日経平均株価の上昇基調が続いています。10/16(水)に年初来高値を更新した後、10/29(火)には、取引時間中ベースでは昨年10/11(木)以来、約1年ぶりに2万3千円台を回復しました。米中通商問題の落ち着き、世界的な金融緩和状態の継続、予想外に堅調な企業業績等が背景と考えられます。
今後はどうなるのでしょうか。世界的に景気・企業業績は減速方向が予想され、相場の上昇は短命に終わると予想する向きも多そうですが、本当にそうなるでしょうか。
日経平均株価の上昇基調が続いています。10/16(水)に年初来高値を更新した後、10/29(火)には、取引時間中ベースでは昨年10/11(木)以来、約1年ぶりに2万3千円台を回復しました。米中通商問題の落ち着き、世界的な金融緩和状態の継続、予想外に堅調な企業業績等が背景と考えられます。
特に10月に入り、日米ともに2019年7〜9月期の決算発表が始まりましたが、企業業績が予想外に堅調で、そのことが相場の押し上げ要因になっています。米国では決算発表を実施した8割超の企業で、1株利益が事前予想を上回っているようです。東京市場でも、時価総額1千億円以上の企業(金融を除く・市場コンセンサスのある企業)では、3分の2の企業の営業利益が、市場予想を上回っています。
特筆されるのは、決算発表後の株価の反応です。10/10(木)に2020年2月期の予想営業利益を46%も引き下げる下方修正を行った安川電(6506)ですが、株価は決算発表日の3,835円から、10/29(火)現在は1割超も高い水準まで上昇しています。その後も、業績予想下方修正後に株価が上昇する企業が相次いでいます。
なお、表1には、10/14(月)〜10/29(火)における日経平均株価の日次の動きを示しています。「225の『ココがPOINT!』」は前週お休みをいただきましたので、今回は2週間分の動きを掲載しています。10営業日で9勝1敗であり、この表だけをみても、いかに堅調な相場であったのか、ご理解いただけると思います。
表1 日経平均株価の値動きとその背景(2019/10/14〜10/29)
日経平均株価 | 日米株式市場等の動き | ||
---|---|---|---|
終値 | 前日比 | ||
10/14(月) | 「体育の日」で休場 | 連休中(10/11・14)のNYダウが計290ドル上昇。安川電が上昇に転じました。 | |
10/15(火) | 22,207.21 | +408.34 | 連休中のNY株高を好感しました。 |
10/16(水) | 22,472.92 | +265.71 | 好業績を背景にNYダウが4連騰。半導体指数が最高値を更新しました。 |
10/17(木) | 22,451.86 | -21.06 | 中国高官が米農産物の輸入拡大に疑問。米小売売上高減少も警戒されました。 |
10/18(金) | 22,492.68 | +40.82 | 米機械大手のハネウェルが買われ、資本財関連銘柄に波及。 |
10/21(月) | 22,548.90 | +56.22 | ボーイング急落でNY株(10/18)急落も、個別の事情と理解されました。アップル株上昇。 |
10/22(火) | 「即位礼正殿の儀」で休場 | 米中協議やBrexitを巡る協議に不透明感がただよいました。 | |
10/23(水) | 22,625.38 | +76.48 | NYダウ(10/21・22)は2日合計で17.90ドル上昇。決算発表に期待が集まりました。 |
10/24(木) | 22,750.60 | +125.22 | 業績底入れ期待で中国関連株に買い戻しが目立ちました。日電産が上昇に転じました。 |
10/25(金) | 22,799.81 | +49.21 | 半導体大手インテルの決算発表を受け、東京エレクやアドバンテストが買われました。 |
10/28(月) | 22,867.27 | +67.46 | 米中通商協議が複数分野で合意に接近し、NY株が買われた流れを引き継ぎました。 |
10/29(火) | 22,974.13 | +106.86 | 前日の米国市場でS&P500、マイクロソフト、アップル等が高値を更新しました。 |
- ※日経平均株価データ、各種資料をもとにSBI証券が作成。
図1 日経平均株価(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2019/10/29取引時間中。
図2 NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2019/10/28現在。
図3 ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2019/10/29取引時間中。
日米ともに、上場企業の決算発表が佳境を迎えつつあります。米国では時価総額上位企業の発表は10月末までにおおむね一巡するはこびになっています。東京市場は391社の発表が予定されている10/31(木)が前半のヤマ場で、564社の発表が予定されている11/8(金)が最大のヤマ場とみられます。
決算発表の間隙を縫うように、米国では金融政策を決定する会合や主要経済指標の発表等、重要なタイムスケジュールが続くことになります。前者では、日本時間10/31(木)未明にFOMC(米連邦公開市場委員会)の結果発表が予定され、後者では10/30(水)のGDP速報値発表、11/1(金)の雇用統計結果発表等が予定されています。
10/29(火)現在、金利先物市場の予想では、今回のFOMCで0.25%の利下げが実施される確率は91%となっています。市場はすでに0.25%の利下げを織り込んでいると考えられます。なお、仮に市場の予想通りになった場合、12月のFOMCについては、025%の利下げ確率は24%、利下げなしの確率が69%となっています。すなわち、仮に今回のFOMCで利下げが実施された場合、そこが当面で最後の利下げになるとの見方も多く、そのことがドル相場を下支えしていると考えられます。
