2019年の新春相場は、昨年末までの下落基調から反発に転じる銘柄が多くなってきたように思われます。米中の貿易摩擦に端を発する覇権争いは長期化の様相を呈していますが、当面の通商交渉における進展の期待が高まっていることや、米国のFRBがハト派的姿勢に転じ、同国の金利引き上げが一時停止されるかもしれないことなどが、市場参加者の安心感となっており、リスクオンの姿勢に転じているものと考えられます。
「新興株ウィークリー」では、1/9(水)に2019年の新春相場で注目されるとみられる「相場テーマ」の中から「キャッシュレス決済」をチョイスし、それに関連する銘柄をご紹介しましたが、今週は「相場テーマ」の第2弾として「AI(人工知能)」関連銘柄をとりあげてみました。一般的に年初は「テーマ株」が注目されやすい時期であると考えられます。多くの人々が「今年はどんな年になるのであろう」と考え、投資家は「今年はどんな銘柄が活躍するのであろう」と思いを巡らせることが増えやすいためです。
「AI」は数あるテーマの中でも、今後変化していく産業構造の中で中核となる技術であり、極めて息の長い、大きなテーマとなる可能性があると思われます。
株式の格言に、「国策に売りなし」というのがあります。国が実行しようとしている政策によって追い風を受ける銘柄は買うべし、という意味です。国の政策ですから、税金が投入されたり、政策を行うための規制緩和が進行します。したがって、このテーマに沿った企業の行動半径が広がったり、多くの場合売上高が増加するメリットを享受できるわけです。
経済産業省の産業構造審議会がまとめた「新産業ビジョン」〜一人ひとりの、世界の課題を解決する日本の未来〜では、アベノミクス成長戦略において、成長戦略第2ステージの課題として、最大の鍵は第4次産業革命技術の社会実装(IoT、ビッグデータ、人工知能、ロボット等の活用)による、新たな製品・サービスの創出および生産性革命を提唱しています。AIは、ディープラーニングにより、画期的な速度で進歩を遂げており、第4次産業革命で想定される技術進歩の基盤としての役割を担っています。
日本は、少子高齢化や人口減少に伴う、労働力不足の時代を迎えます。2030年代には人口の三分の一が65歳以上となります。このため、国の生産性向上は喫緊の課題となっています。そのためには、IoT、自動運転、創薬を含む医療、フィンテック、ロボット化などが必要となりますが、「AI」は、これら全ての分野の進歩に欠かせない要素技術(テクノロジー)と言えるのではないでしょうか。
図1:第4次産業革命とは
- ※経済産業省、産業構造審議会「新産業構造ビジョン」より
それでは具体的に、銘柄をピックアップしてみましょう。「新興株ウィークリー」では、当社の銘柄検索ツールを使い、「人工知能」というキーワードを入力し、「AI」関連銘柄を抽出してみました。また、弊社の「テーマキラー!」投資でも、今月の注目テーマとして「AI」を取り上げていますので、その銘柄も参考にしました。なお、範囲としては、東証マザーズおよびJASDAQに限定していますのでご注意ください。
*「テーマキラー!」投資に組み入れられている銘柄には、*印を付与しています
表3が、「新興株ウィークリー」が選んだ「AI」関連銘柄です。抽出された銘柄がかなり多数になったため、業績寄与が大きいと期待されるもの、会社側が「AI」を注力分野として取り組んでいるものを、「新興株ウィークリー」が選別しました。また、今期の会社側の営業利益予想で増益率の高い順に並べてみました。これらの「AI」関連銘柄が、2019年相場の主役の一つになる可能性は十分にあると考えられます。
表1:「AI」関連有力銘柄はコレ!?
取引 | チャート | ポート フォリオ |
コード | 銘柄名 | 株価(円) (1/15) |
予想営業増益率 (今期) |
ポイント |
---|---|---|---|---|---|---|---|
追加 | 2158 | FRONTEO* | 745 | 295.5% | 独自開発したAIエンジン「KIBIT」搭載のソリューションがシェア1位 | ||
追加 | 7046 | テクノスデータサイエンス・エンジニアリング | 5,330 | 164.9% | 「ビッグデータ・AIソリューションサービス」と、AI製品やAIモジュール | ||
追加 | 3993 | PKSHATechnology | 7,680 | 51.0% | 言語処理、画像認識、深層学習技術を用いたアルゴリズムソリューション | ||
追加 | 3652 | ディジタルメディアプロフェッショナル | 4,060 | 44.9% | AIアルゴリズム、ソフトウェア、ハードウェアの一貫開発 | ||
追加 | 3905 | データセクション* | 709 | 22.2% | ビッグデータ処理・解析が中心、特にSNS等ソーシャルメディアに強み | ||
追加 | 4382 | HEROZ | 6,860 | 13.0% | 将棋に限らず様々な課題を解決するAIとして進化した「HEROZ Kishin」 | ||
追加 | 3996 | サインポスト | 3,980 | 8.4% | スーパーやコンビニでの無人レジなどAI事業注力中 | ||
追加 | 3773 | アドバンスト・メディア | 1,490 | 8.2% | 音声を文字変換する独自技術核にした各種業務用ソフト開発 | ||
追加 | 2186 | ソーバル | 892 | 6.7% | 自動運転技術を中心に自動車業界向け取引が拡大中 | ||
追加 | 3984 | ユーザーローカル | 5,620 | 6.0% | ビッグデータの各種解析ツールやAIを使った業務支援ツールを提供 | ||
