直近の株式市場は、戻りの鈍い相場となっている。10月26日につけた安値20,971.93円がいったん支持線として意識され、11月から12月にかけてはこちらの水準を前に下値で拾う動きが出やすくなっている。とはいえ、年初からの価格帯別売買高で商いの集中している22,500円水準を明確に上抜ける力強さは確認されていない。
足元で、「iPhone」の需要後退に対する懸念がくすぶるアップル株の軟調推移などを背景に、これまで日米市場をけん引していたハイテク株の軟調推移が相場の重しとなっており、英国によるEU離脱問題や新興国経済の成長減速など外部環境における不安要素が多い。これに加えて、米国債のイールドカーブ(長短金利差)逆転や、中国スマートフォンメーカー「華為技術(ファーウェイ)」副会長がカナダ当局に逮捕されたことをきっかけに、米国経済の先行きや米中貿易摩擦に対する警戒感が改めて意識される格好となった。
12日の東京市場では、中国が米国製自動車に対する関税を現行の40%から15%への引き下げを検討していることが報じられるなか、ファーウェイ幹部の保釈が認められたことも伝わったことから、いったんは買い戻しの流れがみられている。しかし、急ピッチの下落をみせた電子部品関連株は急落前の水準を回復するには至っておらず、上値は重さが意識されている。
図1 直近1年の日経平均チャート(日足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
日銀金融政策決定会合について
今回の日銀金融政策決定会合:金融政策は現状維持の公算
日本銀行は今月19−20日開催の金融政策決定会合で金融政策の現状維持を決定する見込み。政策金利のフォワードガイダンスについては、すでに2018年度以降における物価見通しを引き下げていることから、「当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持する」との方針を再確認するとみられる。
長期国債買い入れについては、保有残高の増加額年間約 80 兆円をめどとしつつ、弾力的な買入れを実施する方針を維持する可能性が高い。足元の長期金利は弱含みとなっているが、金利低下は日本だけの事象ではないこと、日銀は経済・物価情勢等に応じて金利は上下にある程度変動しうるとの判断を示していることから、国債買い入れ額を減額する可能性は低いとみられる。
指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J−REIT)の買い入れ方針も変更なしと予想される。
米FOMC会合について
今回のFOMC会合:0.25ポイントの追加利上げが決定される公算
米連邦準備理事会(FRB)は12月18−19日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、政策金利(FFレートの誘導目標水準)は現行の2.00%−2.25%から2.25%−2.50%に引き上げられる見込み。前回11月7−8日開催のFOMC会合では、足元の好調な経済を背景に引き締め姿勢を維持しながらも、中立的な金利水準に接近しているとの見方から、利上げ停止時期や伝達方法などについて議論された。
今回公表されるFOMCの声明には「さらなる緩やかなフェデラルファンド(FF)金利の目標誘導レンジの引き上げ」との文言が引き続き含まれる見込みだが、FOMCの金利・経済予測における来年以降の政策金利と物価の見通しは下方修正される可能性がある。市場関係者の多くは、2019年における利上げは2回以内、2020年は利上げなしとの見方に傾いているが、FOMCの政策金利・インフレ予測が市場の想定を上回った場合、米長期金利は上昇し、為替はドル高・円安に振れる可能性がある。
欧州中央銀行(ECB)金融政策について
今回のECB理事会:金融政策は現状維持の予想
欧州中央銀行(ECB)は今週13日開催の理事会で、主要政策金利の据え置きを全会一致で決定する見込み。直近におけるユーロ圏の製造業・サービス業の業況は若干悪化しており、インフレ加速を示すデータは少ないことから、「現行の金利水準を2019年夏にかけて据え置く」との見解が改めて表明されるとみられる。
英国の欧州連合(EU)離脱問題、ドイツ経済の停滞、イタリアの財政不安などを考慮してECB理事会では、金融緩和策の急速な縮小を避けることで一致するとみられる。債券の償還資金については、償還後3カ月以内に再投資を行う現行の規則を維持し、再投資は当面継続される見込み。直近におけるユーロ圏の製造業・サービス業の業況は若干悪化しており、インフレ加速を示すデータは少ないことから、「現行の金利水準を2019年夏にかけて据え置く」との見解が改めて表明されるとみられる。
2019年1−6月における金融政策・政策金利の決定スケジュール
日本銀行:金融政策決定会合
- 1月22−23日、3月14−15日、4月24−25日、6月19−20日
米連邦準備制度理事会(FRB):FOMC会合
- 1月29−30日、3月19−20日、4月30−5月1日、6月18−19日
欧州中央銀行(ECB):ECB理事会
- 1月24日、3月7日、4月10日、6月6日
図2 直近1年のドル円チャート(日足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
図3 直近1年のユーロ円チャート(日足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
中間決算を受けた日経平均予想EPSの推移とPER13倍、14倍、15倍時の日経平均株価と今後の予想
2019年3月期の中間決算が11月14日に出揃った。全体としては明確な強弱感はなかったが、上場企業の今期の通期業績は、純利益ベースで前期比1%増となる見通しであることが一部メディアにて報じられており、市場のコンセンサスである3期連続最高益との見方は引き続き継続。他方、主要企業における下期想定為替の平均レートは1ドル=108円台後半とされており、現行の為替水準との比較では円高方向である。
中国経済の減速懸念が根強いなか、足元の原油安も相まって下期以降の企業業績に対する期待感は期初からは後退しているものの、日経平均の予想EPS(1株あたり利益)は少しずつ切り上がる格好になっている。11日時点におけるPER(株価収益率)13倍での日経平均は約23,200円となることから、現行の株価はこの水準から大きく下方に乖離する。なお、PER14倍では25,000円、PER15倍では26,700円である。日本株が、不透明な海外情勢の影響を過度に受けている印象は否めないが、これらが落ち着きを見せてきた段階では、日本の企業業績に対する株価の割安感に着目した買いを入れる海外投資家が増える可能性はある。
提供:フィスコ社