10月相場に突入し、株式相場はとうとう下半期に入りました。この時期になると決算発表が今月末から本格化し、説明会への参加や企業への取材等であっという間に12月になり、年末を迎えるというイメージがあります。あと3ヵ月で2019年になるのですね。本当に時間がたつのが早く感じられます。今年は台風がやたらと多く発生し、日本列島を襲っています。最近は電車や列車などの交通機関が早めに運休計画を発表し、実施するので、無理して出かけて電車が止まり、中で缶詰になったというような風景があまり見られなくなったように思います。大変良いことではないでしょうか。

9月末に日経平均株価が「バブル時代以降の高値」まで戻り、長らく続いてきたボックス相場から上放れの様相を呈してきました。長らく低迷していた新興株市場にもリバウンドの兆しが見えます。これまで企業業績とは関係無しに新興市場だからと売られてきた印象の強い新興株ですが、これからは個別企業の業績に注目が高まる可能性が出てきたように思います。

今週は、決算発表時期にあわせて、「上方修正」が期待される銘柄を探してみました。これまでの四半期決算が好調で、今後業績予想の上方修正が期待できそうな銘柄をスクリーニングにより抽出してみました。今回はその第1回目として、マザーズ市場の12月決算および9月決算銘柄を分析対象にしています。来週はJASDAQ銘柄で同様の試みを行う予定です。皆様の銘柄選択のご参考にしていただければ幸いです。

図1：東証マザーズ指数（日足）

図2：JASDAQ平均（日足）

• ※図1・図2ともに当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。

• ※表1・表2はBloombergデータをもとにSBI証券が作成。騰落率は9/25（火）終値と10/2（火）終値の比較による。時価総額は9月末基準。

それでは早速スクリーニングにより、「上方修正」が期待される銘柄を抽出してみたいと思います。今回の条件は下記の5項目です。

（1）東証マザーズの上場銘柄であること
（2）9月決算または12月決算の銘柄であること
（3）四半期累計の営業利益が前年同期ともども黒字で、通期会社予想営業利益も黒字であること
（4）四半期累計の営業増益率が通期会社予想営業増益率を上回っていること
（5）原則として直近四半期までの営業利益の年度予想利益に対する進捗率が標準以上（9月決算なら75％、12月決算なら50%）であること

決算期を月別にみると、上場銘柄の多くが3月決算銘柄です。3月決算銘柄の分析および銘柄の抽出については、次回以降ご紹介したいと考えております。
ただ、9月決算銘柄にとって、今度発表される決算は「本決算」で、12月決算銘柄にとっては第3四半期となります。ともに、その年度の中で通過した四半期の数が3月決算銘柄に比べて多く、通期の利益を予想するに際してのヒントが多いという特徴があります。その意味で、9月決算銘柄と12月決算銘柄の分析を、3月決算銘柄と分けて行うことに意味があると考えられます。
なお、6月決算銘柄については、今度発表される決算は第1四半期であり、通過した四半期の業績をヒントとすることができないため、今回は分析対象外としました。

上記の条件を満たす全ての銘柄を（5）の進捗率の高い順番に並べたのが表3の8銘柄となります。

それでは、表3の8銘柄のうち主だった銘柄について事業内容、特徴、注目点などをご紹介いたします。

ビリングシステム（3623）は、2008年3月にマザーズ市場に上場しています。インターネット決済サービスの収納代行、リアルタイムでの入金確認、公共料金の支払い代行、スマホ決済などの支援業務などを行っています。今期の業績はクイック入金サービスの売り上げ増加に加え、自動販売機向けシンクライアント型決済端末の販売などが好調です。8月の中間決算時点で上方修正を行っていますが、会社側の予想は依然保守的に思われます。中国の「微信」での決済分野にも注力中です。中長期的には、国内でのスマホ決済の増加が追い風となりそうで注目されます。

メディアフラッグ（6067）は、2012年9月にマザーズ市場に上場しています。流通業の覆面店舗調査（一般消費者からモニターを募集し店舗調査を行う）、消費財メーカー向けの店頭での販売促進活動の受託などが主な事業内容です。この他、店頭での小型TVモニターを使った販売促進事業（子会社のインパクトTV）なども行っています。今期は販促活動支援事業が好調で、第二四半期までで通期予想の74％の営業利益を達成しています。例年後半に収益があがるという季節性があるため、上方修正が期待されるのではないでしょうか。9/26（水）に共同印刷（7914）との資本業務提携を公表、店頭販促領域での協業を進める模様です。

JMC（5704）は、2016年11月にマザーズ市場に上場しています。3Dプリンターによる試作品の製作、砂型鋳造品、CTスキャンによる測定・検査など3つの事業分野からなりますが、先端物づくり分野での試作・少量生産の専門家とも言い換えられます。顧客は自動車、産業機械、医療用機器、化粧品メーカー、大学や研究機関など多岐に渡ります。今期の業績は3Dプリンター出力事業で心臓カテーテルシミュレターなど医療案件の好調に加え、新鋳造工場の稼動好調などから好調です。7月末に上方修正を行っていますが、会社予想はまだ控えめな印象です。

ケアネット（2150）は、2007年4月にマザーズ市場に上場しています。製薬企業向けの医薬営業支援サービス、医師・医療従事者向け医療コンテンツサービスを行っている会社です。20万人を越える医療従事者に利用されている医療情報専門サイト「CareNet」の運営を柱にしています。サイトには医師向けの「医療コンテンツ（臨床現場で使えるノウハウなど）」や、医療ニュース、海外での論文などが掲載されています。医薬営業支援サービスが、製薬会社のeプロモーションの需要増加により好調です。

メドピア（6095）は、2014年6月にマザーズ市場に上場しています。医師向け情報サイト「メドピア」を運営しています。現状は「メドピア」への製薬会社からの広告収入が売上高の大半を占めています。また、メドピアで転職を希望する医師の送客収入（医師の人材紹介会社へ）も拡大中です。新規事業として、オンラインの健康相談サービス（医師とチャットやテレビ電話で相談できる）や栄養士とコンタクトできるダイエット相談なども手がけています。「メドピア」の普及が進んでおり（会員10万人超で医師の1/3が登録）、今後さまざまな課金形態のサービス進出が可能と思われ、成長余地を感じます。今期の業績はアクティブ会員の増加により広告収入が増加、健康相談サービスも好調で8/13（月）に上方修正を行っていますが、会社予想は依然として保守的と思われます。4月にスギホールディングス（7649）と資本業務提携を行っており、今後の協業進展にも注目されます。

表3：「上方修正」が期待できるマザーズ銘柄はコレ!?

取引	チャート	ポート フォリオ	コード	銘柄名	株価 （10/2） （円）	四半期 営業増益率 （％）	通期会社予想 営業増益率 （％）	進捗率 （％）
12月決算銘柄
		追加	3680	ホットリンク	896	131.1	-33.2	85.0
		追加	3623	ビリングシステム	7,680	144.4	11.6	77.4
		追加	6067	メディアフラッグ	1,748	168.2	-17.0	74.1
		追加	5704	JMC	4,620	4,249.2	1,081	63.4
		追加	2150	ケアネット	1,028	15.8	10.3	53.2
9月決算銘柄
		追加	3985	テモナ	1,116	53.2	2.4	104.0
		追加	6046	リンクバル	5,350	45.6	22.2	87.5
		追加	6095	メドピア	2,351	1,756.5	361.5	77.4

• ※各種資料および会社公表データをもとにSBI証券が作成。四半期営業増益率は、9月決算銘柄の場合は第3四半期累計、12月決算銘柄の場合は第2四半期累計の対前年同期比。

• ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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