対して米国が攻撃する可能性が意識されて下げ、その可能性が後退すると戻すという不安定な展開になりました。
こうした中、4/12(木)にトランプ大統領が唐突に、TPP(環太平洋経済連携協定)復帰の条件を検討し始めたことが報じられ、日本株の下支え材料になりました。日本時間4/14(土)には、米国が英仏とともにシリアを爆撃したことが報じられ、休み明けの東京市場への影響が懸念される状況となりました。しかし、米英仏による攻撃は当初の目的を達成したとされ、市場では長期的・継続的な紛争につながらないと認識され、4/16(月)の日経平均株価は56円79銭高と小幅続伸になりました。
このように、先週(4/9〜4/13)の日経平均株価は「米中貿易戦争」への懸念が後退し、TPPへの米国復帰が意識され始める中で、徐々に下値を切り上げる展開となりました。日経平均株価は4/6(金)の終値21,567円52銭に対し、4/13(金)終値は21,778円74銭と1%弱上昇しました。これで週次ベースでは3週間連続の上昇となりました。ただ、取引時間中ベースでは、習主席が市場開放策を表明した4/10(火)に21,933円99銭の高値を付けた後、そこを抜けない状態が続いています。東京株式市場は「底固さ」と「上値の重さ」が同居する状態になっていると見受けられます。
図1:日経平均株価(日足)〜下値は切り上がりつつあるものの、22,000円近辺が強い抵抗ラインに
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2018/04/17取引時間中
図2:NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2018/04/16現在
図3:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2018/04/17取引時間中
当面のタイムスケジュール〜日米で決算発表がスタート |
米国では4/13(金)より、2018年1〜3月期の決算発表が本格化してきました。同四半期のS&P500指数採用企業の一株利益(EPS)は、FactSet社の集計によると、前年同期比17.1%増となる予想です。(1)米国経済、世界経済の好調による売上増、(2)昨年来のドル安による売上・利益の押し上げ効果、(3)法人税減税による効果、等を背景に、近年にない高い増益率が見込まれています。
なお、我が国では4/24(火)に中外薬や日本電産の決算発表が予定されており、その辺から3月決算企業の決算発表が本格化してきます。発表社数ベースでのヤマ場は800数十社の発表が予定されている5/11(金)ですが、決算発表シーズンの前半は日本経済全般への影響が大きい主力企業の発表が多く、目を離せない日々が続きます。
こうした中、我が国の安倍首相は4/17(火)から訪米し、トランプ大統領との会談に臨む日程となっています。北朝鮮問題や貿易問題等、懸案は少なくありません。ただ、発言が変りやすいトランプ大統領を相手に交渉は「ぶっつけ本番」的な状態に近いと言われます。訪問中のニュースには十分注意したい所です。
表1:当面の重要なタイムスケジュール〜日米で決算発表が本格化
月日 |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
---|---|---|---|
4/17(火) | 中国 | 1〜3月期GDP | コンセンサスは前年同月比6.8%増 |
中国 | 3月鉱工業生産 | コンセンサスは前年同月比6.4%増 | |
中国 | 3月小売売上高 | コンセンサスは前年同月比9.7%増 | |
中国 | 3月都市部固定資産投資(年初来) | コンセンサスは前年同月比7.7%増 | |
日本 | 安倍首相訪米 | 日米首脳会談(〜18日) | |
米国 | 3月住宅着工件数 | コンセンサスは前月比1.4%増 | |
米国 | ☆決算発表 | IBM、J&J、GS他 | |
4/18(水) | 米国 | ベージュブック | FOMCの判断材料 |
米国 | ☆決算発表 | モルガン・スタンレー | |
4/19(木) | 米国 | 4月フィラデルフィア連銀製造業景況指数 | 企業マインドに変化は? |
米国 | ☆決算発表 | アメックス | |
4/20(金) | 米国 | ☆決算発表 | P&G、GE |
- | G20財務大臣・中銀総裁会議 | ||
4/23(月) | 米国 | 3月中古住宅販売件数 | |
米国 | ☆決算発表 | アルファベット | |
4/24(火) | 日本 | ★決算発表 | 中外薬、日本電産他 |
米国 | 2月FHFA住宅価格指数 | ||
米国 | 2月S&PコアロジックCS住宅価格指数 | 前回(20都市・前年同月比)は6.4%の上昇 | |
米国 | 3月新築住宅販売件数 | コンセンサスは前月比1.9%増 | |
