株式市場は足元、夏枯れの様相が強い相場になっています。東証1部市場は8/17(月)以降、売買代金が2兆円を下回る日が続いています。一方、東証マザーズやジャスダックなど新興市場については、堅調な展開になっています。特に東証マザーズ指数は2020年の高値を更新してきています。世界的にグロース銘柄の堅調な値動きが続く中、我が国では成長が期待できる新興市場に投資家の資金が向かっているように見受けられます。
そこで、「新興株ウィークリー」では、堅調な動きを続ける新興市場で、物色対象として有望な銘柄はどのような銘柄なのか、検討してみることにしました。ひとつの考え方として、2020年4〜6月期の業績が好調で、しかも投資家の事前の期待を上回った銘柄については、今後良好なパフォーマンスが期待できるのではないかと考え、検証をしました。
2020年4〜6月期の業績が好調で、しかも投資家の事前の期待を上回った銘柄について、業績や株価の動きを検証してみたいと思います。
ちなみに、7/29付の「新興株ウィークリー」では市場が業績拡大を見込む新興市場銘柄の抽出を実施しました。その時のスクリーニング条件は以下の通りです。
(1)ジャスダック(スタンダード)市場または東証マザーズ市場に上場する銘柄であること。
(2)時価総額50億円以上の銘柄であること。
(3)3月末または、6月末、9月末、12月末を本決算期末とする銘柄であること。
(4)業績予想を公表しているアナリストが2名以上いる銘柄であること。
(5)当四半期(2020年4〜6月期)の市場予想(市場コンセンサス)営業利益が黒字で、前年同期比増益(黒字転換も含む)の銘柄であること。
(6)今期・来期の市場予想営業増益率が10%以上の銘柄であること。
上記のすべての条件を満たした銘柄について、(5)の当四半期市場予想営業増益率(ただし黒字転換を最上位とする)が高い順に並べたものが表1です。これらの銘柄は、当面の業績について、市場の期待値が高い銘柄であると「新興株ウィークリー」では考えました。
今回はこの表に新たに決算発表日とその日の終値、現状の株価を記載しています。これらの銘柄はおおむね、市場の期待に応え、市場コンセンサスを上回る四半期営業利益を確保し、場合によっては通期予想営業利益が上方修正されています。株価も決算発表日から上昇している銘柄が多くなっています。
表1 市場が業績拡大に期待した新興市場銘柄(3月、6月、9月、12月決算銘柄)、その現状は?
取引 | チャート | ポート フォリオ |
コード | 銘柄 | 株価 8/19 |
決算発表 月日 |
決算 発表日 終値 |
当四半期営業利益 | |
事前予想増益率 | 実績 | ||||||||
4293 | 4293 | 4293 | 4293 | セプテーニ・ホールディングス(9) | 262 | 7/30 | 191 | 黒字転換 | 黒字転換 |
6095 | 6095 | 6095 | 6095 | メドピア(9) | 4,435 | 8/13 | 3,760 | 260.2% | 388.2% |
3793 | 3793 | 3793 | 3793 | ドリコム | 747 | 7/30 | 623 | - | 386.4% |
3540 | 3540 | 3540 | 3540 | 歯愛メディカル(12) | 5,630 | 8/11 | 4,700 | 33.2% | 116.3% |
3923 | 3923 | 3923 | 3923 | ラクス | 2,723 | 8/13 | 2,536 | 27.3% | 78.5% |
4390 | 4390 | 4390 | 4390 | アイ・ピー・エス | 2,283 | 8/14 | 2,084 | 10.7% | 5.3% |
4970 | 4970 | 4970 | 4970 | 東洋合成工業 | 8,080 | 8/7 | 9,170 | 7.7% | 28.0% |
6556 | 6556 | 6556 | 6556 | ウェルビー | 1,685 | 8/13 | 1,411 | 7.0% | 22.6% |
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。銘柄名右が無印の銘柄は3月決算、同(9)とある銘柄は9月決算、同(12)とあるのは12月決算銘柄であることを示しています。「当四半期」は2020年4〜6月期を示しています。事前予想はBloombergが集計した市場コンセンサスとなっています。なお、ウェルビーの前年同期は単独決算で、便宜的に同社の事前予想や実績は前期の単独数値との比較になっています。なお、四半期決算は原則、累計で発表されるため、決算短信上の数字と表1の数字が異なる場合があります。なお、ドリコムは事前に会社側が業績予想を公表したため、市場予想は割愛しました。
セプテーニ・ホールディングス(4293)は9月決算銘柄で、7/30(木)に発表された当四半期累計(2019/10〜2020/6期)の営業利益は12.6億円と、前年同期の2.4億円の赤字から黒字転換しました。当四半期累計の営業利益は事前予想が12.3億円程度でしたから、それを上回ったことになります。また、決算発表とともに通期の業績予想も上方修正されました。図1にご紹介しているように、株価は5/28(木)の高値を上回り、新たなレンジに入ってきた形になっています。
メドピア(6095)は医師向けコミュニティサイト「MedPeer」を運営しています。この銘柄も9月決算銘柄で、当四半期累計(2019/10〜2020/6期)の営業利益は事前予想で6.7億円弱でしたが、実績では7.3億円(前年同期比92.2%増)となりました。決算発表を経て、通期の予想営業利益は8.2億円から10.7億円に上方修正されています。当社の「first call」は、新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策の一環として経済産業省が設置する「健康相談窓口」に選定されています。オンライン医療相談を活用して、生活者の健康不安の早期解消等を支援するこの事業は、時代の風を大きくとらえた事業といえそうです。株価は8/17(月)に年初来高値を示現し、同日の売買高は367万株に達しました。短期的には過熱感の高まりに注意かもしれません。
なお、ドリコム(3793)については、すでに会社側が2021/3期の第1四半期(2020/4〜6期)について、7/27(月)の取引終了後に6億円(従来は3億円)に上方修正するとの発表があり、株価は7/27(月)終値678円に対し、翌日は一時734円と好感されましたが、好材料出尽くし感から7/30(木)には安値593円まで下げています。7/30(木)に改めて決算発表が行われ、第2四半期累計(2020/4〜9期)の営業利益について9億円という予想数値が発表され、その後は再びジリ高に転じています。
東洋合成工業(4970)は第1四半期(2020/4〜6期)の営業利益が市場予想を上回り、それを受けて通期見通しも上方修正されました。フォトレジスト用感光材料を生産していますが、国内シェアが50%と高く、EUV露光装置向けに伸びているようです。予想PER等が高く、株式市場の評価は十分高まったと考えられますが、市場が成長しているため、押し目には買いが入ってきそうです。
図1 セプテーニ・ホールディングス(4293)・日足
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
図2 東洋合成工業(4970)・日足
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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