桜並木の上をまたぐ歩道橋を通って通勤するので、最近は蕾(つぼみ)を観察するのが日課になっています。蕾はまだ固そうですが、しっかりと自己主張をするようになり、その存在が日に日に大きくなってきました。早ければ3月第2週の週末(14、15日)には開花宣言が出されているかもしれません。しかし新型コロナウイルスの影響で、今年のお花見シーンはどうなるのでしょうか?一日も早い収束を願ってやみません。
3/3(火)付けの、「225の『ココがポイント!』」で述べているように、日経平均株価は2/21(金)〜2/28(金)に5営業日連続安となり、2/28(金)および3/1(月)には21,000円を割り込む場面もありました。これにともなって新興市場の株価は、流動性の乏しさから日経平均よりも大きな下落率となっています。しかし、日経平均株価は大きく下げたことで、テクニカル的には25日移動平均線からのかい離率、騰落レシオ、PBR(株価純資産倍率)1倍水準、RSI(相対力指数)など多くの指標面で売られ過ぎを示唆する材料が増え、値頃感が台頭してきたように思います。
そこで今回の「新興株ウィークリー」では、株価が大きく下げた銘柄の中から、比較的バリュエーション面で割安感が強く、業績面での不安が小さそうな銘柄をピックアップしてみました。これらの銘柄は株価が反発局面に入るとするならば、相対的に大きなリバウンドが期待できるのではないでしょうか。
それでは早速銘柄をピックアップしてみます。冒頭でご説明したように、今回の「新興株ウィークリー」は、株価の大きく下落した銘柄から、比較的バリュエーション面で割安感が強く、業績面での不安が小さそうな銘柄を抽出してみました。
今回のスクリーニング条件は以下の4点です。
(1)東証マザーズまたはJASDAQの上場銘柄で、時価総額が100億円以上あること
(2)過去52週の高値から3/3(火)まで株価が40%以上下落していること(ちなみにマザーズ指数の下落率は約25%)(3)PBRが2.5倍以下かつPCFR(株価キャッシュフロー倍率※)が20倍以下
(4)今期の会社予想経常利益が増益で、四半期進捗率が概ね標準に近い(1Qで20%、2Qで40%、3Qで60%以上を可とした)か、それ以上であること。また減益予想でも進捗率が標準を上回っているものは可とした。
これらの条件を満たす銘柄を、コード番号順に掲載したものが以下の表1です。
※PCFR(株価キャッシュフロー倍率)は「株価」を「1株当たりキャッシュフロー」で割ることにより求められます。ある企業の「キャッシュフロー」は税引き後利益に減価償却費を足した数字として計算されます。
表1 リバウンド期待銘柄はコチラ!!
取引 | チャート | ポート フォリオ |
コード | 銘柄名 | 株価(円) 3月3日 |
株価下落率 (%) |
PBR (倍) |
PCFR |
2385 | 2385 | 2385 | 2385 | 総医研ホールディングス | 413 | -43.9 | 2.16 | 18.4 |
2415 | 2415 | 2415 | 2415 | ヒューマンホールディングス | 942 | -56.4 | 0.96 | 4.8 |
2469 | 2469 | 2469 | 2469 | ヒビノ | 1,447 | -50.2 | 1.46 | 4.3 |
3723 | 3723 | 3723 | 3723 | 日本ファルコム | 1,068 | -42.3 | 1.81 | 11.0 |
4699 | 4699 | 4699 | 4699 | ウチダエスコ | 3,210 | -48.7 | 2.13 | 16.5 |
4931 | 4931 | 4931 | 4931 | 新日本製薬 | 1,115 | -41.6 | 1.89 | 10.7 |
6834 | 6834 | 6834 | 6834 | 精工技研 | 2,300 | -41.3 | 0.92 | 8.3 |
6864 | 6864 | 6864 | 6864 | エヌエフ回路設計ブロック | 1,891 | -41.6 | 1.31 | 11.1 |
6890 | 6890 | 6890 | 6890 | フェローテックホールディングス | 662 | -51.0 | 0.49 | 2.8 |
