東京でサラリーマンのメッカと呼ばれるJR新橋駅の駅前には、SL広場という結構広いスペースがあります。その広場のSLの前の部分の横に、「東京五輪まであと何日」というカウントダウンの電子看板が設置されています。富士通がスポンサーとなり、東京パラリンピック開催まで1,000日(東京五輪までは968日)前にあたる、2017/11/29に設置されたものです。筆者もよく通る場所ですが、この電子看板の存在にもようやく慣れてきたような気がします。
開会式まで2年を切り、カウントダウンの数字もあと710日ちょっとまで減ってきて、いよいよ五輪だなと感じます。2020/7/24(金)の午後8時から東京五輪の開会式が新国立競技場(かなり出来上がってきました)で行われる予定です。酷暑の時期ですからナイターは助かりますね。神宮の花火大会が行われるところですから、セレモニーにはかなり花火が使われそうな気がします。来年には完成した施設を使った、各種競技の国際大会が数多く開催されるので、かなりお祭りムードが高まっていくのではないでしょうか?
そこで今週の「新興株ウィークリー」では、「五輪関連銘柄」について考えることにしました。東京五輪の開催が決定したのはほぼ5年前の2013年の9月です。したがっていわゆる「五輪銘柄」の理想買いは当時から始まっています。 これからは現実買いのステージに移行すると考えられますが、競技施設やインフラなどの建設関連の銘柄は、受注や業績に既に織り込まれてきているため、「新興市場の隠れた五輪銘柄」を探してみました。
図1:東証マザーズ指数(日足)
図2:JASDAQ平均(日足)
- ※図1・図2ともに当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
表1:主要株式指標の騰落率(7/31〜8/7)
指数 |
終値(8/7) |
騰落率 |
---|---|---|
日経平均株価 |
22,662.74 |
0.5% |
東証マザーズ指数 |
1,009.96 |
-2.8% |
JASDAQ平均株価 |
3,746.87 |
-1.9% |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
表2:主要新興市場銘柄の騰落率(7/31〜8/7)
コード |
銘柄 |
終値(8/7) |
騰落率 |
---|---|---|---|
マザーズ市場の時価総額上位銘柄 |
|
||
4385 |
メルカリ |
4,600 |
-2.3% |
7806 |
MTG |
7,050 |
-6.6% |
2121 |
ミクシィ |
2,859 |
-2.7% |
7779 |
CYBERDYNE |
1,239 |
-5.7% |
3993 |
PKSHA Technology |
12,490 |
-0.4% |
JASDAQ市場の時価総額上位銘柄 |
|
||
2702 |
日本マクドナルドホールディングス |
4,945 |
-7.4% |
2782 |
セリア |
4,480 |
-12.8% |
6324 |
ハーモニック・ドライブ・システムズ |
4,250 |
-3.0% |
6425 |
ユニバーサルエンターテインメント |
3,660 |
0.3% |
7716 |
ナカニシ |
2,259 |
-3.3% |
直近上場銘柄・市場で話題の銘柄 |
|
||
4382 |
HEROZ |
18,930 |
-6.0% |
9270 |
SOU |
5,880 |
3.5% |
6185 |
ソネット・メディア・ネットワークス |
4,205 |
-10.1% |
4384 |
ラクスル |
2,859 |
-2.4% |
4381 |
ビープラッツ |
8,150 |
-7.9% |
- ※表1・表2はBloombergデータをもとにSBI証券が作成。騰落率は7/31(火)終値と8/7(火)終値の比較による。時価総額は7月末基準。
東京五輪・パラリンピックの経済効果については、東京都の試算が公表されています。それによると、大会開催の直接投資や大会運営費、大会観戦者らの支出、企業のマーケティング活動費などを合わせ東京都に3兆3,919億円、全国では5兆2,162億円の経済効果があるとしています。また、日銀では建設投資や訪日観光客の増加などにより、2014年〜2020年のGDPを累計で25兆〜30兆円押し上げるとの試算を公表しています。近年では例を見ない大きなイベントであり、株式市場で関連銘柄が物色されるのは至極当然かもしれません。