表2 当面の重要スケジュール
月日(曜日) | 国・地域 | 予定内容 | ポイント |
10/28(月) | 中国 | 中国共産党第19期中央委員会第4回全体会議 | |
10/29(火) | 日本 | ★決算発表(84社) | NEC、富士通、野村、ANA他 |
米国 | 9月中古住宅販売仮契約 | ||
米国 | 8月S&Pコアロジック住宅価格指数 | ||
米国 | ☆決算発表 | コーニング、GM、マスターカード、ファイザー | |
10/30(水) | 日本 | ★決算発表(189社) | 日立、アンリツ、ソニー、アドバンテスト、三井物他 |
米国 | 10月ADP雇用統計 | 雇用者数増減(市場コンセンサス)は110千人 | |
米国 | 7月〜9月期GDP | 4〜6月期(前期比・年率)は2.0%、7〜9月期市場コンセンサスは1.6%。 | |
米国 | ☆決算発表 | アップル、FB、スターバックス | |
米国 | FOMC結果発表(日本時間10/31未明) | 政策金利0.25%引き下げの可能性大。 | |
10/31(木) | 中国 | 10月製造業PMI | |
日本 | 日銀会合結果発表/黒田総裁会見/展望レポート | ||
日本 | ★決算発表(391社) | 武田薬、パナソニック、キーエンス、デンソー、任天堂、村田製他 | |
11/1(金) | 日本 | 9月失業率・有効求人倍率 | |
日本 | ★決算発表(134社) | キッコーマン、三菱ケミHD、Z HD、日本製鉄、住友商事他 | |
欧州 | ECB総裁にラガルド氏が就任 | ||
米国 | 10月雇用統計 | 非農業部門雇用者数増減(市場コンセンサス)は85千人 | |
米国 | 10月ISM非製造業指数 | ||
11/3(日) | 日本 | 文化の日 | |
米国 | 冬時間入り | ||
11/4(月) | 日本 | ◎振替休日 | |
11/5(火) | 日本 | ★決算発表(163社) | ソフトバンク他 |
米国 | 10月ISM非製造業景況指数 | ||
11/6(水) | 日本 | 日銀金融政策決定会合(9/19発表)議事要旨 | |
日本 | ★決算発表(177社) | ソフトバンクG他 | |
米国 | ☆決算発表 | クアルコム、トリップアドバイザー | |
11/7(木) | 日本 | ★決算発表(251社) | キリンHD、楽天、資生堂、トヨタ他 |
米国 | ☆決算発表 | ウォルト・ディズニー | |
11/8(金) | 日本 | オプションSQ | |
日本 | ★決算発表(565社) | 大成建、大和ハウス、BS、ホンダ、ユニチャーム他 | |
中国 | 10月貿易収支 | ||
米国 | 11月ミシガン大学消費者マインド指数 |
表3 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2019年 | 2020年 | |
日銀金融政策決定会合 | 10/31(木)、12/19(木) | 1/21(火)、3/19(木)、4/28(火)、6/16(火) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 10/30(水)、12/11(水) | 1/29(水)、3/18(水)、4/29(水)、6/10(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 10/24(木)、12/12(木) | 1/23(木)、3/12(木)、4/3(金)、6/4(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
今後の日経平均株価はどうなるのでしょうか。テクニカル的には、RSIが89.77%まで上昇するなど、過熱圏入りを示唆する材料も出ています。しかし、RSIが約90%まで上昇することは、逆に相場の中長期的な先高観を示している可能性があります。
通常決算発表が佳境の局面において、業績予想を上方修正する銘柄が多数派にもかかわらず、決算発表後に多くの銘柄が利益確定売りで下げてしまう相場があります。経験則上、このような株式相場はその後、下り坂になるケースが多いと考えられます。多くの銘柄が好材料にも反応しにくくなっている訳で、いわゆる「好材料出尽くし」であり、売りタイミングであることが多いと考えられます。
現在の相場はこの逆だと考えれば理解が容易になりそうです。消費税が上がろうと、業績予想が下方修正されようと下がりにくくなっている相場であり、本格的上昇相場のスタートである可能性が大きいかもしれません。日米欧の中央銀行が緩和的金融政策を続けるものの、債券相場はピークで買いにくく、消去法的に資金が株式市場に入りやすくなっています。裁定売り残が買い残を上回っていることもあり、株式の需給が良いとみられることが、強い相場の背景と考えられます。
季節的にも株価は上昇のチャンスです。図4は過去20年間における日経平均株価の月次平均騰落率をみたものですが、7〜9月の低迷の後、11月・12月は上昇する傾向にあります。過去20年間でみると例年、11月および12月の「勝率」は70%で、平均騰落率は+5.1%となっています。日経平均株価は23,000円を超え、当面は昨年10/2(火)に付けた24,270円を目指す展開が期待されます。
- ※日経平均株価データをもとにSBI証券が作成。図4は、日経平均株価の過去20年間の各月の騰落率を単純平均したものです。図5は各年の12月末株価を10月末株価で割った騰落率を単純平均したものです。