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REIT教室 課外授業第1限目
REIT教室 基本授業では、REITの基本的な魅力や仕組みについて学んできました。次のステップとして、実際投資する際にはどういう分析をすればいいのかなどを、課外授業で詳しく見ていきましょう!J-REIT研究の第一人者、アイビー総研代表取締役関大介氏にご協力いただきました!
第1限目 個別銘柄分析のために重要なチェックポイント(前半)
連載第1回となる今回は、J-REITの個別銘柄に投資する上で特に重要となるチェックポイントについて、解説します。
リートの資産効率をチェックするには・・・「NOI利回り」
企業の資産効率を判断する指標として、一般的にはROAが利用されています。一方でJ-REITの場合は、不動産投資だけを行いますのでROAよりも不動産の利回りを示す指標であるNOI利回りを投資判断の上で使用することが多くなっています。 J-REITは、保有不動産(ポートフォリオ)の利回りが高い程、投資家への分配金原資が多くなります。例えを使うとすれば、NOI利回りはその銘柄の基礎体力と言えます。そのため、個別銘柄の分析を行う上で、ポートフフォリオの利回りを確認することが重要になるのです。 |
NOIとは(Net Operating Income)の略称です。 NOIとは、経費の中で会計上発生するものの、資金支出を伴わない減価償却費を差し引く前の利益となるので算出式は「NOI=賃貸収益+減価償却費」となります。また、このNOIを不動産の簿価で除したものがNOI利回りとなり、算出式は「NOI利回り=NOI÷不動産簿価」とすることがJ-REITでは一般的(※1)です。 |
※1:分母を不動産簿価の代わりに不動産取得額とすることもあります。
(図表1)NOI利回りの算出例
スターツプロシード投資法人の第14期(2012年10月期)数値
賃貸事業収入 |
1,502 |
・・・ |
(1) |
賃貸事業費用 |
648 |
・・・ |
(2) |
(うち減価償却費) |
299 |
・・・ |
(3) |
賃貸事業利益 |
854 |
・・・ |
(4)=(1)−(2) |
NOI |
1,153 |
・・・ |
(5)=(4)+(3) |
期末ポートフォリオ薄価 |
37,079 |
・・・ |
(6) |
NOI利回り |
6.2% |
・・・ |
(7)=(5)×2÷(6) |
※スターツプロシード投資法人開示資料を元に筆者作成
なおNOI利回り算出時にNOIを2倍している理由は、J-REITの大半が6ヶ月決算であるため2倍することで年率値とするため。
リートの資本効率や財務の健全性をチェックするには・・・「借入金比率(LTV)」
J-REITは、一般企業と同様に資本効率を高めるため借入金(負債)によるレバレッジ効果を利用しています。一般企業の場合は、D/Eレシオで負債比率を判断することが多くなっていますが、J-REITの場合は借入金比率(LTV=Loan To Value、以下LTV)を投資指標として使う場合が大半です。 J-REITのLTVは「総資産LTV=借入金(※2)÷総資産」で算出する場合が多くなっています。また総資産LTVと併せて「鑑定額LTV=借入金÷(総資産±保有不動産の含み損益)」を開示している銘柄もあります。総資産LTVも鑑定額LTVも決算期の数値を利用するものですが、J-REITは銘柄によって決算期が異なるため銘柄間の比較をする場合には、「取得額LTV=借入金÷保有不動産取得額」を利用する場合もあります。 |
※2:一般企業の社債にあたる投資法人債の残高も含みます。
LTVは、銘柄間の比較を行う場合と物件取得余地を確認する場合によく利用される指標です。例えば同じ住居に投資する銘柄でも図表2の通りLTVは異なっています。ケネディクス・レジデンシャル投資法人(3278)は、他の住居系銘柄と比較するとレバレッジを最も利用して資本効率(=1口あたり分配金)を高めようとしている銘柄と言えるのです。ただし、LTVが高いということは、借入金への依存度が高く、金融情勢が悪化した時に借入金の調達コストが高くなりやすいというデメリットがあります。 また各銘柄は規約上、LTVの上限を定めています。従ってその上限比率に近づいている銘柄は、借入金による物件取得余地が少なくなっている銘柄となります。言い換えれば増資を伴わないと物件取得ができない銘柄になっている、ということになります。一方でLTVが低い銘柄は、借入金だけで物件取得が可能ですので分配金の増加余地がある銘柄と言えるでしょう。 |
(図表2)住居特化型銘柄の取得額LTV
コード |
名称 |
取得額LTV |
---|---|---|
8979 |
56.1% |
|
8984 |
59.1% |
|
8986 |
48.6% |
|
3226 |
55.9% |
|
3240 |
55.2% |
|
3278 |
60.7% |
|
3282 |
57.2% |
|
住居特化7銘柄平均 |
56.1% |
|
全39銘柄平均値 |
48.5% |
(出典)各銘柄公表値を元に筆者作成
※2013年1月末時点(2013年2月上場の3282は2013年2月6日時点)
リートの割安度をチェックするには・・・「PBR・NAV倍率」
一般企業と同様にJ-REITでも割安度を示す指標として、PBRがよく指標として利用されています。ただしJ-REITは、<REIT教室 基本授業第2限目>でも記載されている通り、利益の90%超を投資家に分配する仕組みです。つまり当期に発生した利益は、内部留保されず決算後3ヶ月以内に投資家に分配されるのです。従ってPBRを算出する場合には、純資産から当期利益を控除して算出する必要があります。具体的には「修正PBR=リートの市場価格÷1口あたり出資額(※3)」で算出することになります。修正PBRが1倍以下なら割安となりますが、PBRは簿価を元に算出されますので保有不動産の含み損益を反映してない状態です。 この点から割安度を示す指標は、後述のNAV倍率の方を利用することが一般的です。 |
※3:1口あたり出資額=(純資産−当期純利益)÷発行済投資口数で算出できます。ただし、合併銘柄や物件売却益の一部内部留保(ともに第4回目の連載で説明します。)を行っている銘柄は別の計算式で算出する必要があります。
一方で修正PBRは、その銘柄が増資可能かどうかを見る目安として有効な指標です。内部留保を持たないJ-REITは、物件を取得していくために一般企業と比較すると増資を短い期間で行うという特徴があります。修正PBRが1倍を超えている銘柄は、いわゆるプレミアム増資となり、増資による1口あたり分配金の希薄化を回避しやすくなるのです。成長を続けるためJ-REITは、修正PBRが1倍を超えている状態が望ましいのです。 NAV(Net Asset Value)倍率は、上述の通り不動産の含み損益を反映させた指標で、「NAV倍率=リートの市場価格÷1口当たりのNAV((純資産総額±含み損益)÷投資口数)」で算出します。図表3の通りA銘柄とB銘柄は不動産の含み損益を反映させる前は同じバランスシートの銘柄です。つまり同じ株価の場合、A銘柄とB銘柄のPBRは同じ数値になります。しかし不動産の含み損益を反映させた場合、A銘柄のNAV倍率は0.75倍、B銘柄は1.50倍になります。つまりA銘柄の方が、割安感が高いと言えるのです。 |
(図表3)含み損益額の違いによるNAV倍率への影響
※図表を簡略化するため、剰余金を除外。
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