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新興市場の売られ過ぎ銘柄を抽出!?

2019/10/30
投資情報部 長谷川 稔

先週末に日本で初めてのPGAツアー(米国男子プロゴルフ)が開催されました。大会名は「ZOZOチャンピオンシップ」で、文字通りZOZO(3092)の前社長である前澤氏がスポンサーとして名乗りを上げた大会です。賞金総額は11億円(うち優勝賞金約2億円)で、日本男子ゴルフの最大のビッグトーナメントである「日本オープン」の賞金総額2.1億円と比較して、その規模の大きさが分かります。タイガー・ウッズ、マキロイ、スピースなど世界のトッププロが参加したため、チケット8万枚は即座に完売しました。結果は既報の通りタイガー・ウッズが優勝し、ツアー通算で実に82勝目を達成しました。

ところで、大会開催を決めたZOZOの前澤氏は、その後持ち株をZホールディングス(旧社名;ヤフー、4689)に売却することを決め、ZOZOの経営からは引退しています。筆者は、前澤氏がトーナメントでどう取り扱われるのか興味深く見ていましたが、前澤氏は大会の名誉会長に収まって、表彰式では最初にスピーチを行いました。大会前のプロアマでは、Zホールディングスの実質的なオーナーである孫正義氏と前澤氏がタイガー・ウッズと3人でプレーしていました。米国のPGAとは複数年契約(6年)との事ですので、来年のトーナメントで前澤氏の処遇はどうなっているのでしょうか?

10/29(火)に日経平均株価は一時2万3,000円台に乗せるなど回復基調にあるのに対し、新興株市場では特にマザーズ市場の低迷が目立っています。ただし、さすがに先週あたりから反発の機運を見せてきました。JASDAQ平均株価は、年初来高値の水準を上回ってきました。そこで今週の「新興株ウィークリー」では、「新興市場の売られすぎ銘柄を抽出!?」と題し、今後の株価反発が期待できそうな銘柄に注目してみることにしました。皆様の投資のご参考になれば幸いです。

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1新興市場の売られ過ぎ銘柄を抽出!?

新興市場の特性として、東証1部との比較では、一般的に流動性が低く、成長企業が多いためPERを始めとするバリュエーションが高くなりやすいということが指摘されます。このため、米中貿易摩擦の激化懸念など株式市場にとっての不透明要素が現われ、株価が下がるケースでは新興市場のパフォーマンスは日経平均などに比べ劣位となるケースが多くなります。下の図1は、過去6ヵ月のマザーズ指数と日経平均株価を比較したものですが、日経平均に比べマザーズ指数が徐々に割り負けて、過去6ヵ月で日経平均が約5%上昇しているのに対し、マザーズ指数は逆に8%近く下落しています。

ただし、一旦相場が反転する場合には、新興市場の株価パフォーマンスは日経平均を上回るケースが多くなります。現にここ1週間の値動きでは、マザーズ指数が日経平均を久しぶりにアウトパフォームしています。米中の貿易摩擦に緩和観測が出てきたうえ、マザーズ市場の出遅れ感が高まってきたためだと思われます。したがって今後の相場展開は、長らくお休みしてきた新興株市場のリバウンドが優勢になる可能性もあるのではないでしょうか。

図1 日経平均とマザーズ指数のパフォーマンス比較

  • ※図1は当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。6ヶ月前の株価を100として指数化したもの。

そこで今週の「新興株ウィークリー」では、新興市場のリバウンド候補銘柄をピックアップしてみることにしました。それでは早速スクリーニングにより、銘柄を抽出してみたいと思います。今回の条件は、下記の5項目です。

(1)東証マザーズまたはJASDAQの上場銘柄であること
(2)過去52週の高値から株価が30%以上下落していること
(3)前期実績のROE10%以上であること
(4)直近四半期までの累計経常利益の進捗率が会社予想経常利益(年間)に対して標準以上であること
※1Q決算なら25%、2Q決算なら50%、3Q決算なら75%以上
※なお四半期決算がない場合は、前期本決算の増益率が直前の会社予想増益率を上回っていること
(5)前期実績および今期の会社予想経常利益がともに増益であること
上記の全条件を満たす銘柄を(2)の条件の株価下落率が大きい順に並べたものが表1となります。

表1 新興市場の売られすぎ銘柄はコレ!?

取引 チャート ポート
フォリオ
コード 銘柄名 株価(円)
10月29日
過去52週高値
株価下落率
(%)
今期会社予想
経常増益率
(%)
6033 6033 6033 6033 エクストリーム 2,011 -67.0 17.5
8938 8938 8938 8938 グロームホールディングス 767 -61.1 26.4
6548 6548 6548 6548 旅工房 1,273 -47.0 2.7
9270 9270 9270 9270 SOU 2,132 -43.0 14.9
3633 3633 3633 3633 GMOペパボ 2,464 -42.5 84.6
7325 7325 7325 7325 アイリックコーポレーション 1,365 -37.8 16.3
3300 3300 3300 3300 AMBITION 1,032 -30.8 2.6
  • ※当社Webの銘柄検索機能、各社の公表資料等をもとにSBI証券が作成。GMOペポパの増益率は前期が単独、今期予想が連結との比較です。

2抽出銘柄のポイント

それでは表1で抽出された銘柄群のうち数銘柄について、チャートと注目ポイントを簡単にご紹介したいと思います。

エクストリーム(6033)は、2014年にマザーズに上場しています。ゲーム開発業に対する技術者派遣や受託開発業務が主力です。クリエイティブな開発スキルを持つデジタルクリエイターのプロダクションといえそうです。自社でのゲーム開発も行っています。近年はゲーム以外のWEB系のソリューション事業が拡大しており、収益の安定性に貢献しそうです。中でも今年5月の順番予約サイト「EPARK」(登録会員約2,000万人、提携店舗約10万店の人気施設の予約・順番受付サイト)との資本業務提携が注目されます。スマホのゲームアプリ「ラングリッサー」の海外でのヒット、技術者派遣単価の上昇などで業績は好調です。

