東京株式市場では、日経平均株価が6月第3週(6/15〜6/19)に前週末比0.8%上昇、同第4週(6/22〜6/26)に0.1%上昇と続伸した後、7月第1週(6/29〜7/3)は3週ぶりに反落(前週末比0.9%下落)するなど、強弱感が対立する展開になっています。ただ、中国株上昇の追い風が強く、7/6(月)は大幅高(ただし翌日は反落)となりました。
2/21(金)の翌日から新型コロナウイルスの流行を警戒した急落場面となりましたが、7/7(火)は2/21(金)から92営業日目です。日経平均株価は急落後の底値から、その96%超を回復した水準にまで回復しています。不思議なことに、今回の株価急落は、1987年のブラックマンデー後の急落といくつかの共通点をもっています。ブラックマンデーの前日から92営業日目に下げの96%超を回復しているというのも共通点のひとつです。
東京株式市場では、日経平均株価が6月第3週(6/15〜6/19)に前週末比0.8%上昇、同第4週(6/22〜6/26)に0.1%上昇と続伸した後、7月第1週(6/29〜7/3)は3週ぶりに反落(前週末比0.9%下落)するなど、強弱感が対立する展開になっています。
マイナス要因としてはやはり、世界的に、新型コロナウイルスの感染拡大が加速する傾向にあることがあげられます。同ウイルスの世界の1日当たり平均新規感染者数は5月の9.3万人から、6月は14.3万人と5割増しのペースになりました。7月は最初の5日間で平均16万人のペースになっています。新型コロナウイルスの世界の感染者数の4分の1を占める米国では、6月の1日当たり平均新規感染者数が2.8万人程度でしたが、7月に入ると5万人を上回る日が出てきています。ブラジルやインドなどの新興国でも感染拡大が続いています。
我が国でも、5/25(月)には25人まで減っていた新型コロナウイルスの新規感染者数が、6/28(日)に再び100人超の水準まで加速し、7/4(土)には268人と5/2(土)以来の高水準となりました。国内外ともに、同ウイルスの感染拡大について、第2波の到来が懸念される状況になっていると考えられます。
しかし、ここまでのところ、新型コロナウイルスの感染拡大が理由となり、株価が大きく下がるような事態にはなっていないように思われます。歴史的な低金利を背景に、行き場のないマネーが株式市場に流入し、需給関係が引き締まっており、株価下落は限定的になっています。各国政府の財政政策もあり、市場参加者は景気の底入れ・回復への期待を持ち続けることができています。米国を中心に、発表される景気指標が経済の回復を示唆していることもプラス要因となっています。
中国では、6/30(火)に「香港国家安全維持法」が成立し、中国政府の権限が強化され、民主派は主要メンバーが脱退するなど、大きく勢いをそがれる格好となりました。ただ、同国の株価はその日以降連騰となっており、7/6(月)の上海総合指数は4年11ヵ月ぶりの上昇幅を記録しました。同じ日の日経平均株価はそれを好感する形で3営業日続伸となり、上昇幅は407円96銭と、6/16(火)以来の大幅高になりました。この日は都知事選で小池氏が圧勝した直後に当たる他、米国でバフェット氏の投資復活等、好材料が重なったことも大幅高につながりました。ただ、翌日の7/7(火)はその反動が出て、4営業日ぶりに反落となっています。
表1 日経平均株価の値動きとその背景(2020/6/29〜2020/7/7)
日経平均株価 | 日米株式市場等の動き | ||
終値 | 前日比 | ||
6/29(月) | 21,995.04 | -517.04 | 新型コロナの新規感染者数が米国で過去最多。テキサス州で再び経済活動を制限。 |
6/30(火) | 22,288.14 | +293.10 | 米国株高を受けて上昇。米住宅指標の好調とボーイングの試験飛行開始が好材料。 |
7/1(水) | 22,121.73 | -166.41 | 東京の新型コロナ感染者増加を懸念。日銀短観の悪化も気がかり。 |
7/2(木) | 22,145.96 | +24.23 | 中国の経済指標が好調。同国の景気刺激策にも期待。 |
7/3(金) | 22,306.48 | +160.52 | 米雇用統計の上振れを好感。新型コロナ感染拡大と米国市場休場控え売買代金縮小。 |
7/6(月) | 22,714.44 | +407.96 | 都知事選が波乱なく終了。上海指数が大幅高。米株先物高も追い風。 |
7/7(火) | 22,614.69 | -99.75 | この日も上海株は堅調。ただし日経平均株価は利益確定売りに押される。 |
- ※日経平均株価データ、各種資料をもとにSBI証券が作成。
図1 日経平均株価(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2020/7/7現在
図2 NYダウ(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2020/7/6現在。
図3 ドル・円相場(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2020/7/6取引時間中。
表2 当面の重要スケジュール
月日(曜日) | 国・地域 | 予定内容 | ポイント |
7/7(火) | 日本 | 5月家計調査 | |
7/8(水) | 日本 | 6月景気ウォッチャー調査 | |
日本 | ★決算発表 | ファミリーマート、イオン | |
7/9(木) | 日本 | 5月機械受注 | 前回は前月比12%減 |
日本 | 6月工作機械受注 | 前回は前年同月比52.8%減 | |
