7月に入り、企業業績にスポットが当たりやすい時期になりました。特に下旬以降は、主力の3月決算企業等の四半期決算が発表されるはこびになっており、投資家としては気の休まらない季節になりそうです。
現在は、決算発表が本格化する季節の直前という位置付けですが、実は「前哨戦」は始まっていて、2月決算企業を中心に、5月末を期末とする四半期決算の発表が本格化しています。東証1部市場では、セブン&アイ・ホールディングス(3382)、ファーストリテイリング(9983)、安川電機(6506)等主要銘柄の発表が行われ、株式市場は一喜一憂の状態になっています。
こうした中、今回の「新興株ウィークリー」では、5月末を期末とする四半期決算が好調な銘柄を抽出してみました。好決算が投資家に好感され、決算発表後に急騰している銘柄もあるようです。ただ、3月決算銘柄の発表時期に比べ、投資家の関心もそれほど集まっていないとみられますので、業績の割に株価が出遅れている銘柄も出てきそうです。
それではさっそく好業績銘柄の抽出を行ってみたいと思います。スクリーニング条件は以下の通りです。
(1)ジャスダック市場または東証マザーズ市場に上場する銘柄であること。
(2)時価総額100億円以上500億円未満の銘柄であること。
(3)2月末または、5月末、8月末、11月末を本決算期末とする銘柄であること。
(4)2020年5月末を期末とする四半期決算の発表が終わった銘柄であること。
(5)直近四半期(2020年3〜5月期)の営業利益が黒字で、前年同期比増益(黒字転換も含む)の銘柄であること。
(6)直近四半期(同上)の営業増益率が今期の会社予想営業増益率を上回っている銘柄であること。または実質、それに近い銘柄であること。
上記のすべての条件を満たした銘柄を直近四半期(2020年3〜5月期)の営業増益率の高い順に並べてご紹介したものが表1となっています。
ご存知の通り、2020年3〜5月は「緊急事態宣言が解除されるまでの約3ヵ月」の期間であり、日本経済がもっとも厳しい逆風にさらされていた時期ということができます。7/10(金)付「日本株投資戦略」同様、表1に多くの食品スーパーが含まれているように、これらの銘柄は、新型コロナウイルスの感染拡大という環境が逆に追い風になった銘柄ということができます。また、ドラッグストアなどは、マスクや衛生用品等に「特需」が発生し、好業績になった企業もあるようです。
なお、トライステージ(2178)は直近四半期の営業利益が前年同期比で黒字転換のため、(6)の計算に必要な増益率を計算できませんが、通期会社予想営業利益に対する進捗率が31.6%であり、1年の25%を経過した銘柄の進捗率として好評価が可能であるため、抽出銘柄としました。同様に、今期会社予想営業利益が未公表のアオキスーパー(9977)については、当四半期の営業利益が昨年1年間の営業利益の86.2%を獲得したため、やはり抽出銘柄としました。また、フィードフォース(7068)の2020年3〜5月期は2020年5月期の最後の四半期で、2021年5月期の業績に直接影響はしませんが、前年比で実質的に高い営業増益率になっており、抽出銘柄としました。
表1 2月末または、5月末、8月末、11月末を本決算期末とする好業績の新興市場銘柄
取引 | チャート | ポート フォリオ |
コード | 銘柄 | 株価 7月14日 |
直前四半期 営業増益率 |
今期予想 営業増益率 |
事業内容 |
2178 | 2178 | 2178 | 2178 | トライステージ(2) | 378 | 黒字転換 | 81.8% | 通販を支援 |
7068 | 7068 | 7068 | 7068 | フィードフォース(5) | 3,220 | ※5.5倍 | 55.0% | 広告出稿を支援 |
9977 | 9977 | 9977 | 9977 | アオキスーパー(2) | 2,700 | 277.2% | 未公表 | 中堅スーパー(名古屋) |
9976 | 9976 | 9976 | 9976 | セキチュー(2) | 1,820 | 129.0% | -51.0% | 食品スーパー(群馬) |
3080 | 3080 | 3080 | 3080 | ジェーソン(2) | 787 | 120.4% | 33.9% | 日常品等(千葉) |
1407 | 1407 | 1407 | 1407 | ウエストホールディングス(8) | 2,014 | 25.7% | 14.9% | メガソーラー開発 |
9903 | 9903 | 9903 | 9903 | カンセキ(2) | 2,740 | 14.5% | 1.5% | 食品スーパー(栃木) |
- ※各社株価データ、公表財務データをもとにSBI証券が作成。カッコ内は本決算月を示しています。直近4半期はすべて2020年3〜5月期を対象に示しています。なお、※印のフィードフォース(7068)は前年同月が単独ベースの営業利益ですが、ここでは単純計算しました。ここでは、直前四半期比で黒字転換のトライステージ(2178)を便宜的に、最上位に掲載しました。
7/14(火)付の「225の『ココがPOINT!』でもご紹介した通り、6月下旬頃から、我が国の新型コロナウイルス新規感染者数は再び拡大が加速し始め、7/11(土)には410人と4/25(土)以来の高水準となりました。数字だけ見れば、我が国は、新型コロナウイルスの感染拡大について、第2波の到来が懸念される状況になっていると考えられます。
ただ、不思議に株式市場もメディアも今回は反応が静かなように思われます。なぜでしょうか。それは、重症者が今のところ低水準にとどまっているためとみられます。新型コロナウイルスの感染対策として、重症者や死亡者の増加を抑えることが目標と考えるのであれば、現在は対策が機能していると評価することが可能になります。
すなわち、今後我々の生活が平常な状態に戻り、外食が回復し、「内食」の極端な需要増大が一巡するのであれば、2020年3〜5月期における食品スーパーやドラッグストアの好業績は「追い風参考値」として理解すべきということになり、同四半期の決算について好業績が発表された折は、いったん利益確定売りを優先させるという投資判断も成立することになります。アオキスーパー(9977)のチャート(図1)で見受けられる株価の乱高下についても、同様の理解が可能となりそうです。
ただ、国内の新型コロナウイルスの感染については、感染経路が不明の人の数も増えており油断は禁物です。東京都は感染状況の警戒レベルを「最高」に引き上げており、今後、飲食店等の営業が再び制限される可能性もあります。そうした動きが本格化してきた場合、食品スーパーやドラッグストアの株式が見直される可能性が大きくなってくると考えられます。
また、興味深いのは、在宅勤務の増加により、通販に巣ごもり消費増大の追い風が吹き、トライステージ(2178)の業績を押し上げたという点です。株式市場では同社を巣ごもり消費の関連銘柄と理解する向きは少なかったと見られ、今回の決算発表でそうした認識が投資家の間に生まれたとすれば、同社株にはプラス材料になるとみられます。
なお、フィードフォース(7068)は企業が様々な媒体に効率的に広告を出稿できる仕組み(データフィード)を提供している銘柄です。新型コロナウイルスの感染拡大により顧客企業への影響が懸念されますが、DX(デジタルトランスフォーメーション)進展等の大きな流れが追い風になっているように思われます。
図1 アオキスーパー(9977・日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
図2 フィードフォース(7068・日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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