10月に入ってから世界的に株式市場が波乱の局面を迎えています。日経平均も10/2（火）の取引時間中に24,448円というバブル後の戻り高値をつけましたが、その後は下落傾向となり、10/23（火）には前日比604円安の22,010円と大幅に下げ、高値からはちょうど10.0％下落しています。

東証マザーズ、JASDAQなど新興株市場の株価も、日経平均株価同様に冴えない状況となっています。これから3月期決算の2Q決算の発表が相次ぎます。足元までの状況は、トップバッターの安川電機（6506）が下方修正を発表したり、コンテナ船会社の収益悪化、ハーモニック・ドライブ・システムズ（6324）の受注悪化など、やや懸念材料が出ているのが現状ですが、今後の上方修正などの好材料に期待したいものです。

そこで今週は、新興株市場から東証1部への昇格をテーマに、好パフォーマンスが期待できそうな銘柄を探ってみました。
東証1部への昇格は、知名度や信用力の一段の上昇、資金調達の効率化など、企業にとってのメリットは非常に大きなものがあります。新興市場の上場企業にとって、最終的に目指すゴールと言っても良いのではないでしょうか。

投資家の立場で見ても、東証1部への昇格は株式の流動性が高まる上、TOPIXに連動する投資信託やETFがポートフォリオに組み入れる必要が出てくるなど、需給面でのプラスが指摘できます。また、東証1部への昇格には企業の成長、収益の向上が条件となりますので、優良企業の証でもあるわけです。したがって、東証1部への昇格が発表された企業の株価は上昇する公算が大きく、投資家としてのメリットも大きいものとなります。

図1：東証マザーズ指数（日足）

図2：JASDAQ平均（日足）

• ※図1・図2ともに当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。

• ※表1・表2はBloombergデータをもとにSBI証券が作成。騰落率は10/16（火）終値と10/23（火）終値の比較による。時価総額は9月末基準。

新興株市場の銘柄が東証1部銘柄へと昇格していくコースは、主に以下の4通りとなっています。

（1）東証2部→東証1部
（2）東証マザーズ→東証1部
（3）東証JASDAQ→東証1部
（4）東証JASDAQ→東証2部→東証1部

このうち、一番多く見られるケースは（2）の「東証マザーズ→東証1部」のパターンです。これはそもそも、東証マザーズ市場の位置付けが「東証1部へのステップアップを視野に入れた成長企業向けの市場」となっているためです。このため東証マザーズ市場から東証1部市場への昇格基準のひとつである時価総額については40億円以上と、東証JASDAQから東証1部への移行に必要な250億円と比べハードルが大変低くなっています。

また、東証マザーズ上場銘柄は上場から5年経過すると東証マザースへの継続上場か東証2部への市場変更かのいずれかを選択しなければなりません。東証マザーズでの上場継続を希望する場合は、東証に対し「高い成長可能性」に関する説明書の提出が必要となります。マザーズ市場の活性化のために取られている処置といえましょう。

決算期変更を行わない場合、東証マザースから東証1部への昇格は、上場してから1年以上経過することが条件となっています。つまり、東証マザーズに上場してから最短で1年経過した企業は、必要な条件を満たせば、東証1部へ昇格できることになります。

東証1部への昇格を実現する企業への投資は、まずその企業が順調に成長し企業価値を高めている証明である上、東証1部への移行自体がその銘柄の投資家の関心を今後さらに集めることにつながる（機関投資家がポートフォリオに組み入れるなど）ため、大変有効な手段だと思われます。

直近で東証マザーズから東証1部等（※）への昇格の発表があった2銘柄のチャートを見てみましょう。10/25（木）に市場変更される予定のテンポイノベーション（3484）、9/10（月）に昇格したジャパンエレベーターサービスホールディングス（6544）はいずれも、昇格の発表のあった日から株価は上昇しています。昇格発表前の株価と10/23（火）の終値比較では、それぞれ20%（一時的には30％）、6%（同16％）の上昇となっています。

※「昇格発表」の時点では東証1部または同2部のいずれかの区分が明らかになっていないことがあります。

図3：直近で東証1部へ昇格した銘柄のチャート

テンポイノベーション（3484）

ジャパンエレベーターサービスホールディングス（6544）

東証マザーズ市場から東証1部市場への指定替え基準は、下記のような形式基準があります。

（A）株主数2,200人以上
（B）流通株式2万単位以上
（C）時価総額40億円以上
（D）純資産額10億円以上
（E）最近2年間合計の経常利益5億円以上または時価総額が500億円以上
（F）最近5年間の有価証券報告書に虚偽記載がないこと

下の表3は2016年以降2017年10月までに東証マザーズ市場に新規上場した銘柄のうち、上記条件の（A）、（C）、（D）、（E）、（F）を満たす16銘柄を上場日順に並べたものです。この銘柄群の中から今後年末から年初くらいまでに東証1部への指定替えを申請する企業が出てくる可能性が高いと思われます。

なお、上記のスクリーニング条件をすべて満たしているものの、現実に指定替えの申請が済んでいる銘柄については表から除いています。また、計算が複雑になる（B）の流通株式のスクリーニングは行いませんでした。最後に肝心なことは、「指定替え」はあくまでも企業の「申請」によるものです。企業が望まなければ、東証1部への「指定替え」は実現しないことになります。

表3：東証1部への昇格が期待できるマザーズ銘柄はコレ!?

取引	チャート	ポート フォリオ	コード	銘柄名	上場日	主な事業内容
		追加	3482	ロードスターキャピタル	2017/9/28	都内のオフィスビルのバリューアップ
		追加	3993	PKSHA　Technology	2017/9/22	深層学習などAI機能の開発
		追加	3990	UUUM	2017/8/30	ユーチューバーの製作サポート
		追加	6696	トランザス	2017/8/9	IoTソリューションサービス、IT事業支援
		追加	3989	シェアリングテクノロジー	2017/8/3	住まい関連トラブルのマッチングサイト
		追加	6552	GameWith	2017/6/30	ゲーム攻略サイト「GameWith」の運営
		追加	3565	アセンテック	2017/4/25	仮想デスクトップのソリューション
		追加	3479	ティーケーピー	2017/3/27	貸会議室の運営、飲食・ホテル経営
		追加	3969	エイトレッド	2016/12/22	「X-point」などワークフローソフトの開発
		追加	6537	WASHハウス	2016/11/22	九州中心にコインランドリー展開
		追加	3474	G−FACTORY	2016/9/30	外食向けの物件、内装設備リースなど
		追加	3547	串カツ田中	2016/9/14	「串カツ田中」を運営する外食チェーン
		追加	6532	ベイカレント・コンサルティング	2016/9/2	経営戦略からITまでの総合コンサル
		追加	3542	ベガコーポレーション	2016/6/28	家具や雑貨等のネット通販
		追加	6192	ハイアス・アンド・カンパニー	2016/4/5	住宅関連に特化したコンサル会社

• ※表3は東京証券取引所の資料等をもとにSBI証券が作成。

• ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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