7963 | 7963 | 7963 | 7963 | 興研 | 2,100 | -52.1 | 1.07 | 11.7 |
9698 | 9698 | 9698 | 9698 | クレオ | 1,280 | -41.4 | 1.82 | 12.0 |
9707 | 9707 | 9707 | 9707 | ユニマット リタイアメント | 1,198 | -43.5 | 0.62 | 2.5 |
- ※当社スクリーニング機能、各社資料等をもとにSBI証券が作成。株価下落率は過去52週の高値からの下落率です。
それでは表1で抽出された銘柄群のうち数銘柄について、チャートとポイントを簡単にご紹介します。
ヒビノ(2469);音響や映像機材の貸出しと設置・オペレーション業務を行う会社です。数多くのミュージシャンのコンサートを手がけた実績を持ち、日本のミュージックシーンには欠かせない会社と言ってよいでしょう。欧米やアジアにも進出しています。新型コロナウイルスによる業績懸念から過去2ヵ月で株価はほぼ半値となりましたが、感染拡大が収束すれば見直し買いが入る可能性が高いと思われます。今年から株主優待制度を拡充し100株以上の株主には2,000ポイントの株主優待ポイントが贈呈され、地域の名産品や雑貨、クオカード、同社運営のライブハウスでのミュージックチャージなどと交換できます。
ウチダエスコ(4699);内田洋行(8057)系のパソコンネット保守などITCサービスを主力事業とする会社です。7月期決算ですが、3/4(水)に2Q決算を発表し年間の会社予想利益を増額修正しています。学校市場向け端末販売好調やWindows7パソコンの更新需要が背景です。2Qの上方修正発表後の数値で考えても進捗率は78%と高く、さらなる上方修正の期待も持てそうです。働き方改革を受けてテレビ会議システム導入のサポートなど、オフィスの近代化投資のメリットも享受できそうです。
精工技研(6834);2000年にJASDAQに上場しています。光通信関連製品に特化したメーカーです。光通信部品(光コネクタ、フェルールなど)や光コネクタ研磨機、光学レンズなどを手がけていますが、特に光コネクタ研磨機ではグローバルスタンダードを握っている会社です。同社の製品は中期的には5G投資関連や先進運転支援システム(ADAS)向けに高い成長が期待できそうです。設備投資の減速懸念から株価は大きく下落していますが、現状のPBR1倍割れは、押し目買いのチャンスに思われます。
フェローテックHLDG(6890);半導体製造工程において使用される、治具・消耗品のマテリアル製品(石英・セラミックス・シリコンパーツ等)と半導体の材料であるシリコンウエーハを販売している会社です。半導体装置向けの真空シールでは、世界シェア6割を有しています。今期業績は半導体業界向けが調整局面に入り減益見通しで、株価は低迷していますが、現在のPBR0.49倍、PER10倍割れは底値圏の水準ではないでしょうか。
ユニマット リタイアメント(9707);ユニマットグループの傘下企業で、多機能型介護施設の「そよ風」を主体に全国に291の拠点、616事業所(2019年9月末時点)を有しています。デイケアやショートステイが主体ですが、有料の老人ホーム、サービス付高齢者住宅等も運営しています。コーヒー店などの飲食事業も行っています。今期はシステム投資や新規物件の費用増から収益は伸び悩んでいますが、PBR0.6倍、PER5.2倍程度の株価はかなり割安に思われます。
図1 ヒビノ(2469)・日足
図2 ウチダエスコ(4699)・日足
図3 精工技研(6834)・日足
図4 フェローテックHLDG(6890)・日足
図5 ユニマット リタイアメント(9707)・日足
- ※図1から図5は、当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
東証マザーズ指数の3/3(火)終値は724.61と、2/25(火)終値798.36に対して9.2%の急落となりました。JASDAQ平均も6.9%の大幅下落となりました。同じ期間の日経平均は6.7%の下落だったので、マザーズ指数は日経平均に対し劣位に推移しました。新型コロナウイルスの感染拡大から世界的に株価が下落基調となりましたが、日経平均に比べ、流動性の小さいマザーズ市場はこうした局面では割り負けやすい傾向にあります。