表3は、東京五輪のスポンサー企業の一覧です。スポンサー企業は大会マークの使用や商品、サービスの提供機会が与えられます。残念ながら新興市場の銘柄は今のところスポンサー企業の中にはいませんが、時価総額がさほど大きくない企業として、アシックス(7936)、アース製薬(4985)、ALSOK(2331)、乃村工藝社(9716)、パソナグループ(2168)、丸大食品(2288)などが注目されるのではないでしょうか。
表3:2020東京五輪のスポンサー企業
スポンサー種類 |
企業名 |
---|---|
ワールドワイド五輪パートナー |
コカ・コーラ、アリババ、アトス、ブリヂストン、ダウ・ケミカル、GE、インテル、オメガ、パナソニック、P&G、サムスン電子、トヨタ自動車、VISA |
東京2020五輪ゴールドパートナー |
アサヒビール、アシックス、キヤノン、エネオス、東京海上日動、日本生命、NEC、NTT、野村ホールディングス、富士通、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ、三井不動産、明治、LIXIL |
東京2020五輪オフィシャルパートナー |
味の素、アース製薬、EF、エアウィーヴ、キッコーマン、近畿日本ツーリスト、 JTB、シスコ、セコム、ANA、ALSOK、大日本印刷、大和ハウス、東京ガス、東京メトロ、TOTO、東武トップツアーズ、凸版印刷、日清食品、日本郵政、JAL、JR東日本、久光製薬、三菱電機、ヤマトホールディングス、リクルート、読売新聞、朝日新聞、日経新聞、毎日新聞、 |
東京2020五輪オフィシャルサポーター |
乃村工藝社、パーク24、パソナグループ、丸大食品、産業経済新聞、北海道新聞 |
- ※東京五輪・パラリンピック競技大会組織委員会の資料をもとにSBI証券が作成。企業名が正式社名とは異なる場合があります。また、今後契約する企業が出てくる可能性があります。
表4は、新興株市場で「五輪関連銘柄」として注目されている企業の一覧です。当社HPの「キーワード検索機能」や各種資料、取材などを基にピックアップした銘柄群です。コード番号順に並べています。
なお、冒頭で触れたように、施設インフラ関連(建設工事)の銘柄に関しては、既に工事が佳境に入っていることから、業績面ではある程度織り込み済みと思われるため除外しています。
それでは、この銘柄群の中から、何銘柄か簡単にポイントをご紹介したいと思います。
ヒビノ(2469)は、音響や映像機材の貸出しと設置・オペレーション業務を行う会社です。数多くのミュージシャンのコンサートを手がけた実績を持ち、日本のミュージックシーンには欠かせない会社と言ってよいでしょう。欧米やアジアにも進出しています。東京五輪・パラリンピックに向けて施設整備の受注に注力しています。
WDI(3068)は、ダイニングレストランの老舗企業で多業態での出店が奏功しています。パスタの「カプリチョーザ」、「ハードロックカフェ」、最近では「ウルフギャング・ステーキ」などが成功しています。日本人が外国の旅行先で日本食レストランに行くように、東京五輪・パラリンピックでの訪日外国人の増加でメリットが想定できるのではないでしょうか。
エルテス(3967)は、SNS上の炎上対策、コンサルタント業務を行う会社です。ビッグデータの解析により早期にリスクを検知し、対策を立てます。クライアントには著名な消費財や食品メーカーなどが数多く並んでいます。データ解析技術を基に業務の多角化を図っており、現在は国際会議やイベントでのテロ対策事業に注力しています。過去には伊勢志摩サミットや東京ガールズコレクションでの受注実績があります。
メディアリンクス(6659)は、放送や通信機器の開発・販売を行うメーカーです。特にマルチメディアデータIP伝送技術に優れています。日本はもちろん世界での実績も豊富です。過去の五輪(ロンドン大会2012、バンクーバー大会2010、北京2008、トリノ大会2006、アテネ大会2004)、サッカーW杯などで多くの実績を有しています。
ファイバーゲート(9450)は、2018年3月に上場した会社です。独立系のWi‐Fiソリューション専門業者として独自の地位を占めています。賃貸を中心とする住宅向けのルーターやアクセスポイント機器の製造販売を行っています。住宅のWi-Fi普及加速に加え、商業施設や旅館・ホテルでの導入増加が業績を牽引しています。訪日外国人の日本での不満に、Wi‐Fiポイントが少ないとの指摘があり、東京五輪を契機にさらなる需要増加が見込まれのではないでしょうか。
表4:新興株市場の「隠れた五輪関連銘柄」はコレ!?