追加 | 3961 | シルバーエッグ・テクノロジー | 1,079 | -0.7% | AIを用いたWeb上のマーケティング支援ツールを提供 | ||
追加 | 3634 | ソケッツ | 850 | -26.5% | 音楽に特化したAI使用のサービスを提供 | ||
追加 | 3906 | ALBERT* | 10,770 | 黒字転換 | AI、ディープラーニング技術を活用したビッグデータ分析が主力事業 | ||
追加 | 6182 | ロゼッタ* | 2,205 | 黒字転換 | AIとWeb検索活用の自動翻訳サービス・ソフトを提供 | ||
追加 | 4425 | Kudan | 15,000 | 黒字転換 | イギリスに研究開発拠点を持つ人工知覚技術のパイオニア企業 | ||
追加 | 3913 | sMedio | 747 | 赤字拡大 | マルチメディア、無線接続技術関連のソフトウエアの開発に強み |
- ※弊社検索ツール、各種資料等をもとにSBI証券が作成。銘柄名に*がついているものは、弊社の「テーマキラー!」の組み入れ銘柄を示しています。予想営業増益率は会社予想です。なお、データセクション(3905)の今期予想営業利益(会社予想)は10〜100百万円であり、その中央値である55百万円を会社予想営業利益として計算しています。
東証マザーズ指数の1/15(火)の終値は914.19と1/8(火)の終値887.50から3.0%の上昇となりました。米中通商交渉でとりあえずの妥協点が見出されるのではないかとの期待や、FRBの金融政策に対する姿勢がハト派に転じ、米国の利上げが一時停止されるのではとの観測が高まり、NYダウが堅調に推移していることが、日本株市場にも買い安心感となりました。
同じ期間の日経平均株価の上昇率は1.7%で、東証マザーズ指数はそれを上回る上昇率となりました。主要銘柄やバイオ関連株などの好調が目立ちました。これまで日経平均株価よりも大きく下げてきた反動が出ました。流動性の問題から、日経平均株価に比べ株価の変動幅が大きい特徴も表れていると思われます。
1/8(火)〜1/15(火)の主な個別銘柄の値動きでは、サンバイオ(4592)やそうせいグループ(4565)などバイオ関連銘柄が引き続き堅調でした。また、これまで大きく下げてきたミクシィ(2121)も好調でした。一方、MTG(7806)は、特に悪材料はなかったものの続落となり、上場来安値となっています。
この期間のJASDAQ市場は1.3%の上昇と、ほぼ日経平均株価並みの上昇率となりました。個別銘柄ではワークマン(7564)が続伸しました。一方、セリア(2782)は大手証券のアナリストの目標株価引き下げで下落しました。
※東証マザーズ指数について:東証マザーズ市場は近い将来東証1部へのステップアップを視野に入れた成長企業向けの市場です。マザーズ指数は、マザーズ市場に上場する全銘柄の時価総額加重平均型の指数です。ただし、一部の時価総額の大きい銘柄の影響度が大きい点に注意を要します。ちなみに12月末のマザーズ市場の時価総額に占める、サンバイオのシェアは11.8%、メルカリが5.6%、ミクシィが5.4%などとなっています。
図2:東証マザーズ指数(日足)
図3:JASDAQ平均(日足)
- ※図2・図3ともに当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
表2:主要株式指標の騰落率(1/8〜1/15)
指数 |
終値(1/15) |
騰落率 |
---|---|---|
日経平均株価 |
20,555.29 |
1.7% |
東証マザーズ指数 |
914.19 |
3.0% |
JASDAQ平均株価 |
3,321.80 |
1.3% |
表3:主要新興市場銘柄の騰落率(1/8〜1/15)
コード |
銘柄 |
終値(1/15) |
騰落率 |
---|---|---|---|
マザーズ市場の時価総額上位銘柄 |
|
||
4592 |
サンバイオ |
10,250 |
5.7% |
4385 |
メルカリ |
2,077 |
1.8% |
2121 |
ミクシィ |
2,654 |
6.1% |
7806 |
MTG |
4,630 |
-9.6% |
4565 |
そうせいグループ |
1,167 |
8.3% |
JASDAQ市場の時価総額上位銘柄 |
|
||
2702 |
日本マクドナルドホールディングス |
4,735 |
-0.9% |
6324 |
ハーモニック・ドライブ・システムズ |
3,010 |
1.5% |
7564 |
ワークマン |
7,950 |
3.4% |
2782 |
セリア |
3,160 |
-15.2% |
6425 |
ユニバーサルエンターテインメント |
3,410 |
-0.6% |
直近上場銘柄・市場で話題の銘柄 |
|
||
3967 |
エルテス |
2,121 |
-8.8% |
4593 |
ヘリオス |
1,961 |
10.0% |
6572 |
RPAホールディングス |
3,680 |
12.2% |
4384 |
ラクスル |
2,670 |
9.4% |
6544 |
ジャパンエレベーターサービスホールディングス |
1,720 |
-0.5% |
- ※表2・表3はBloombergデータをもとにSBI証券が作成。騰落率は1/8(火)終値と1/15(火)終値の比較による。時価総額は12月末基準。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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