ココがPOINT!
足元の日経平均株価は、9月14日に取引時間中としては8月30日、終値ベースでは5月21日以来となる23,000円台を回復する展開となっている。米中を巡る貿易摩擦問題は完全には払拭されていないなかではあるが、事前予想を上回るトルコ中央銀行による利上げ(政策金利の6.25ポイント引き上げ)で、新興国を含む世界景気に対する過度な警戒感が薄らぎ円高懸念は後退。これをきっかけに先物主導で大きく上昇する展開となり、インデックスに絡んだ商いからファーストリテイリング<9983>やソフトバンクG<9984>といった指数インパクトの大きい銘柄が揃って今年の高値を更新した。
また、4-6月期実質国内総生産(GDP)2次速報の上方改定のほか、1ドル112円台まで下落した為替相場における円安・ドル高進行なども支援材料となった。米国市場においても、8月分雇用統計で、非農業部門雇用者数が予想を上振れ、平均時給の伸びも約9年ぶりに最大となったほか、7月求人件数が過去最高となるなど堅調な景気が確認されている。
一方で、国内外で複数のアナリストが半導体メモリ市場の業績悪化予想が明らかになり、これまで相場の牽引役となっていた半導体関連をはじめとした日米ハイテク株は、日経平均やNYダウとは対照的に軟調推移となっている。他方、東京市場では、NT倍率が再び13倍を超えて推移している。今後はTOPIX主導によるNT倍率修正が進むとともに、需給懸念が台頭する中小型株への見直し等への波及が期待されてこよう。TOPIX型銘柄の上昇や、ハイテク株の動向を注視しながらにはなるが、トレンドとしては、日経平均が1月につけた年初来高値24,129.34円を視野に入れた動きが期待されよう。
図1 直近1年の日経平均チャート(日足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
図2 直近1年のTOPIXチャート(日足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
図3 直近1年のNT倍率チャート(日足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
日本銀行9月18−19日開催の金融政策決定会合で、金融緩和を継続するための現行の枠組みを維持することを賛成多数で決定した。強力な金融緩和を粘り強く続けていく従来の方針も堅持された。政策金利のフォワードガイダンス導入は、2%の物価目標達成に寄与することが期待されており、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を当面維持していくとみられる。
政策金利のフォワードガイダンスについては、「当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持する」としたフォワードガイダンス(政策金利の指針)や長期国債買い入れのめどである年間約80兆円も維持した。指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J-REIT)の買い入れ方針は変わらず。「市場の状況によって買い入れ額は上下に変動しうる」との方針に変更はなかった。
なお、政策金利の指針について、原田審議委員は「物価目標との関係がより明確な指針の導入が適当」との理由で反対票と投じた。片岡審議委員は「予想物価上昇率の現状評価が下方修正されれば追加緩和を行うとのコミットメント(公約)が適当と指摘し、反対した。
金融政策決定会合の結果は想定通り、市場に目立った反応なし
今回の金融政策決定会合の結果は想定通りだったことから、東京市場で株式、為替相場に目立った反応はなかった。ドル・円は午前中の取引で112円23銭から112円39銭の範囲内で推移。金融政策決定会合の結果判明後に一時112円43銭まで買われたが、まもなく伸び悩んだ。
日経平均は4営業日続伸。もっとも、急ピッチのリバウンドに対する警戒感もあってか、大引けにかけては上げ幅を縮めており、大幅続伸ながらも結果的には9/19の安値で取引を終えている。
今回のFOMC会合の予想:0.25ポイントの利上げ予想
米連邦準備理事会(FRB)は9月25−26日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、金融政策を決定する。政策金利(FFレートの誘導目標水準)は現行の1.75%−2.00%から2.00%−2.25%に引き上げられることが確実視されている。
今回のFOMC会合で金利引き上げを予想する主な理由として市場関係者の間では、1)最新の米地区連銀経済報告で「労働市場は非常にひっ迫している」と指摘されている、2)米経済拡大のペースは減速していない、3)新興国の通貨安は一服しつつある、などが挙げられている。
株式、為替市場への影響:米経済の持続的成長への期待で株、為替はしっかりの展開か
前回(8月1日)公表されたFOMCの声明では、「金利引き上げが、経済活動の持続的な拡大、力強い労働市場の状況、中期的に委員会の目標である2%に近いインフレ率と整合する」との判断が示された。最新の米地区連銀経済報告で「ほとんどの地区で貿易に関する懸念、不透明感を指摘」、「貿易懸念、一部企業の投資を抑制」と指摘されているものの、8月の平均時給は前年比+2.9%に上昇しており、労働市場のひっ迫による賃金・物価の上昇が意識されつつある。
今回公表されるFOMC金利・経済予測における今年と来年の物価見通しは、重要な手掛かり材料になりそうだ。6月時点で2018年末のコアPCEは前年比+2.0%、政策金利の中央値は2.40%と予測されていたが、今回の予測でインフレ見通しが据え置かれても、市場は労働市場のひっ迫を考慮して12月の追加利上げをさらに織り込んでいくと予想される。米中貿易摩擦長期化への懸念は消えていないものの、米国経済の持続的な成長への期待は後退せず、米国株は底堅い動きを続ける見込み。また、金利引き上げ後も米国金利の先高観は後退しないとみられており、外為市場ではドルが主要通貨に対してやや強い動きを見せることが予想される。
図4 直近1年のNYダウチャート(日足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
図5 直近1年のドル円チャート(日足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
年末までの重要スケジュール
国内
- 10月30-31日:日本銀行金融政策決定会合
- 12月19-20日:日本銀行金融政策決定会合
世界
- 9月24日:米国による対中追加関税第3弾(2,000億ドル相当分)発動
- 10月12-14日:IMF・世界銀行年次総会(インドネシア・バリ)
- 10月中:IMF世界経済見通し発表
- 10月25日:欧州中央銀行(ECB)理事会
- 11月6日:米国中間選挙
- 11月7-8日:米FOMC会合
- 11月18日:APEC首脳会議開催(ポートモレスビー)
- 11月30日〜12月1日:G20首脳会議(ブエノスアイレス)
- 12月13日:欧州中央銀行(ECB)理事会
- 12月18-19日:米FOMC会合
年末までの日経平均株価予想
年末までの日経平均株価は、1月26日に付けた年初来高値24,129.34円を上抜け、25,000円台を目指した推移を予想する。PER(株価収益率)が23倍台のNYダウに対して、足元の日経平均のPERは13倍台である。国内上場企業の今期想定為替レートは概ね1ドル=107円程度となっており、足元で円安方向にて推移する現行為替水準、堅調なスタートとなった4-6月期決算を踏まえても、日本企業の業績面での見通しは保守的なことがわかる。
これらを踏まえると、四半期ごとに日本企業の業績上振れに対する期待感は高まりやすく、NYダウを除くその他の先進国と比べても、バリュエーション面での割安感が意識されよう。ECBや米連邦準備制度理事会(FRB)といった、世界の先進国諸国が金融引き締めの方向性を示すなか、引き続き日銀が金融緩和姿勢を継続する日本株に対し、相対的にみても海外投資家の関心は向かいやすいとみられる。日経平均における現状のEPS(一株あたり利益)は1,700円台程度となっており、年末に向けてPER15倍程度までの水準訂正を織り込みに行く動きを想定すると、25,000円台乗せも十分に視野に入ってこよう。
提供:フィスコ社