日経平均株価は6月第1週(6/3〜6/7)の前週末比1.4%高に続き、第2週(6/10〜14)も1.1%高と続伸しました。米国で金融緩和観測を後押しする材料が続いたことや、メキシコから米国への輸入品に対する関税賦課が見送られ、米国株の上昇基調が続いたことが強い追い風となりました。
ただ、東証1部の売買代金は6/6(木)〜6/13(木)の6営業日連続で2兆円を割り込むなど、ボリューム面では盛り上がりに欠ける状態が続いています。米国の金融緩和観測は外為市場で円高・ドル安要因となり、その分日本株への逆風が強まったためです。米中通商問題がくすぶり続け、世界的に景気・企業業績の減速感が強まっていることも、世界的には「景気敏感株」とされる日本株にとっては不利な材料になっています。そうした不透明感を反映するかのように、6/18(火)の日経平均株価はやや大きめの下げとなっています。
今後はどうなるのでしょうか。世界的に景気・企業業績が減速・悪化し、再び金融緩和局面が訪れる可能性も大きいように思われます。だとすると、「不景気の株高」という意外なシナリオが台頭してくる可能性もあります。
日経平均株価(図1)は6月第1週(6/3〜6/7)の前週末比1.4%高に続き、第2週(6/10〜14)も1.1%高と続伸しました。雇用統計の下振れや物価指標の落ち着きなど、米国で金融緩和観測を後押しする材料が続いたことや、メキシコから米国への輸入関税が見送られ、米国株の上昇基調が続いたことが強い追い風となりました。
NYダウ(図2)は6/3(月)〜6/10(月)に6営業日連続高となり、昨年5/3〜5/14の8営業日連続高以来の続伸記録となり、その間に1,247.64ドル(5.0%)の上昇となりました。その理由はほぼ、金融緩和期待ということで説明できるとみられます。ただ、5月末に1ドル108円台前半だったドル・円相場は結果的に、2週間後もあまり変わらない水準にあります。米国株高が円安にあまりつながらなかったことで、その分だけ日本株の上昇は制約される格好になりました。
6/10(月)〜6/18(火)の日経平均株価の日次の動きは以下のようになっています。
- 6/10(月)249円71銭高・・・米雇用統計(5月)の下振れで米利下げ期待が強まりました。メキシコ関税先送りも好感されました。
- 6/11(火)69円86銭高・・・NY(6/10)が1年1ヵ月ぶりの6連騰となったことや、アジア株高が好感されました。
- 6/12(水)74円56銭安・・・機械受注が予想外に上振れましたが、外需が減っており、買いは続きませんでした。
- 6/13(木)97円72銭安・・・半導体株安を受けた米国株安に加え、「逃亡犯条例」に反対する香港のデモが警戒されました。
- 6/14(金)84円89銭高・・・ホルムズ湾近くのタンカー攻撃事件が警戒されましたが、半導体株の下落一巡後は切り返しました。
- 6/17(月)7円11銭高・・・半導体の下げが響きましたが、香港株の反発で切り返しました。売買代金は1.6兆円台に低迷です。
- 6/18(火)151円29銭安・・・一目均衡表の「要注意日」。様子見気分が強い。日経平均高寄与度銘柄の下げが目立つ。
日経平均株価はテクニカル的に、6月第2週の初めから25日移動平均線を上回り、そこを下値抵抗ラインとして維持し続けたことで、買い安心感の増幅につながりました。一目均衡表的には週後半、基準線の上で推移し始めており、徐々に形が改善される展開となりました。そうした中、6/18(火)は先行スパンが交錯する「要注意日」のタイミングを迎えることになりました。
東証1部の売買代金は6/6(木)〜6/13(木)の6営業日連続で2兆円を割り込むなど、ボリューム面では盛り上がりに欠ける状態が続いています。6/14(金)はようやく2兆円をぎりぎり上回りましたが、「メジャーSQ」であったことを考えると低水準で、案の定6/17(月)の売買代金は1.65兆円にとどまりました。米国の金融緩和観測は外為市場で円高・ドル安要因となり、その分日本株への逆風が強まるためです。米中通商問題がくすぶり続け、世界的に景気・企業業績の減速感が強まっていることも、世界的には「景気敏感株」とされる日本株にとっては不利な材料になっています。そうした不透明感を反映したのか、テクニカル的な「要注意日」と重なったこともあり、6/18(火)の日経平均株価はやや大きめの下げとなっています。
図1 日経平均株価は戻り歩調も、薄商い
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2019/6/18取引時間中
図2:NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2019/6/17現在
図3:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2019/6/18取引時間中
当面、もっとも注目されるのはFOMC(米連邦公開市場委員会)と考えられます。米国時間6/18(火)〜6/19(水)に開催される予定で、結果発表は日本時間の6/20(木)午前3時頃になる予定です。短期金融市場からみた今回の会合で利下げされる確率は18.2%にとどまっています。今回は利下げそのものよりも、パウエルFRB議長の発言内容を通じ、FRBが本当に「ハト派」なのか否かを確かめる機会になりそうです。
来週からは小売企業を中心に、2019年3月〜5月期の決算発表が始まります。4月から実施された「働き方改革関連法」や、4月下旬以降の「10連休」の影響など、非常に見極めが難しい期間になっていますが、消費税引き上げ(本年10月)を控えた個人消費動向を占う重要な機会になりそうです。発表社数ベースでは123社の発表が予定されている7/12(金)がピークとなる見込みです。
表1 今後約2週間の重要スケジュール
月日(曜日) |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
---|---|---|---|
6/18(火) |
ドイツ |
6月ZEW(欧州経済研究センター)景況感調査 |
