渋野日向子選手がゴルフの全英女子オープンで優勝しました。昨年プロテストに合格したばかりで、今年のシーズン初めは出られる試合が限定されていた状況でした。ところが国内でメジャーを含む2勝をあげ、全英の出場資格を得て、初めての海外の試合で結果を出しました。
最終日はいきなりダブルボギーを叩き、彼女の活躍もここまでかと半分あきらめ加減でTVを見ていたのですが、後半に入ってからの追い上げが素晴らしかったです。特に印象に残っているのは、彼女がリスクを恐れない攻めのゴルフを貫いたことです。優勝を決めた最終18番の強気のバーディーパットは、もし外れていたら2〜3mの難しいパットが残っていたと思われます。また、筆者が個人的にしびれたのは距離(260ヤード強)の短いパー4の12番ホール。池や川に囲まれた狭いグリーンのため、たいていの選手は最初から短いクラブで打っていき2オン狙いで攻めるのですが、彼女はトップに追いつくためにドライバーを強振し、1オンに成功し楽々バーディーを奪いました。この日彼女のドライバーは絶好調、風もややフォローだったことも考え、敢然とリスクを取りに行き、栄冠につなげました。投資家も学べる姿勢と言えないでしょうか。
東京株式市場は、米中貿易摩擦の深刻化、円高進行などを懸念して大幅に調整しています。しかし、8/2(金)のマーケットフラッシュでも述べたように、テクニカル的には売られ過ぎの感もあるうえ、米中対立の向こうには、日本企業が復権するシナリオも残っており、過度に悲観する必要はないと思われます。そこで今回の「新興株ウィークリー」では、株式市場の急落に際し、市場要因で売り込まれた新興株銘柄を、渋野選手同様に?リスク承知で狙うべくスクリーニングしてみました。皆様の銘柄選択のご参考にしていただければ幸いです。
新興市場の特性として、東証1部との比較では、一般的に流動性が低く、成長企業が多いためPERを始めとするバリュエーションが高くなりやすいということが指摘されます。このため、米中貿易摩擦の激化懸念など株式市場にとっての不透明要素が現われ、株価が下がるケースでは新興市場のパフォーマンスは日経平均などに比べ割り負けするケースが多くなります。
ただし、その逆のケースでは新興市場の株価パフォーマンスは日経平均を上回るケースが多くなります。米中の貿易摩擦は当面解決が難しいと思われますが、テクニカル的には日経平均はやや下げすぎた面が指摘されます。8/6(火)のマーケットフラッシュで指摘したように、日本企業の決算発表が一段落する8/13(火)以降は、株式市場も落ち着きを取り戻し、株式市場の底入れのタイミングも近いのではないでしょうか?
そこで今週の「新興株ウィークリー」では、新興市場のリバウンド候補銘柄をピックアップしてみることにしました。それでは早速スクリーニングにより、銘柄を抽出してみたいと思います。今回の条件は、下記の5項目です。
(1)東証マザーズまたはJASDAQの上場銘柄であること
(2)年初来高値から株価が40%以上下落していること
(3)今期の会社側経常利益予想が10%以上の増益であること
(4)直近四半期までの累計経常利益の進捗率が会社予想経常利益(年間)に対して標準以上であること
※1Q決算なら25%、2Q決算なら50%、3Q決算なら75%以上
※なお四半期決算がない場合は、前期本決算の増益率が直前の会社予想増益率を上回っていること
(5)時価総額が100億円以上であること
上記の全条件を満たす銘柄を(2)の条件の株価下落率が大きい順に並べたものが表1となります。
表1:急落相場で売られたリバウンド狙いの新興株銘柄はコレ!?
