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不況局面に抵抗力のある割安キャッシュリッチ銘柄をチェック!!

2020/4/15
投資情報部 長谷川 稔

マスメディアでは、新型コロナウイルスのニュースが引きも切らず流れています。世界の経済活動は急速に縮小しているとみられます。一日も早く、ウイルスの感染拡大が収束することが望まれます。

最近の経済ニュースで、筆者が意外だと思った一つは、トヨタ自動車(7203)が3月末に計1兆円の「コミットメントライン」を設定したことです。「コミットメントライン」とは銀行と企業があらかじめ契約した期間・融資枠の範囲内で、企業の請求によって銀行が融資を約束する契約のことです。分かりやすく言えば、「コミットメントライン」契約を締結しておけば、企業がいざという時に必要な資金をいつでもその範囲内で借入することができる契約です。もちろん実際にお金を借入れなくても、コミットメントフィー(手数料)を支払う必要があります。

トヨタ自動車といえば、純資産21兆円超、5兆円以上の現預金を有する(2019年12月末)実質無借金の優良企業です。コロナウイルスの感染拡大で、いくら自動車の生産が滞っているとはいえ借金の可能性を想定しているとは驚きでした。いかにトヨタ自動車とはいえ、売上高が急減すると、運転資金が欠乏する恐れがあるということでしょうか。

ということは、財務基盤が脆弱で手元資金が乏しい会社は、現在のような厳しい事業環境が続けば、キャッシュ不足=経営危機に陥る可能性があるということです。

そこで今回の「新興株ウィークリー」では、こうした厳しい経営環境に耐えうる「キャッシュリッチ」銘柄にスポットを当て、さらにPBRでみて割安な銘柄を抽出してみました。皆さまの投資のご参考になれば幸いです。

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1割安「キャッシュリッチ銘柄」をピックアップ?!

それでは早速銘柄をピックアップしてみましょう。当社Webサイトの「スクリーニング(銘柄条件検索)」機能を使って抽出してみます。

条件は以下のとおりです。なお、キャッシュ(現預金)の総資産に占める比率があれば一番良いのですが、残念ながらそのものズバリの数字がないため、PCFR(株価キャッシュフロー倍率)および有利子負債自己資本比率(有利子負債が自己資本に占める割合)で代用してみました。

(1)東証マザーズまたはJASDAQの上場銘柄で、時価総額が50億円以上であること

(2)PCFR(株価キャッシュフロー倍率)が5倍以下であること

(3)有利子負債自己資本比率が10%以下であること

(4)PBRが1倍以下であること

このような条件を基にピックアップされた銘柄が下の表1の銘柄群となりました。なお、掲載はコード番号順としました。抽出された銘柄を見てみると、業態がニッチで高シェアを有する企業が多いように思います。高シェアを背景に高収益を達成することができ、その結果として財務内容が優秀になるという循環でしょうか。

こうした銘柄は、現在のような世界的な不況期にも耐えるだけの体力を有するのはもちろん、キャッシュに注目した他の企業や投資家の買収対象としてもマークされる可能性があります。

表1 割安「キャッシュリッチ銘柄」はコチラ!?

取引 チャート ポート
フォリオ
コード 銘柄名 株価(円)
4月14日
PCFR
(倍)
1381 1381 1381 1381 アクシーズ 2,290 4.97
1770 1770 1770 1770 藤田エンジニアリング 650 4.57
2497 2497 2497 2497 ユナイテッド 859 2.66
5695 5695 5695 5695 パウダーテック 3,050 4.59
6677 6677 6677 6677 エスケーエレクトロニクス 975 1.44
6919 6919 6919 6919 ケル 738 3.87
7264 7264 7264 7264 ムロコーポレーション 920 2.09
7435 7435 7435 7435 ナ・デックス 631 3.66
7539 7539 7539 7539 アイナボホールディングス 712 4.67
9408 9408 9408 9408 新潟放送 1,070 3.43
  • ※SBI証券Webサイトの「スクリーニング(銘柄条件検索)」機能より作成。

2抽出銘柄のポイント

それでは表1で抽出された銘柄群のうち数銘柄について、チャートとポイントを簡単にご紹介します。

アクシ−ズ(1381);鶏肉の国内最大手です。創業以来、独自に改良した育種による鶏肉加工事業に着手しています。現在では飼料の製造から加工までの一貫製造体制を有しています。外食産業にも進出しており、KFCとピザハットの店舗運営と食肉卸が経営の柱となっています。食肉生産は市況低迷と飼料価格の高止まりで採算悪化となっていますが、外食の好調が収益の下支えとなっています。自己資本比率84%で手厚い内部留保を有しており、ほぼ無借金経営です。

ユナイテッド(2497);ネット広告とスマホゲーム開発を展開し、インターネット関連の未公開企業への投資事業も行っています。現在は投資事業が収益柱で、保有メルカリ株の売却益(今後は毎期50億円程度)を毎期計上しています。豊富な資金を背景に、今後はM&Aに積極的になるとみられます。不採算事業の整理が進行しており、株式売却益が無くても、利益が出せる体質に転換しつつあります。財務内容は優秀で実質無借金経営です。PBRで0.6倍程度まで株価は下落しています。相場全体のリバウンド時には、メルカリ株の評価も高まるため、高β株式としても注目されるのではないでしょうか。

パウダーテック(5695);1947年に日本で初めて活性鉄粉の開発をスタートした会社です。電子複写機用キャリアでシェア7割超。微細化と環境対応が進んでいます。この他には、カイロや化学還元用の鉄粉も生産しています。三井金属鉱業(5706)が大株主となっています。需要が安定しているうえ、高いシェアを背景に収益は高水準で安定しています。財務内容も優秀で、12月末の自己資本比率は80.7%で実質無借金経営となっています。

エスケーエレクトロニクス(6677);2001年に前身の写真化学からエレクトロニクス事業部門を分割して設立した、フォトマスクの専業メーカーです。FPDの技術進展に伴い、フォトマスクの高精細化対応や大型化対応を推し進め、第10世代、第11世代に対応した超大型フォトマスク製造工場を稼働させています。大型液晶パネル用では世界トップのシェアを持っています。新たな事業分野として、プリンテッドエレクトロニクス、RFID、ヘルスケアなどの事業育成にも注力中です。2月中旬に下方修正を行っていますが、潤沢な現預金を保有しており、実質無借金経営で、PCFR1.44倍は割安と言えそうです。

ケル(6919); 1990年にJASDAQに上場しています。電子機器向けのコネクター製造が主力の電子部品メーカーです。ほかにハーネスやラックなども手がけています。コネクターの製品ニーズは、年々小型化、高密度化、高速伝送対応へとシフトしていますが、同社は、高い技術力と一貫生産体制の確立をアドバンテージにして、オンリーワンの製品創出に注力しています。最終需要家は工業機器、医療機器、画像機器、車載機器と幅広いため、景気変動に対して収益が比較的安定している特徴があります。12月末の自己資本比率は80.1%で、実質無借金経営です。

図1 アクシ−ズ(1381)・日足

図2 ユナイテッド(2497)・日足

図3 パウダーテック(5695)・日足

図4 エスケーエレクトロニクス(6677)・日足

図5 ケル(6919)・日足

  • ※図1から図5は、当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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