米国 | 4月CB消費者信頼感指数 | ||
米国 | ☆決算発表 | キャタピラー、TI他 | |
4/25(水) | 日本 | ★決算発表 | キヤノン、東京エレク、LINEなど44社 |
米国 | ☆決算発表 | クアルコム、ボーイング、フェイスブック、フォード他 | |
4/26(木) | 日本 | ★決算発表 | OLC、新日鉄住金、コマツ、任天堂など118社 |
韓国 | サムスン電子が決算発表 | ||
欧州 | ECB定例理事会・ドラギ総裁会見 | ||
米国 | ☆決算発表 | GM、インテル、マイクロソフト他 | |
4/27(金) | 日本 | 日銀金融政策決定会合の結果発表 | |
日本 | ★決算発表 | 信越化学、ソニー、村田製作所など300社 | |
韓国 | 南北首脳会談 | ||
米国 | 1〜3月期GDP | コンセンサス(前期比・年率)は2.0%増 | |
米国 | ☆決算発表 | シェブロン、エクソンモービル |
表2:日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2018年 | |
---|---|
日銀金融政策決定会合 | 4/27(金)、6/15(金)、7/31(火)、9/19(水)、10/31(水)、12/20(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 5/2(水)、6/13(水)、8/1(水)、9/26(水)、11/8(木)、12/19(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 4/26(木)、6/14(木)、7/26(木)、9/13(木)、10/25(木)、12/13(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀Webサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
【ココがPOINT!】今年の日本株は2014年と同パターン? |
前項でご説明したように、4/24(火)以降、3月決算企業の決算発表が本格化してきます。投資家として、上場企業の業績動向に注意すべき時期になりますが、具体的にはどう注意すべきなのでしょうか。
表3には、この時期の日経平均株価の動きを予想EPS(一株利益)や予想PERの動きとともに示しています。表をみれば、ご理解頂けるように、この時期は日経平均株価が割高なのか、割安なのか、その考え方の基本となる予想EPS自体が大きく動くことが多くなっています。
日経平均株価に採用されている225銘柄のうち、3月決算企業は全体の84.4%に相当する190銘柄もあります。指数を構成する銘柄のほとんどで業績データが変ることになります。例えば、今回の決算発表では、決算発表が実施される時まで、予想EPSの対象年度は2018年3月期ですが、決算発表以降は2019年3月期になります。もし、2019年3月期の予想EPSについて、増加を見込む企業が多ければ、日経平均株価の予想EPSが上昇することになります。
ただ残念なことに、2018年3月調査の日銀短観では「大企業・全産業」の2018年度の予想純利益は前期比1.5%の減益予想であり、それを参考にした場合、日経平均株価の予想EPSも増えにくいと予想されます。予想EPSが増加し、その分だけ株価も上昇するというシナリオを描くことは難しいかもしれません。
反面、この時期の日銀短観に示される企業の業績予想は「慎重過ぎる」という傾向もありそうです。例えば、2014年3月の日銀短観では、大企業・全産業の予想純利益は2.5%の減益予想でした。しかし、日経平均採用銘柄の予想EPSは2014年3月末に付けた1,019円から2015年3月末には1,120円まで増えています。今回も2018年1〜3月に進んだ円高の影響を受けて、企業が先行きに対して慎重になり過ぎている可能性があり、期中の為替相場が落ち着けば、企業業績も拡大基調が続くと考えられます。
ちなみに、2014年の日経平均株価は決算発表が終わる5月下旬頃まで上値の重い展開が続いていましたが、その後は上昇に転じています。2018年は2014年と同様のパターンになるのかもしれません。
表3:決算発表シーズン(4/20〜5/20)の日経平均株価と予想EPS・予想PER
- 日経平均株価データをもとにSBI証券が作成。「日銀短観予想純利益」はその年の3月の日銀短観における当該年度の大企業・全産業の予想純利益を示しています。なお、4/20が休日の場合はその直前、5/20が休日の場合はその直後の営業日のデータを用いています。2018年は参考数値として4/16(月)のデータを掲載しています。
先物・オプションの関連コンテンツ
【サキモノのココがPOINT!】
日経平均は22,000円にトライ!外国人は遂に+4,426億円買い越しに