日本 | ★決算発表 | ローソン、7&i、ファーストリテイ | |
中国 | 6月生産者物価/消費者物価 | ||
7/10(金) | 日本 | ★決算発表 | 安川電、良品計画 |
日本 | オプションSQ | ||
7/12(日) | 日本 | 鹿児島県知事選挙投開票 | |
7/14(火) | 中国 | 6月貿易収支 | |
ドイツ | 7月ZEW景況感指数 | 350人の市場関係者に景況感を調査 | |
米国 | 6月消費者物価 | ||
米国 | ☆決算発表/4〜6月期決算の発表がスタート | シティG、JPモルガン、ウェルズ・ファーゴ他 | |
7/15(水) | 日本 | 日銀金融政策決定会合の結果発表/黒田日銀総裁会見 | |
日本 | 6月訪日外客数 | 5月は前年同月比99.9%減 | |
米国 | 7月NY連銀製造業景気指数 | ||
米国 | 6月鉱工業生産・設備稼働率 | ||
米国 | ベージュブック | ||
米国 | ☆決算発表 | ゴールドマン・サックス他 | |
7/16(木) | 中国 | 4〜6月期GDP | コンセンサスは前年同月比2.3%増 |
中国 | 6月鉱工業生産 | コンセンサスは前年同月比4.8%増 | |
中国 | 6月小売売上高 | コンセンサスは前年同月比0.2%増 | |
中国 | 6月都市部固定資産投資 | ||
欧州 | ECB理事会/ラガルド総裁会見 | ||
米国 | 6月小売売上高 | 前回(自動車・ガソリンを除く)は前月比12.4%増 | |
米国 | 7月フィラデルフィア連銀製造業景況指数 | ||
米国 | ☆決算発表 | バンカメ、J&J | |
7/17(金) | 米国 | 6月住宅着工件数 | |
米国 | 7月ミシガン大学消費者マインド指数 |
表3 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2020年 | |
日銀金融政策決定会合 | 7/15(水)、9/17(木)、10/29(木)、12/18(金) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 7/29(水)、9/16(水)、11/5(木)、12/16(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 7/16(木)、9/10(木)、10/29(木)、12/10(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表3の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
図4は期間の異なる2つの時期の日経平均株価の動きを1枚のグラフにしたものです。青線で描かれている折れ線グラフ「A」は、1987/10/19(月)の日経平均終値を1とするグラフで、赤線で描かれている折れ線グラフ「B」は2020/2/21(金)終値を1.0とし、その後の推移をグラフ化したものです。
「A」はブラックマンデーとその後の推移を示したグラフということになります。1987/10/19(月)の米国株式市場ではNYダウが前日比507.99ドル(22.6%)安のまさに「暴落」となり、翌10/20(火)の日経平均株価は前日比3,836円48銭(14.9%)安と、こちらも文字通りの「暴落」となりました。一部の材料株を除き、ほぼ全銘柄がストップ安という大波乱でした。このような急落相場は、常識的に考えれば、回復に年単位の時間を要しても不思議ではないと考えられます。
しかし、特筆されるのは、当時の日経平均株価の強さです。「暴落」から半年後の1988/3には、「暴落前」の水準を取り戻してしまいました。さらに、1989/12末には38,915円87銭の史上最高値を付けることになります。
今回の新型コロナウイルスの感染拡大を背景とする波乱相場「B」も、短い期間に株価が大きく下げたという点では、ブラックマンデー以降の推移「A」と似ています。今回の1ヵ月で3割近く下げるという「波乱」は歴史的な急落と言ってよいと思われます。そして、両者の共通点は、その回復を目指し金融緩和を推し進めたという点です。
平成バブルは1985/9のプラザ合意を契機にスタートし、上記のブラックマンデーで一時中断することになりましたが、その折に金融緩和を復活させたことで火に油を注ぐ形になり、1989/12末のバブル天井へとつながっていきました。今回も、新型コロナウイルス流行による下落から立ち上がるべく、世界各国で金融緩和が徹底され、株式相場は立ち直ろうとしています。
ちなみに、7/7(火)は今回のグラフの起点となる2/21(金)から92営業日目ですが、日経平均株価はその96%超を回復した水準になっています。一方、グラフ「A」において、1987/10/19(月)の92営業日目に、株価は96%超を回復した水準を回復しています。両方は不思議な「一致」となっており、「歴史は繰り返す」の言葉が想起されます。
仮に、今回の株式相場が「平成バブル」のパターンを繰り返しているのであれば、今後の日経平均株価は力強い上昇が期待できるかもしれません。しかし、その後に訪れることになる「失われた20年」は繰り返したくないものです。
図4 「ブラックマンデー」(1987年)と「新型コロナ暴落」(2020年)
- ※日経平均株価の1987/10/19終値を1.0とし、1988/6/30までの推移を指数化し、グラフ化した図の上に、2020/2/21の日経平均株価終値を1.0としたグラフを重ねてみました。両方とも、次の日に急落局面が始まっています。