2019年の1月相場は、昨年末までの下落基調から一転して反発に転じる銘柄が多くなってきたように思われます。米中の覇権争いは長期化の様相を呈していますが、当面の通商交渉における進展の期待が高まっていることからNY株式が引き続き好調に推移していることが、日本株参加者にも安心感となっており、リスクオンの姿勢に転じているものと考えられます。ただし、米中の交渉は一筋縄にはいかないと思われ、今後も紆余曲折が予想されます。
「新興株ウィークリー」では、1/9(水)に2019年の相場で注目されるとみられる「相場テーマ」の中から「キャッシュレス決済」、1/16(水)には「AI(人工知能)」を取り上げましたが、今週は「相場テーマ」の第3弾として「サイバーセキュリティ」関連銘柄をピックアップしてみました。企業業績が不透明で、相場全体も不安定な局面においては、注目されそうな「テーマ株」への投資が有効ではないかと思われます。
「サイバーセキュリティ」は数あるテーマの中でも、今後変化していく産業構造の中で欠かせない技術であり、重要なテーマとなる可能性があると思われます。
株式の格言に、「国策に売りなし」というのがあります。国が実行しようとしている政策によって追い風を受ける銘柄は買うべし、という意味です。国の政策ですから、税金が投入されたり、政策を行うための規制緩和が進行します。したがって、このテーマに沿った企業の行動半径が広がったり、多くの場合売上高が増加するメリットを享受できるわけです。
内閣サイバーセキュリティセンターがまとめた「わが国のサイバーセキュリティ戦略」によれば、コンピューターそしてインターネットの普及により、私たちの実際の空間の他に、サイバー空間という人工空間が経済社会の活動基盤になりつつあります。今後はあらゆるモノがネットワークに連接(IoT化)され、実空間とサイバー空間との融合が高度に深化した「連接融合情報社会」が到来することが予想されます。この社会は生産性の上昇をもたらす一方、同時にサイバー攻撃の被害規模や社会的影響が年々拡大し、脅威の更なる深刻化が想定されるとしています。
このような背景の下、「自由かつ、公正かつ安全なサイバー空間」を創出し、「経済社会の活力の向上および持続的発展」、「国民が安全で安心して暮らせる社会の実現」、「国際社会の平和、安全および我が国の安全保障」に寄与するために、「サイバーセキュリティ法案」が2014年に成立しています。
我が国では2020年に東京五輪を控えていますが、世界的に注目されるイベントであることから、サイバーセキュリティの確保は喫緊の課題でもあります(ロンドン五輪では2億回のサイバー攻撃があったとされている)。したがってサイバーセキュリティに関連する銘柄には、今後大きなビジネスチャンスが訪れるのではないかと思われます。
図1:重要インフラの情報セキュリティ対策に係る行動計画
- ※内閣官房、内閣サイバーセキュリティセンター「我が国のサイバーセキュリティ政策の概要」より
それでは具体的に、銘柄をピックアップしてみましょう。「新興株ウィークリー」では、当社の銘柄検索ツールを使い、「サイバー」、「ネットセキュリティ」、「情報セキュリティ」などのキーワードを入力し、「サイバーセキュリティ」関連銘柄を抽出してみました。また、弊社の「テーマキラー!」投資でも、今月の注目テーマとして「サイバーセキュリティ」を取り上げていますので、その銘柄も参考にしました。なお、範囲としては、東証マザーズ、JASDAQ銘柄に限定していますのでご注意ください。
*「テーマキラー!」投資に組み入れられている銘柄には、*印を付与しています
表1が、「新興株ウィークリー」が選んだ「サイバーセキュリティ」関連銘柄です。抽出された銘柄がかなり多数になったため、業績寄与が大きいと期待されるもの、会社側が「サイバーセキュリティ」を注力分野として取り組んでいるものを、「新興株ウィークリー」が選別しました。また、今期の会社側の営業利益予想で増益率の高い順に並べてみました。これらの「サイバーセキュリティ」関連銘柄が、2019年相場の主役の一つになる可能性は十分にあると考えられます。
表1:2019年に活躍期待の「サイバーセキュリティ」関連銘柄はコレ!?
