東京株式市場では日経平均株価の上昇が加速しています。米大統領選挙でバイデン氏が“当選確実”となったうえ、米製薬大手ファイザーが、独バイオ企業ビオンテックと共同開発中の新型コロナウイルス向けワクチンの臨床試験で、高い有効性を示したことなどが好材料となっています。一方、日経平均株価に比べて、東証マザーズやナスダックなど新興市場の値動きは不安定なように思われます。
そこで今回は、新興市場の決算発表結果を踏まえ、投資機会を探るべく、上半期の営業増益率が高い銘柄の抽出を試みました。割安感が強く、反転の機会が期待できる銘柄も多くあるようです。早速、チェックしてみましょう!
2020年最大級のイベントであった米大統領選挙は激戦となったものの、バイデン氏が当選確実となり、米国時間11/7(土)に同氏の勝利宣言が行われました。内外の株式市場は「イベントリスク」の後退を織り込むような形で本格的な上昇に転じ、さらに製薬大手ファイザーが、独バイオ企業ビオンテックと共同開発中の新型コロナウイルス向けワクチンの臨床試験で高い有効性を残し、経済活動の早期回復期待が高まったことなどから上昇が加速し、日経平均株価はおよそ29年ぶりの高値水準を回復してきました。
ただ、これまで米国株高をけん引してきたIT関連株を中心とするグロース銘柄は逆に売られる展開となりました。ナスダック総合指数は11/9(月)の取引時間中に9/2(水)以来の12,000ポイント台を付けた後下落に転じ、11/9(月)と11/10(火)は続落に転じています。これを受けて、我が国の新興銘柄も11/10(火)は急反落と、逆行安を演じる展開になっています。これまで上昇をけん引してきたIT関連株を中心とするグロース銘柄の下げが目立ちました。
図1は東証マザーズ指数の日足チャートと25日移動平均線、25日移動平均線からのかい離率等を示したものです。一般的に、25日移動平均線から±7〜±8%かい離すると「行き過ぎ」とみなされ、相場は逆方向に反転しやすくなると考えられています。東証マザーズ指数は11/2(月)に25日移動平均線からのマイナスかい離が8.9%まで拡大し、いったんは「売られ過ぎ」となっていることを示しました。株価的にも11/2(月)安値の1,146ポイントが下値抵抗線の形になり、11/11(水)の東証マザーズ指数は反発する兆しをみせています。
表1は新興市場(東証マザーズ市場およびジャスダック市場)の時価総額上位銘柄について、株価推移や業績動向を示しています。東証マザーズ市場で時価総額トップのメルカリ(4385)などは、52週高値(10/14の5,930円)からの下落率がすでに32%に拡大しており、調整が拡大しています。同社は四半期単位でみた場合、2020/4〜6期、2020/7〜9期と営業黒字に転換していますが、株価はすでに業績好転を織り込んで推移しており、足元は調整局面が進んでいます。
11/11(水)〜11/13(金)には、主力の新興市場銘柄の多くが決算発表を予定しており、個別に明暗が分かれる可能性が出てくるとみられます。当面は決算発表をチェックし、反転の機会をうかがいたいところです。
図1 東証マザーズ指数(日足)と25日移動平均線かい離率
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。日経平均日足と25日移動平均線、そこから±2.5%、±5.0%、±7.5%かい離した線を1枚のグラフの上に重ねて表現したものです。
表1 新興市場時価総額上位企業の業績・株価動向
コード | 銘柄名 | 決算期 | 株価 | 52週高値比 | 時価総額 (百万円) |
四半期・通期 営業増益率 |
通期予想 営業増益率 |
7564 | ワークマン | 3月 | 9,180 | -13.2% | 752,991 | 28.1% | 14.0% |
6324 | ハーモニック・ドライブ・システムズ | 3月 | 7,220 | -5.1% | 696,360 | 11/11(水) | - |
4385 | メルカリ | 6月 | 4,015 | -32.3% | 651,398 | 赤字 | - |
2702 | 日本マクドナルドホールディングス | 12月 | 5,100 | -18.7% | 683,414 | 11/12(木) | - |
3923 | ラクス | 3月 | 2,228 | -10.7% | 384,722 | 11/12(木) | - |
4478 | フリー | 6月 | 8,360 | -21.1% | 373,696 | 11/11(水) | - |
6027 | 弁護士ドットコム | 3月 | 13,290 | -16.3% | 294,539 | -58.2% | - |
4483 | JMDC | 3月 | 5,020 | -19.3% | 253,857 | 24.7% | 42.2% |
2782 | セリア | 3月 | 3,950 | -21.3% | 293,122 | 19.4% | 8.2% |
4816 | 東映アニメーション | 3月 | 6,940 | -5.8% | 299,040 | -13.5% | -37.9% |
2484 | 出前館 | 8月 | 2,830 | -27.0% | 237,481 | 赤字 | 赤字 |
4477 | BASE | 12月 | 10,860 | -37.0% | 208,267 | 11/13(金) | - |
4488 | AIinside | 3月 | 64,600 | -11.0% | 245,947 | 11/11(水) | - |