SOU(9270)は、2018年3月にマザーズに上場しています。2011年に設立されたブランド品や骨董品の買取り、販売会社です。社長の嵜本氏は元ガンバ大阪所属のJリーガーとして有名です。同業にコメ兵(2780)や大黒屋HD(6993)などがありますが、同社の販売先は消費者ではなく、大半が自社によるオークションを中心とするルートで同業他社への販売である点が特徴です。利益率が高いうえ、オークションの落札率が90%以上と高く、在庫リスクも軽減されるビジネスモデルです。買取店舗網の拡大に加え、専用アプリの「miney」を開発している点も注目されます。既存店の仕入れが堅調なうえ、新規出店による効果から、業績は順調です。

GMOペパボ (3633)は、2008年にJASDAQに上場しています。GMOインターネット(9449)の子会社で、個人向けのレンタルサーバーのサービスが主な事業内容です。全国商工会連合会と包括連携協定を締結しています。個人のネット店舗の立ち上げや販売支援事業が成長しています。今期はEC支援事業が好調な上に、既存のレンタルサーバー事業もコスト削減策が寄与しており好調です。2Q決算の年間予想に対する進捗率は54.2%となっています。

アイリックコーポレーション(7325)は、2018年9月にマザーズに上場しています。生損保の代理店として創業しましたが、独自のワンストップ型「保険分析・検索システム」を開発し、来店型の保険ショップ「保険クリニック」を展開中です。現在直営店を38店舗(19/6月末時点)展開しているほか、全国に159のフランチャイズ方式の店舗を有しています。店舗網の拡大により業績は順調に拡大しており、今期会社側は16.3%経常増益を予想しています。

図2:エクストリーム(6033)・日足

図3:SOU(9270)・日足

図4:GMOペパボ (3633)・日足

図5:アイリックコーポレーション(7325)・日足

  • ※図2から図5は、当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。

2【新興市場Now】マザーズ指数が急反発、JASDAQは年初来高値更新

東証マザーズ指数の10/29(火)終値は877.30と、10/21(火)終値845.21から3.8%の急反発となりました。JASDAQ平均は10/29(火)こそ日足で陰線となりましたが、それまで7営業日連続上昇で2.1%の続伸でした。日経平均は1.9%の続伸でしたから、マザーズ指数、JASDAQ平均ともに日経平均に対して、優位な値動きとなりました。

マザーズ市場の時価総額の大きい銘柄は、サンバイオ(4592)、メルカリ(4385)を筆頭に殆どが上昇しました。これまでは大型株への資金シフトの流れが続いてきましたが、ここにきてマザーズ市場の出遅れ感が増大するにつれ、投資家の関心が高まってきたことが背景と思われます。

JASDAQ市場でも時価総額が大きい上位3銘柄の日本マクドナルドホールディングス(2702)、ハーモニック・ドライブ・システムズ(6324)、ワークマン(7564)が揃って上昇しました。ただし東映アニメーション(4816)は、10/25(金)に好調な2Q決算を発表しましたが、材料出尽くし感と、アナリストの格下げで下落しました。

※東証マザーズ指数について:東証マザーズ市場は近い将来東証1部へのステップアップを視野に入れた成長企業向けの市場です。マザーズ指数は、マザーズ市場に上場する全銘柄の時価総額加重平均型(浮動株調整後)の指数です。ただし、一部の時価総額の大きい銘柄の影響度が大きい点に注意を要します。ちなみに9月末のマザーズ市場の時価総額に占めるそーせいグループ(4565)およびメルカリ(4385)のシェアがそれぞれ7.4%づつ、サンバイオ(4592)が5.4%、ミクシィ(2121)が4.5%などとなっています。

図6:東証マザーズ指数(日足)

https://sbisec.akamaized.net/sbisec/images/base/g_market_report_dom_em_weekly_191030_11.gif

図7:JASDAQ平均(日足)

https://sbisec.akamaized.net/sbisec/images/base/g_market_report_dom_em_weekly_191030_12.gif
  • ※図6、図7ともに当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。

表2:主要株式指標の騰落率(10/21〜10/29)

指数 終値(10/29) 騰落率
日経平均株価 22,974.1 1.9%
東証マザーズ指数 877.3 3.8%
JASDAQ平均株価 3,508.8 2.1%

表3:主要新興市場銘柄の騰落率(10/21〜10/29)

コード 銘柄 終値(10/29) 騰落率
マザーズ市場の時価総額上位銘柄
4385 メルカリ 2,542 9.5%
4592 サンバイオ 4,375 15.0%
4565 そーせいグループ 2,472 5.2%
2121 ミクシィ 2,131 1.0%
3479 ティーケーピー 4,840 0.6%
JASDAQ市場の時価総額上位銘柄
2702 日本マクドナルドホールディングス 5,450 2.6%
6324 ハーモニック・ドライブ・システムズ 5,150 1.4%
7564 ワークマン 7,900 6.2%
6425 ユニバーサルエンターテインメント 3,675 -0.5%
4816 東映アニメーション 5,030 -7.4%
直近上場銘柄・市場で話題の銘柄
3967 エルテス 1,794 -3.3%
4593 ヘリオス 1,270 2.3%
7676 グッドスピード 3,075 -1.0%
3923 ラクス 1,614 3.8%
7806 MTG 1,032 3.1%
  • ※表2・表3はBloombergデータをもとにSBI証券が作成。騰落率は10/21(月)終値と10/29(火)終値の比較による。時価総額は9月末基準。
  • ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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