350人のアナリスト、市場関係者に半年先の景況感をアンケート |
米国 |
5月住宅着工件数 |
市場コンセンサスは前月比0.4%増 |
|
6/19(水) |
日本 |
5月貿易統計 |
|
日本 |
5月訪日外客数 |
4月は292.7万人(前年同月比0.9%増) |
|
米国 |
FOMC(米連邦公開市場委員会)結果発表(日本時間20日未明) |
6月の利下げ確率は約18%、7月は約82% |
|
6/20(木) |
日本 |
日銀金融政策決定会合結果発表(黒田総裁会見) |
|
- |
EU(欧州連合)首脳会議 |
||
米国 |
6月フィラデルフィア連銀製造業景況指数 |
||
6/21(金) |
日本 |
5月消費者物価指数(生鮮食品を除く) |
市場コンセンサス(前年同月比)は0.7%上昇 |
米国 |
5月中古住宅販売件数 |
市場コンセンサスは前月比1.4%増 |
|
6/24(月) |
日本 |
★決算発表〜しまむら |
|
6/25(火) |
日本 |
日銀会合(4/25発表分)議事要旨 |
|
日本 |
★決算発表〜高島屋 |
||
日本 |
6月末権利確定銘柄の権利付最終日 |
||
- |
OPEC総会 |
||
米国 |
4月FHFA住宅価格指数 |
||
米国 |
4月S&PコアロジックCS住宅価格指数 |
||
米国 |
5月新築住宅販売件数 |
市場コンセンサス(前月比)は1.8%増 |
|
米国 |
6月コンファレンスボード消費者信頼感指数 |
||
米国 |
☆決算発表〜レナー、フェデックス |
||
6/26(水) |
米国 |
5月耐久財受注(輸送用機器を除く) |
市場コンセンサスは前月比0.2%増 |
6/27(木) |
米国 |
☆決算発表〜ナイキ |
|
6/28(金) |
日本 |
日銀会合(6/20発表分)「おもな意見」 |
|
日本 |
5月失業率、有効求人倍率 |
前回は失業率2.4%、有効求人倍率1.63倍 |
|
日本 |
5月鉱工業生産 |
前回(前月比)は0.6%増 |
|
日本 |
★決算発表〜Jフロント |
||
日本 |
G20首脳会議(大阪サミット) |
〜6/29(土) |
表2 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2019年 | |
---|---|
日銀金融政策決定会合 | 6/20(木)、7/30(火)、9/19(木)、10/31(木)、12/19(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 6/19(水)、7/31(水)、9/18(水)、10/30(水)、12/11(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 7/25(木)、9/12(木)、10/24(木)、12/12(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
前項でご説明したように、当面、もっとも注目されるのはFOMC(米連邦公開市場委員会)であると考えられます。6/17(月)現在、短期金融市場からみた今回の会合で利下げされる確率は18.2%にとどまっていますので、今回は利下げそのものよりも、パウエルFRB議長の発言内容を通じ、FRBが本当に「ハト派」なのか否かを確かめる機会になりそうです。
ただ、図4をみる限り、本年の年末までという時間軸で考えれば、FRBが利下げする確率はほぼ100%に接近しています。より細かく見れば、0.25%ずつ2〜3回の政策金利引き下げを実施するというのが市場コンセンサスになっていると考えられます。米国が金融緩和スタンスを強化するならば、日欧も次第に、再緩和の余地を探る展開になると考えられます。事実、6/6(木)に結果発表のECB(欧州中銀)理事会では、少なくとも2020年前半まで政策金利を据え置くことを決定し、従来の緩和縮小シナリオを後退させています。
昨年10/4(木)の「ペンス演説」は米国と中国が本格的な対立の時代に入ったことを宣言したとみられ、チャーチルが1946年3月に行った「鉄のカーテン演説」と並び称されるような、歴史的にも重要な演説になったとみられます。米国の要求が中国の基本的な政策の修正を迫っている以上、両国の根本的な合意は難しく、期待できるのは部分的妥協ではないかと思われます。
そうした中で、グローバル企業のサプライチェーンは修正を迫られ、企業の設備投資計画の多くも見直されると考えられます。また、米国による中国の通信大手ファーウェイ(華為技術)に対する締め付けの結果、同社のスマホ販売は減少する見込みであり、今後その影響が部品・半導体関連企業に表面化してくる可能性も大きそうです。
米国でも、日本でも、これまでの好景気を背景に労働市場は基本的に好調でしたが、今後は減速・悪化も想定されます。特に我が国においては、働き方改革法実施の影響が今後本格化し、本年10月以降は消費税引き上げの影響も出てくると思われます。景気はすでに悪化に向かっている可能性が大きいと考えられます。その中で米国は、実際に悪い数字が目立ってくる前の「予防的緩和」を実施してくると、市場参加者の多くが期待し始めています。
図5は米国株のより広い動きを示すS&P500指数について、その一目均衡表(日足)をみたものです。日々線がクモの上限とほぼ同位置にあり、「3役好転」がほぼ成立している形です。米国市場をみる限り、市場参加者は「不景気の株高」を期待していると考えることができそうです。ただ、景気・企業業績の悪化が市場の想定以上になる可能性も大きく、「不景気の株高」は波乱を伴った動きになる可能性が大きいのではないでしょうか。
図4 短期金融市場は年末までの米政策金利の先行きをどう読んでいるのか?(単位・%)
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成
図5 ほぼ「3役好転」のS&P500・一目均衡表(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2019/6/17現在