日経平均株価の上昇基調が続いています。10月第5週(10/28〜11/1)終値は前週末比0.2%上昇し、週足としては4週連続の上昇となりました。また、10月終値は前月末比5.4%の上昇となり、月足としては2ヵ月連続の上昇となりました。米中通商摩擦への懸念が後退していることや、世界主要中央銀行による緩和的金融政策が続いていること、日米で本格化した決算発表で、上場企業の業績が予想外に堅調に推移していること等が理由と考えられます。
日経平均株価は11/5(火)、終値が23,251円99銭となり、昨年10/10(水)以来、約1年と半月ぶりに23,000円の大台を回復しました。そうした中、東京株式市場は11月相場を迎えています。11月の日経平均株価はこのまま上昇するのでしょうか、それとも反転・下落に転じる可能性が大きいのでしょうか。
日経平均株価の上昇基調が続いています。10月第5週終値は前週末比50円96銭(0.2%)上昇し、週足としては4週連続の上昇となりました。また、10月終値は前月末比1,171円20銭(5.4%)の上昇となり、月足としては2ヵ月連続の上昇となりました。米中通商摩擦への懸念が後退していることや、世界主要中央銀行による緩和的金融政策が続いていること、日米で本格化した決算発表で、上場企業の業績が予想外に堅調に推移していること等が理由と考えられます。
米中間の争いは長期的な覇権争いの様相を呈しており、包括的な合意が成立することはもともと困難であると考えられます。ただ、米大統領選挙まで約1年となり、トランプ大統領としても経済の悪化は避け、逆に何らかの成果は欲しい局面になってきたと考えられます。このため、市場では、部分的な合意については成立しやすいという期待が強いようです。
また、米金融政策についてはここにきて、利下げがいったん打ち止めになるとの見方も強くなっています。FRB(米連邦準備制度理事会)は10/30(水)まで開催のFOMC(米連邦公開市場委員会)で市場予想通り0.25%の利下げを実施しましたが、金利先物市場からみた12/11(水)FOMCでの利下げ確率は10.6%にとどまっています。
利下げの打ち止め観測は一歩誤れば、株式市場の波乱要因になるところですが、FRBが利下げへの柔軟姿勢を残したことで、株式市場の波乱にはつながりませんでした。米利下げ観測の後退は米長期金利の下げ止まりや円安・ドル高につながる要因になると考えられ、日本株にとっても悪い話ではないと考えられます。
そうした中、日米ともに上場企業の2019年7〜9月期決算発表が本格化し、企業業績の減速感が確認される展開になっています。ただ、アナリストの見方がすでに相当慎重になっていただけに、市場予想を下回る決算発表は少ない印象で、決算発表後に株価が上昇するケースが増えています。売り方からみれば、業績悪という悪材料が出ても逆に株価が上昇するという非常に不利な相場展開と言え、売り方の買い戻しを巻き込みながら上昇が持続しやすい展開になっています。
表1 日経平均株価の値動きとその背景(2019/10/28〜11/5)
日経平均株価 | 日米株式市場等の動き | ||
---|---|---|---|
終値 | 前日比 | ||
10/28(月) | 22,867.27 | +67.46 | 米中通商協議が複数分野で合意に接近し、NY株が買われた流れを引き継ぎました。 |
10/29(火) | 22,974.13 | +106.86 | 前日の米国市場でS&P500、マイクロソフト、アップル等が高値を更新しました。 |
10/30(水) | 22,843.12 | -131.01 | APEC首脳会議での米中合意が疑問視されました。 |
10/31(木) | 22,927.04 | +89.92 | FOMCで利下げ余地が残されたことが好感されました。好決算のソニーが買われました。 |
11/1(金) | 22,850.77 | -76.27 | 景気不透明感で米国株が売られたことや、雇用統計接近で持ち高調整になりました。 |
11/4(月) | 「文化の日」の振替休日 | ||
11/5(火) | 23,251.99 | +401.22 | 雇用統計上振れ等で連休中の米国株が大幅高したことを好感しました。 |
- ※日経平均株価データ、各種資料をもとにSBI証券が作成。
図1 日経平均株価(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2019/11/5取引時間中。
図2 NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2019/11/4現在。
図3 ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2019/11/5取引時間中。
米国市場は、重要日程が集中する時期を通過しつつあります。上場企業の決算発表は依然続いていますが、時価総額上位の企業についてはおおむね一巡しつつあります。経済指標については、11/1(金)に雇用統計(10月)が発表されましたが、非農業部門雇用者数が前月比12.8万人増と市場予想(8.5万人増)を上回ったことに加え、過去2ヵ月分も9.5万人上方修正されるなど、総じて強い内容になったと考えられます。これについても「無事通過」との評価が与えられそうです。
日本市場では、企業の決算発表が引き続き、市場の最重要関心事になると考えらえれます。特に11月第1週(11/5〜11/8)については、11/8(金)に556社の企業が発表を予定するピーク日になりそうです。なお、11/6(水)にはソフトバンクG(9984)が、11/7(木)にはトヨタ(7203)が決算発表日(後者は13時30分の発表予定)の予定であり、「質」の面でも、決算発表はピークを迎えつつあると考えられます。
なお、今回の決算発表では、発表自体が「悪材料出尽くし」という「好材料」を多くの銘柄に提供してきたと考えることができます。すなわち、決算発表の一巡によって「好材料」が提供されにくくなる分、株価の騰勢が鈍くなる可能性は残りそうです。
表2 当面の重要スケジュール
月日(曜日) | 国・地域 | 予定内容 | ポイント |
11/4(月) | 日本 | ◎振替休日 | |