取引 | チャート | ポート フォリオ |
コード | 銘柄名 | 株価(円) 8月6日 |
今期会社予想 経常増益率 (%) |
年初来高値からの 株価下落率 (%) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
追加 | 4425 | Kudan | 9,160 | 106.8 | 63.6 | ||
追加 | 4424 | Amazia | 3,255 | 266.1 | 48.9 | ||
追加 | 6033 | エクストリーム | 2,066 | 17.5 | 48.9 | ||
追加 | 7325 | アイリックコーポレーション | 1,232 | 106.4 | 45.0 | ||
追加 | 3356 | テリロジー | 805 | 13.5 | 38.8 | ||
追加 | 2146 | UTグループ | 2,032 | 21.2 | 38.3 | ||
追加 | 4431 | スマレジ | 2,745 | 19.9 | 38.1 | ||
追加 | 4446 | Link- U | 3,860 | 79.2 | 37.0 | ||
追加 | 7048 | ベルトラ | 1,185 | 71.5 | 36.0 | ||
追加 | 4420 | イーソル | 1,404 | 16.5 | 35.6 | ||
追加 | 3692 | FFRI | 3,450 | 20.9 | 35.2 | ||
追加 | 7068 | フィードフォース | 2,300 | 582.4 | 35.1 |
- ※表1は会社発表資料、当社スクリーニングツール等よりSBI証券が作成。
それでは表1の5銘柄について、チャートと注目ポイントを簡単にご紹介したいと思います。
Kudan(4425)は、2018年12月にマザーズに上場したコンピューターやロボットなどの機械に、視覚を付与する人工知覚の研究開発会社です。英国に研究開発拠点を有し、日本法人が管理業務および市場開拓を行っています。AI(人工知能)の発展を受けて、機械と人工知覚を融合することにより、様々な分野の製品への応用が期待されます。とりわけ、自動運転、IoTなどの分野での市場拡大が期待できそうです。新規顧客の開拓により、前3月期に営業損益で黒字転換を達成。今期、会社側は経常利益で倍増を計画しています。成長ストーリーが描きやすい事業内容のため、新規公開後に人気化し2月末には25,000円台まで株価は上昇しました。しかし予想PERで現在でも300倍程度の評価となっていることもあり株価は調整しています。ただし、前期実績で黒字転換を果たし、業績がテイクオフ局面を迎えてきたため、株価の転換点も近いように思われます。
*8/9(金)に決算発表予定
Amazia(4424)は、2018年12月にマザーズに上場した会社で漫画アプリの「マンガBANG!」を運営しています。このアプリは新作や名作、様々なジャンルの作品を取り揃えており、基本は無料購読ですが、広告収入や一部コンテンツの小額課金で成り立っているビジネスモデルです。他にもアプリの「マンガEpic!」では、マンガ作家の投稿を受け付けており、マンガ家発掘育成にも努めています。「マンガBANG!」のダウンロード数増加に伴い、大手出版社との取引増加により業績が急拡大しています。2Q決算発表前の5月に年度予想の大幅な上方修正。第3四半期時点で経常利益の進捗率は104.6%に達しました。将来的には同種のサービスを海外でも展開する計画を持っています。
*8/7(水)に決算発表
エクストリーム(6033)は、2014年にマザーズに上場しています。ゲーム開発業に対する技術者派遣や受託開発業務が主力です。クリエイティブな開発スキルを持つデジタルクリエイターのプロダクションといえそうです。自社でのゲーム開発も行っています。近年はゲーム以外のWEB系のソリューション事業が拡大しており、収益の安定性に貢献しそうです。中でも今年5月の順番予約サイト「EPARK」(登録会員約2,000万人、提携店舗約10万店の人気施設の予約・順番受付サイト)との資本業務提携が注目されます。スマホのゲームアプリ「ラングリッサー」の海外でのヒット、技術者派遣単価の上昇などで業績は好調です。
*8/14(水)に決算発表予定
アイリックコーポレーション(7325)は、2018年9月にマザーズに上場しています。生損保の代理店として創業しましたが、独自のワンストップ型「保険分析・検索システム」を開発し、来店型の保険ショップ「保険クリニック」を展開中です。現在直営店を34店舗(19/5月末時点)展開している他、全国に153のフランチャイズ方式の店舗を有しています。店舗網の拡大により業績は順調に拡大しており、3Q時点で年間予想利益の97%を達成済みで19/6月期は経常利益で倍増以上で着地の見通しです。
*8/14(水)に決算発表予定