取引 | チャート | ポート フォリオ |
コード | 銘柄名 | 株価 (8/7) (円) |
事業内容・特色 |
---|---|---|---|---|---|---|
追加 | 2304 | CSSホールディングス | 428 | スチュワード事業(ホテルの食器洗浄・衛生管理)が柱。映像・音響・セキュリティ事業にも多角化。 | ||
追加 | 2469 | ヒビノ | 1,350 | コンサート等の映像・音響設備提供サービスが柱。機器類の製造や輸入販売も手がける。 | ||
追加 | 2483 | 翻訳センター | 2,847 | 大手翻訳会社。特許、医薬、工業など企業向け技術翻訳が中心だが、通訳事業に買収子会社で本格進出。 | ||
追加 | 3068 | WDI | 1,571 | ダイニングの老舗で国内外のブランドを直営・FC展開。「ハードロックカフェ」にインバウンド需要期待。 | ||
追加 | 3418 | バルニバービ | 2,372 | カフェ、レストランを直営展開。公園や水辺を含む独自出店策に強み。「鹿屋アスリート食堂」も展開。 | ||
追加 | 3692 | FFRI | 2,407 | インターネットのサイバー・セキュリティーの研究開発に特化した会社。独立系で技術力に強み。 | ||
追加 | 3857 | ラック | 1,871 | 情報セキュリティー技術に強み。KDDIと資本提携関係にある。 | ||
追加 | 3967 | エルテス | 1,423 | SNS上のビッグデータ解析に強み。ネットの炎上対策が主力だが、次代の柱としてテロ対策に注力中。 | ||
追加 | 4316 | ビーマップ | 905 | 映像や位置情報サービスの配信事業を展開。無線LAN設置が訪日外国人増で堅調。 | ||
追加 | 4386 | SIG | 2,412 | 6月に上場。独立系の情報・産業制御システム開発会社。セキュリティーサービスに強み。 | ||
追加 | 4754 | トスネット | 1,100 | 建設現場やイベントでの交通誘導や警護がメイン事業。施設警備でセコムと提携。 | ||
追加 | 6659 | メディアリンクス | 366 | 放送や通信系機器の開発メーカー。過去の五輪で映像伝送装置の採用実績あり。4K対応でもメリット。 | ||
追加 | 7836 | アビックス | 128 | 商業用映像看板を開発・販売するファブレスメーカー。訪日客増加の飲食向けが好調。 | ||
追加 | 9450 | ファイバーゲート | 3,910 | 賃貸物件や商業施設向けのWi-Fiサービスを提供。訪日外国人のWi-Fiニーズ強く普及促進へ。 | ||
追加 | 9625 | セレスポ | 1,448 | スポーツイベントなどの企画・設営が主力事業。企業の販促やセレモニーにも強い。 |
表5:当面の新規上場予定銘柄
上場日 |
コード |
社名 |
市場 |
会社概要 |
---|---|---|---|---|
8/22 |
4397 |
(株)チームスピリット |
マザーズ |
勤怠管理、経費精算、工数管理などを一体化したクラウドサービスの提供 |
9/6 |
9275 |
(株)ナルミヤ・インターナショナル |
東証2部 |
百貨店、ショッピングセンター、Eコマースでのベビー・子供服の製造販売。 |
9/6 |
7035 |
and factory(株) |
マザーズ |
スマートフォンのアプリ開発・運営、IoT技術を導入したホテルの運営 |
- ※各種資料、報道等をもとにSBI証券が作成
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
- ※NISA口座で上場株式等の配当金を非課税で受け取るためには、配当金の受領方法を「株式数比例配分方式」に事前にご登録いただく必要があります。
- ※信用取引において必要となるその他諸費用の詳細は信用取引のサービス概要をご確認ください。