スポーツの秋到来です。昔からプロ野球のヤクルトが好きで、会社から近い神宮球場に時々足を運びます。セリーグは広島の優勝マジックが「4」とペナント争いはほぼ決定です。ただしこれからCS、日本シリーズとまだ出場のチャンスが残っているのでしばらく楽しめそうです。

一方、長らく低迷していた新興株市場ですが、そろそろ変化してくるのではないでしょうか。日経平均株価が長らく続いてきたボックス相場から上放れの様相を呈しているのが前兆ではないでしょうか。今年は年初からこれまで、通貨も株式もアメリカの「1人勝ち相場」でしたが、そろそろ堅調な企業業績を背景に、日本株の相対的な割安感に注目が集まる可能性があると思われます。これまでは、相場格言でいう、「木を見ず森を見る」形で売られてきた印象の強い新興株市場ですが、これからは逆のパターン、すなわち個別企業の業績にも注目が高まる可能性が出てきたように思います。

そこで今週は、好業績が期待されていながら、株価が大きく値下がりしている新興株銘柄にスポットを当ててみました。相場の反発局面では、こうした銘柄のパフォーマンスが良好となるのではないでしょうか。皆様の銘柄選択のご参考にしていただければ幸いです。

図1：東証マザーズ指数（日足）

図2：JASDAQ平均（日足）

• ※図1・図2ともに当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。

• ※表1・表2はBloombergデータをもとにSBI証券が作成。騰落率は9/11（火）終値と9/18（火）終値の比較による。時価総額は8月末基準。

それでは早速スクリーニングにより、銘柄を抽出してみたいと思います。今回の条件は下記の5項目です。

（1）東証マザーズおよびJASDAQの上場銘柄であること
（2）株価が年初来高値から40%以上下落していること
（3）今期の会社側経常利益予想が40％以上の増益であること
（4）直近四半期決算、または直近本決算の経常利益が黒字であること
（5）原則として直近四半期までの経常利益の年度予想利益、または中間期予想に対する進捗率が50%以上であること

上記の条件を満たす全ての銘柄をコード番号順に並べたのが表3の6銘柄となります。

（3）、（4）の条件を入れることで、今期の業績が好調な銘柄に絞り込んでいます。また、（5）により、直近までの決算が好調で、会社予想の経常利益について上方修正が期待できそうな銘柄も抽出されることを狙っています。なお、（5）については、直近決算が本決算の銘柄は対象外としました。また、進捗率は中間期の予想がある場合はその数値に対する進捗率、ない場合は通期予想に対する進捗率としています。

それでは、表3の中から数銘柄をピックアップし、事業内容、特徴、注目点などをご紹介いたします。

YKT（2693）は、独立系の機械商社で、創業から100年近い歴史を有しています。スイスやドイツなど欧州製の精密機械、工具研削盤、測定機器等の輸入販売を手がけています。現在はスマホやタブレットPCなどの実装機器の輸出が主力となっています。自動車業界の設備投資の活発化や、海外でのスマホや車載関連機器の増産対応などで、活発な受注状況が続いています。6月中間期決算では前年同期比43%増収、97%経常増益と好調でした。

ジェイテックコーポレーション（3446）は、1993年に産学連携のベンチャー企業として創業し、2018年2月に上場した会社です。収益の主力は、放射光施設（生命科学や先端材料の構造解析などに利用）等で使用されるX線ナノ集光ミラーの製造です。放射光施設は古くからありましたが、2005年頃に理研と大阪大学の共同研究により、ミラーを使って放射光を効率よく集中させるブレークスルー技術が普及しました。同社の特徴はミラーの表面をナノレベルの精密度で仕上げることができる製造工程（世界で同社のみが有する化学処理技術）にあります。このため、世界の最先端の放射光施設ではほとんどが同社の製品を採用しています。
この他には、自動細胞培養装置も注目されます。研究用途だけではなく、今後はIPS細胞など治療用の用途での需要拡大が期待されるためです。この分野では同社が60％のシェアを持ちトップです。自社開発した浮遊培養制御と呼ばれる方式が細胞を傷つけにくく、生産性が高いのが特徴です。

エルテス（3967）は、SNS上の炎上対策、コンサルタント業務を行う会社です。ビッグデータの解析により早期にリスクを検知し、対策を立てます。クライアントには著名な消費財や食品メーカーなどが数多く並んでいます。データ解析技術をもとに業務の多角化を図っており、現在は国際会議やイベントでのテロ対策事業に注力しています。テロ対策の専門家をリクルートするなど注力しており、東京五輪での受注に期待が持てそうです。過去には伊勢志摩サミットや東京ガールズコレクションでの受注実績があります。
新しい事業分野としては、本人認証技術が面白そうです。政府はマイナンバーの普及に注力していますが、同社では個人認証分野で先端を行っているエストニア（国民IDカードの普及率が世界最高）のCYBERNETICA社の技術を採用したアプリケーションの開発を開始しています。

トレンダース（6069）は、インスタグラム、ブログ、TwitterといったSNSで影響力を持つインフルエンサー13,000人を独自にネットワークしているマーケティング会社です。商品特性に合わせたプラットフォームやインフルエンサーを活用し、クライアントのセールス・プロモーションをサポートします。広告対象メディアが雑誌・書籍やTVからネット広告やSNSにシフトしている環境変化を追い風に、業績拡大が目立っています。新規事業として美容特化型動画メディア「MiniTV」を子会社化したことが注目されます。

ハーモニック・ドライブ・システムズ（6324）は、精密制御減速装置等に強みを持つ機械メーカーです。製品は工作機械、産業用ロボット、半導体製造装置、フラットパネルディスプレイ製造装置など幅広い分野で使われています。日本のほかドイツ、米国、中国などに生産拠点を持っています。産業用ロボット分野での採用が増加しており好調な業績動向となっています。

表3：好業績だが大きく売られた新興株はコレ!?

取引	チャート	ポート フォリオ	コード	銘柄名	株価 （9/18） （円）	年初来高値からの 株価下落率 （％）	今期会社予想 経常増益率 （％）	直近四半期までの 経常利益進捗率
		追加	2693	YKT	433	51.2	69.0	通期予想比52%
		追加	3446	ジェイテックコーポレーション	5,260	61.0	58.0	-
		追加	3967	エルテス	1,425	55.3	39.1	中間予想比53%
		追加	6069	トレンダーズ	2,405	43.7	48.6	通期予想比59%
		追加	6324	ハーモニック・ドライブ・システムズ	4,065	51.3	43.9	中間予想比57%
		追加	7810	クロスフォー	354	50.7	55.2	-

• ※会社公表データ、当社スクリーニングツールをもとにSBI証券が作成。ジェイテックコーポレーションは6月決算、クロスフォーは7月決算で、直近決算が本決算となっているため、進捗率の分析はありません。また、トレンダーズは前期が単独決算、今期予想が連結決算で比較になります。

• ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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