ベルトラ(7048)は、2018年12月にマザーズに上場しています。主力事業は、インターネットによる海外旅行予約サイトの運営です。ただし通常のパッケージツアーではなく、現地でのオプショナルツアーに特化しているのが特徴です。またツアー自体も、現地体験型のユニークな企画が多く、現地での直前の予約にも対応できるのが特徴です。ニッチな業態のうえ、今年のGW「10連休」関連銘柄との思惑もあり、株価は上場以来、始値の3.5倍まで上昇しましたが、その後は反動で下落しており、バリュエーション面での割高感は修正されてきました。19/12月期、会社側は71.5%経常増益の計画ですが、1Q時点で年度予想の約4割の進捗となっており、上方修正の可能性も出ています。
*8/13(火)に決算発表予定
図1:Kudan(4425)・日足
図2:Amazia(4424)・日足
図3:エクストリーム(6033)・日足
図4:アイリックコーポレーション(7325)・日足
図5:ベルトラ(7048)・日足
- ※図1から5は当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
東証マザーズ指数の8/6(火)終値は871.95と、7/30(火)終値903.28から3.5%の下落となりました。JASDAQ平均も2.9%の下落でした。ただし日経平均は5.2%の大幅下落でしたから、マザーズ指数、JASDAQ平均ともに日経平均に対し優位な値動きとなりました。
マザーズ市場では、時価総額の大きいサンバイオ(4592)やPKSHA Technology(3993)などが下落しましたが、そーせいグループ(4565)やティーケーピー(3479)などが上昇とまちまちな動きとなりました。その他の個別銘柄では、エルテス(3967)、MTG(7806)、グッドスピード(7676)、ヘリオス(4593)などが軒並み大幅に下落しました。このうち、そーせいグループは8/5(月)に大手製薬メーカーである武田(4502)と戦略的提携を結んだことが好感され、大幅高になったことが影響しました。
JASDAQ市場では、時価総額が大きいハーモニック・ドライブ・システムズ(6324)が景気敏感株として捉えられたのか下落が目立ちました。逆にワークマン(7564)の株価は堅調でした。
※東証マザーズ指数について:東証マザーズ市場は近い将来東証1部へのステップアップを視野に入れた成長企業向けの市場です。マザーズ指数は、マザーズ市場に上場する全銘柄の時価総額加重平均型(浮動株調整後)の指数です。ただし、一部の時価総額の大きい銘柄の影響度が大きい点に注意を要します。ちなみに7月末のマザーズ市場の時価総額に占めるメルカリ(4385)のシェアは7.9%、そーせいグループ(4565)が7.5%、ミクシィ(2121)、サンバイオ(4592)がそれぞれ4.5%、などとなっています。
図6:東証マザーズ指数(日足)
図7:JASDAQ平均(日足)
- ※図6、図7ともに当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
表2:主要株式指標の騰落率(7/30〜8/6)
指数 |
終値(8/6) |
騰落率 |
---|---|---|
日経平均株価 |
20,585.31 |
-5.2% |
東証マザーズ指数 |
871.95 |
-3.5% |
JASDAQ平均株価 |
3,371.79 |
-2.9% |
表3:主要新興市場銘柄の騰落率(7/30〜8/6)
コード |
銘柄 |
終値(8/6) |
騰落率 |
---|---|---|---|
マザーズ市場の時価総額上位銘柄 |
|
||
4385 |
メルカリ |
2,855 |
-2.2% |
4565 |
そーせいグループ |
2,695 |
5.1% |
3993 |
PKSHA Technology |
5,770 |
-2.5% |
4592 |
サンバイオ |
3,150 |
-8.6% |
3479 |
ティーケーピー |
5,180 |
3.0% |
JASDAQ市場の時価総額上位銘柄 |
|
||
2702 |
日本マクドナルドホールディングス |
4,870 |
-0.8% |
6324 |
ハーモニック・ドライブ・システムズ |
3,810 |
-10.5% |
7564 |
ワークマン |
5,300 |
4.7% |
6425 |
ユニバーサルエンターテインメント |
3,260 |
-5.9% |
4816 |
東映アニメーション |
4,580 |
-1.2% |
直近上場銘柄・市場で話題の銘柄 |
|
||
3967 |
エルテス |
1,646 |
-4.9% |
4593 |
ヘリオス |
1,331 |
-8.1% |
7676 |
グッドスピード |
2,994 |
-4.5% |
4384 |
ラクスル |
3,670 |
-4.4% |
7806 |
MTG |
1,045 |
-9.8% |
- ※表2・表3はBloombergデータをもとにSBI証券が作成。騰落率は7/30(火)終値と8/6(火)終値の比較による。時価総額は7月末基準。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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