3994 | マネーフォワード | 11月 | 9,200 | -13.6% | 217,482 | 赤字 | 赤字 |
4443 | Sansan | 5月 | 6,620 | -15.9% | 197,732 | -22.1% | 0.0% |
4480 | メドレー | 12月 | 5,910 | -19.8% | 170,765 | 11/13(金) | - |
7716 | ナカニシ | 12月 | 2,000 | -11.1% | 191,535 | -22.1% | -22.5% |
4485 | JTOWER | 3月 | 7,440 | -11.7% | 151,888 | - | 334.8% |
7779 | CYBERDYNE | 3月 | 748 | -9.3% | 156,196 | 11/13(金) | - |
4479 | マクアケ | 9月 | 11,070 | -19.6% | 125,894 | 308.5% | 21.6% |
- ※表1はBloombergデータ、会社公表データをもとにSBI証券が作成。
- ※11/11(水)〜11/13(金)に決算発表予定の銘柄については、業績数値でなく、決算発表予定日を掲載。
- ※四半期決算は直近四半期までの累計数値の変化率(前年同期比)。直近が本決算の場合は通期の数字。
- ※この資料は客観的データを示す目的で作成されており、銘柄の推奨を意図しておりません。
- ※当レポートが発行される時点では、11/11(水)に決算発表予定の銘柄について業績数値が明らかになっているとみられますが、この表には業績数値を掲載しておりません。
そうした中、決算発表をすでに終えた新興市場銘柄のうち、今後も業績拡大傾向を評価されると期待される銘柄はないのでしょうか。
表2の銘柄は、
(1)新興市場(東証マザーズ市場およびジャスダック市場)に上場している銘柄であること。
(2)時価総額が100億円以上の銘柄であること。
(3)11/10(火)までに2020/7〜9期の決算発表を終えた銘柄であること。
(4)上半期(2020/4〜9期)の営業利益が黒字で、前年同期比増益の銘柄であること。
(5)上記(4)の増益率が通期(2021/3期)の会社予想営業増益率を上回っている銘柄であること。
以上の条件をすべて満たした銘柄について、(4)の営業増益率が大きい順に10銘柄を並べました。(5)まで含めて考えると、業績予想が上方修正される可能性も大きく、株式市場で注目される可能性は小さくないと思います。
なお、今回の分析では、対象を3月決算銘柄に絞りましたが、これは分析を簡便に行うための条件であり、他の決算期の銘柄で同様に銘柄を選ぶこともできると思います。他の決算期の銘柄を含めた分析は機会を改めて行いたいと思います。
抽出された銘柄のうち、JTOWER(4485)とJストリーム(4308)を除く8銘柄はジャスダック銘柄です。ここでは、予想PERの高低を銘柄選択の条件にはしていませんが、ジャスダック銘柄が多かったためか、予想PERが低い銘柄も目立ちました。新興市場銘柄の株価下落の一因に「割高感」が指摘されていますが、それはおもに東証マザーズ銘柄に当てはまる要因で、逆にジャスダック銘柄の中には、割安な水準に放置されている銘柄も多く、今後株式市場で出遅れを評価される可能性もありそうです。
表2 上半期に大幅営業増益を達成した新興銘柄(時価総額100億円以上・3月決算)
取引 | チャート | ポート フォリオ |
コード | 銘柄 |
株価 |
2020/4〜9期 営業利益 |
2121/3期予想 営業利益 |
2454 | 2454 | 2454 | 2454 | オールアバウト | 948 | 33.6倍 | 67.2% |
4485 | 4485 | 4485 | 4485 | JTOWER | 7,630 | 18.7倍 | 330.9% |
2221 | 2221 | 2221 | 2221 | 岩塚製菓 | 3,805 | 15.2倍 | 107.5% |
4308 | 4308 | 4308 | 4308 | Jストリーム | 4,765 | 557.5% | 229.0% |
9890 | 9890 | 9890 | 9890 | マキヤ | 1,215 | 420.2% | 157.5% |
4644 | 4644 | 4644 | 4644 | イマジニア | 1,115 | 158.8% | 6.5% |
2790 | 2790 | 2790 | 2790 | ナフコ | 2,181 | 154.8% | 138.0% |
3891 | 3891 | 3891 | 3891 | ニッポン高度紙工業 | 1,839 | 146.8% | 90.9% |
4771 | 4771 | 4771 | 4771 | エフアンドエム | 1,471 | 127.6% | 19.8% |
6777 | 6777 | 6777 | 6777 | santec | 1,898 | 110.9% | 17.4% |
- ※各社株価データ、公表データをもとにSBI証券が作成。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
- ※NISA口座で上場株式等の配当金を非課税で受け取るためには、配当金の受領方法を「株式数比例配分方式」に事前にご登録いただく必要があります。
- ※信用取引において必要となるその他諸費用の詳細は信用取引のサービス概要をご確認ください。