11/5(火) | 日本 | ★決算発表(164社) | ソフトバンク他 |
米国 | 10月ISM非製造業景況指数 | 新規受注、雇用等の指標にも注意 | |
11/6(水) | 日本 | 日銀金融政策決定会合(9/19発表)議事要旨 | |
日本 | ★決算発表(180社) | ソフトバンクG他 | |
米国 | ☆決算発表 | クアルコム、トリップアドバイザー | |
11/7(木) | 日本 | ★決算発表(250社) | キリンHD、楽天、資生堂、トヨタ他 |
10月東京都心オフィス空室率 | |||
米国 | ☆決算発表 | ウォルト・ディズニー | |
11/8(金) | 日本 | オプションSQ | |
日本 | ★決算発表(556社) | 大成建、大和ハウス、BS、ホンダ、ユニチャーム他 | |
中国 | 10月貿易収支 | 輸出、輸入等にも注意 | |
米国 | 11月ミシガン大学消費者マインド指数 | ||
11/9(土) | 中国 | 10月消費者物価/生産者物価 | 物価は経済の体温計と言う側面も |
11/10(日) | 日本 | 祝賀御列の儀(パレード) | |
11/11(月) | 日本 | 10月景気ウォッチャー調査 | 街角景気 |
日本 | 日銀金融政策決定会合(31日発表分)おもな意見 | ||
日本 | ★決算発表(201社) | ||
中国 | 「独身の日」セール | ||
10/12(火) | 日本 | ★決算発表(227社) | ヤクルト、大塚HD、日産自他 |
ドイツ | 11月ZEW景況感調査 | 約350人のアナリスト、エコノミスト等に景況感をアンケート | |
10/13(水) | 日本 | ★決算発表(268社) | 三菱UFJ、三井住友他 |
米国 | 10月消費者物価指数 | ||
10/14(木) | 日本 | 7〜9月期GDP | |
日本 | ★決算発表(310社) | 日本郵政他 | |
中国 | 10月都市部固定資産投資 | ||
中国 | 10月工業生産 | ||
中国 | 10月小売売上高 | ||
米国 | ★決算発表 | アプライド・マテリアルズ、エヌビディア、ウォルマート | |
10/15(金) | 米国 | 10月小売売上高 | |
米国 | 10月鉱工業生産・設備稼働率 |
表3 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2019年 | 2020年 | |
日銀金融政策決定会合 | 12/19(木) | 1/21(火)、3/19(木)、4/28(火)、6/16(火)、7/22(水)、9/17(木)、10/29(木)、12/18(金) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 12/11(水) | 1/29(水)、3/18(水)、4/29(水)、6/10(水)、7/29(水)、9/16(水)、11/5(木)、12/16(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 12/12(木) | 1/23(木)、3/12(木)、4/3(金)、6/4(木)、7/16(木)、9/10(木)、10/29(木)、12/10(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
日経平均株価は11/5(火)、終値が23,251円99銭となり、昨年10/10(水)以来、約1年と半月ぶりに終値ベースで23,000円の大台を回復しました。そうした中、東京株式市場は11月相場を迎えています。11月の日経平均株価はこのまま上昇するのでしょうか、それとも反転・下落に転じる可能性が大きいのでしょうか。
図4は日経平均株価の週足株価を示したものです。本年4/24(水)に付けた22,362円92銭の節目を大きく突破し、昨年10月につけた24,448円も視野に入り始めています。ちなみに、現在の日経平均株価の予想EPS1,764円54銭に対し、昨年10月高値の日経平均株価は予想PER13.86倍の水準です。昨年10月時点では同予想PERは13.95倍で、現状よりやや高い水準で買われていました。予想PERの観点では、日経平均株価が昨年10月の高値を回復してもあまり不思議ではないことになります。
これまでの項でご説明したように、日米欧の中央銀行は緩和的金融政策を取っています。トランプ政権からの圧力もあり、むしろ経済実態から迫られた水準以上に金利が低くなっている可能性があります。そのことが、株式市場の需給関係を強くしており、悪材料に打たれ強い相場を演出している可能性もありそうです。世界的に、景気・業績悪にもかかわらず株価が上昇しやすい「金融相場」になっており、それが株価上昇のエンジンとなっている可能性もありそうです。
とはいえ、長く景気が拡大してきた米国経済にピークアウト感は否めません。逆に、日本経済については、消費税増税といった大きな懸念材料の株価に対する織り込みが進捗しつつあるように思われます。外為相場も安定しつつあります。景気・企業業績を取り巻く諸要因について、他の国や地域の多くで悪化が見込まれるのに対し、日本市場は「底入れ」に近付いているように思われます。相場ステージ的にも魅力は大きそうです。
前項でご説明したように、今回の決算発表では、発表自体が「悪材料出尽くし」という「好材料」を多くの銘柄に提供してきたと考えることができます。すなわち、決算発表の一巡によって「好材料」が提供されにくくなる分、株価の騰勢が鈍くなる可能性は残りそうです。このため、短期的には上昇一服の可能性もありましたが、11月全般を通じては上昇をキープする可能性が大きいと「225の『ココがPOINT!』」では考えています。
図4 日経平均株価(週足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。チャート上の年月日は、週の開始日を示していますので、日足ベースの記録と異なることがあり、注意が必要です。例えば、2018/4/24に日経平均株価は一時22,362円92銭まで上昇していますが、週の開始日が2018/4/22であったために、表示が同日となっています。