マザーズ市場の時価総額上位では引き続きティーケーピー(3479)の大幅な下落が目立ちました。新型コロナウイルスの感染拡大によりセミナーや説明会など多人数の集客行事が手控えられ、業績に悪影響が出るのではないかとの観測が背景です。逆にミクシィ(2121)は小幅下落でしたが相対的には堅調でした。PBRおよび配当利回りが下値を抑制している模様です。それ以外の主力銘柄では、エルテス(3967)、サンバイオ(4592)、MTG(7806)などの下落が目立ちました。
JASDAQ市場ではワークマン(7564)の下げがやや目立ちました。3/3(火)に2月の月次売上高で既存店売上が前年同月比27.3%増というニュースが流れましたが、小幅上昇にとどまりました。このほかでは、日本マクドナルドホールディングス(2702)、ハーモニック・ドライブ・システムズ(6324)などの主力銘柄が軒並み5〜6%程度の下落となりました。
※東証マザーズ指数について:東証マザーズ市場は近い将来東証1部へのステップアップを視野に入れた成長企業向けの市場です。マザーズ指数は、マザーズ市場に上場する全銘柄の時価総額加重平均型(浮動株調整後)の指数です。ただし、一部の時価総額の大きい銘柄の影響度が大きい点に注意を要します。ちなみに1月末のマザーズ市場の時価総額に占める構成比は、メルカリ(4385)が5.7%、そーせいグループ(4565)が5.5%、ミクシィ(2121)が3.3%、ジーエヌアイグループ(2160)が3.2%などとなっています。
図6:東証マザーズ指数(日足)
図7:JASDAQ平均(日足)
- ※図6、図7ともに当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
表2:主要株式指標の騰落率(2/25〜3/3)
指数 | 終値(3/3) | 騰落率 | |
日経平均株価 | 21,082.73 | -6.7% | |
東証マザーズ指数 | 724.61 | -9.2% | |
JASDAQ平均株価 | 3,390.90 | -6.9% |
表3:主要新興市場銘柄の騰落率(2/25〜3/3)
コード | 銘柄 | 終値(3/3) | 騰落率 |
マザーズ市場の時価総額上位銘柄 | |||
4385 | メルカリ | 2,286 | -6.3% |
3923 | ラクス | 1,517 | -5.7% |
3479 | ティーケーピー | 2,438 | -19.8% |
4565 | そーせいグループ | 1,681 | -12.5% |
2121 | ミクシィ | 1,742 | -3.7% |
JASDAQ市場の時価総額上位銘柄 | |||
7564 | ワークマン | 7,170 | -8.3% |
2702 | 日本マクドナルドホールディングス | 4,785 | -6.2% |
6324 | ハーモニック・ドライブ・システムズ | 4,790 | -4.6% |
6425 | ユニバーサルエンターテインメント | 2,938 | -7.6% |
4816 | 東映アニメーション | 4,410 | -5.4% |
直近上場銘柄・市場で話題の銘柄 | |||
3967 | エルテス | 1,775 | -13.9% |
4593 | ヘリオス | 1,724 | -3.7% |
6027 | 弁護士ドットコム | 4,330 | -5.6% |
4592 | サンバイオ | 1,742 | -12.3% |
7806 | MTG | 694 | -13.1% |
- ※表2・表3はBloombergデータをもとにSBI証券が作成。騰落率は2/25(火)と3/3(火)終値の比較による。時価総額は1月末基準。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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