取引 | チャート | ポート フォリオ |
コード | 銘柄名 | 株価(円) (1/22) |
予想営業増益率 (今期) |
ポイント |
---|---|---|---|---|---|---|---|
追加 | 4288 | アズジェント* | 1,824 | 黒字転換 | セキュリティソフトの輸入販売に特化したマーケティング会社 | ||
追加 | 3042 | セキュアヴェイル* | 992 | 362.0% | システムのセキュリティ運用・監視サービスやログ解析に特化 | ||
追加 | 3356 | テリロジー* | 1,137 | 20.5% | セキュリティシステム中心の製品輸入販売、システム構築が主体 | ||
追加 | 3697 | SHIFT | 4,775 | 16.7% | ソフトウェアのテストおよび品質保証に特化した会社 | ||
追加 | 3857 | ラック | 1,457 | 12.4% | 情報セキュリティ技術に特色有す、KDDIと資本提携 | ||
追加 | 3682 | エンカレッジ・テクノロジ* | 1,326 | 10.3% | コンプライアンス用のシステム証跡管理ソフトと保守作業に特化 | ||
追加 | 4386 | SIG | 703 | 2.3% | 旧住友金属系のSI会社、ネットワークセキュリティに注力中 | ||
追加 | 3692 | FFRI* | 3,815 | 2.3% | ネットで脅威となる標的型攻撃のセキュリティ対策を独自技術で開発 | ||
追加 | 4398 | ブロードバンドセキュリティ | 1,950 | 2.2% | クレジットカードのセキュリティ監査・脆弱性診断・情報漏対策が主体 |
- ※弊社検索ツール、各種資料等をもとにSBI証券が作成。銘柄名に*がついているものは、弊社の「テーマキラー!」の組み入れ銘柄を示しています。予想営業増益率は会社予想です。
東証マザーズ指数の1/22(火)の終値は930.68と1/15(火)の終値914.19から1.8%の上昇となりました。米中通商交渉でとりあえずの妥協点が見出されるのではないかとの期待や、FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策に対する姿勢がハト派に転じ、米国の利上げが一時停止されるのではとの観測が高まり、NYダウが堅調に推移していることが、日本株市場にも買い安心感となりました。
同じ期間の日経平均株価の上昇率は0.3%で、東証マザーズ指数はそれを上回る上昇率となりました。時価総額の大きい主要銘柄やバイオ関連株などの好調が目立ちました。
1/15(火)〜1/22(火)の主な個別銘柄の値動きでは、サンバイオ(4592)やメルカリ(4385)、ミクシイ(2121)などの主要銘柄が引き続き堅調でした。また、これまで大きく上げてきたそうせいグループ(4565)は反落となりました。この他では、先週大きく上げたRPAホールディングス(6572)は、3Qの決算発表が悪材料視され売られました。
この期間のJASDAQ市場は0.7%の上昇と、ほぼ日経平均株価並みの上昇率となりました。個別銘柄ではハーモニック・ドライブシステム(6324)が大幅続伸となりました。一方、年初好調だったワークマン(7564)は利食いに押されました。
東証マザーズ指数について
東証マザーズ市場は近い将来東証1部へのステップアップを視野に入れた成長企業向けの市場です。マザーズ指数は、マザーズ市場に上場する全銘柄の時価総額加重平均型の指数です。ただし、一部の時価総額の大きい銘柄の影響度が大きい点に注意を要します。ちなみに12月末のマザーズ市場の時価総額に占める、サンバイオのシェアは11.8%、メルカリが5.6%、ミクシィが5.4%などとなっています。
図2:東証マザーズ指数(日足)
図3:JASDAQ平均(日足)
- ※図2・図3ともに当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
表2:主要株式指標の騰落率(1/15〜1/22)
指数 |
終値(1/22) |
騰落率 |
---|---|---|
日経平均株価 |
20,622.91 |
0.3% |
東証マザーズ指数 |
930.68 |
1.8% |
JASDAQ平均株価 |
3,345.51 |
0.7% |
表3:主要新興市場銘柄の騰落率(1/15〜1/22)
コード |
銘柄 |
終値(1/22) |
騰落率 |
---|---|---|---|
マザーズ市場の時価総額上位銘柄 |
|
||
4592 |
サンバイオ |
11,000 |
7.3% |
4385 |
メルカリ |
2,160 |
4.0% |
7806 |
MTG |
4,740 |
2.4% |
2121 |
ミクシィ |
2,723 |
2.6% |
4565 |
そうせいグループ |
1,136 |
-2.7% |
JASDAQ市場の時価総額上位銘柄 |
|
||
2702 |
日本マクドナルドホールディングス |
4,820 |
1.8% |
6324 |
ハーモニック・ドライブ・システムズ |
3,540 |
17.6% |
7564 |
ワークマン |
7,510 |
-5.5% |
2782 |
セリア |
3,235 |
2.4% |
6425 |
ユニバーサルエンターテインメント |
3,445 |
1.0% |
直近上場銘柄・市場で話題の銘柄 |
|
||
3967 |
エルテス |
2,233 |
5.3% |
4593 |
ヘリオス |
1,923 |
-1.9% |
6572 |
RPAホールディングス |
3,185 |
-13.5% |
4384 |
ラクスル |
2,560 |
-4.1% |
6544 |
ジャパンエレベーターサービスホールディングス |
1,605 |
-6.7% |
- ※表2・表3はBloombergデータをもとにSBI証券が作成。騰落率は1/15(火)終値と1/22(火)終値の比較による。時価総額は12月末基準。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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