米国ではバイデン新政権の発足を控え、「環境」や「再生エネルギー」などが再び注目され、関連銘柄の物色が本格化しつつあります。そうした中、「炭素」に依存した世の中から脱却するには「水素」が不可欠との認識が深まっており、日本の株式市場でも「水素」や「燃料電池」に関連した銘柄が脚光を浴びつつあります。中でも水素関連銘柄の代表的な企業の1つとされる岩谷産業(8088)の株価は9月末に4,000円を割っていましたが、12/8(火)には6,000円台まで上昇しています。
今回の新興株ウィークリーでは、「水素」や「燃料電池」に関連した中小型株を中心にご紹介します。意外性が強く、2021年にかけて株式市場での活躍が期待される銘柄も少なくないとみられます。
東京株式市場は11月、歴史的な大幅高になりました。
日経平均株価は月間で15.0%上昇し、1994/1以来の高い上昇率となりました。米大統領選挙の終了や新型コロナウイルス向けワクチンの開発進展などにより、リスクマネーの動きが活発になりました。
これに対し、東証マザーズ指数の11月の上昇率は5.2%にとどまり、パフォーマンスは日経平均株価に対して大きく劣後する結果になりました。それまでは中小型株、特に東証マザーズ指数のパフォーマンスが日経平均株価を構成する大型株を大きく上回っていたため、株式市場全般では平準化が進んだ格好となりました。
なお、東証マザーズ市場の上昇をけん引してきたデジタル関連銘柄は、新型コロナウイルスの感染が長期化するウィズ・コロナの局面で強みを発揮しやすい傾向にあります。一方で、ワクチン接種の現実味が増したアフター・コロナが意識される局面では、日経平均株価を構成する景気循環株にスポットが当たりやすいという面がありました。
ちなみに、米国では長期化する低金利が、デジタル関連銘柄を中心とするグロース銘柄を下支えしてきたと考えられますが、新型コロナウイルスの拡大自体は世界的に一層深刻化しており、主要国の中央銀行が緩和的金融政策の手綱を緩められない状況にあります。そのため、中小型株の下げも本格化には至らず、図表1で示されているように、東証マザーズ指数の下げは一巡の様相を呈しています。
そうした中、日本の株式市場は米国でのバイデン新政権の発足が意識され、「環境」や「再生エネルギー」などが再び注目を集め、関連銘柄の物色が本格化しつつあります。そうした中、「炭素」に依存した世の中から脱却するには「水素」が不可欠との認識が深まっており、株式市場でも「水素」や「燃料電池」に関連した銘柄が脚光を浴びつつあります。中でも水素関連銘柄の代表的な企業の1つとされる岩谷産業(8088)の株価は図表2で示した通り、9月末に4,000円を割っていましたが、12/8(火)には6,000円台まで上昇しています。
図表1 東証マザーズ指数(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
図表2 「水素」「燃料電池」が脚光を浴び、上昇基調を強めた岩谷産業(東証1部・8088)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
気候変動への国際的な取り組みを決めた「パリ協定」からの離脱に象徴されるように、トランプ政権下の米国(2017〜2020)では、まるで時計の針を巻き戻すかのように、「環境保全」に向けた取り組みは大きく後退し、それを受けた株式市場でも「環境」や「再生エネルギー」への注目度は大きく低下していました。しかし、2020/11/3(火)に投票が行われた米大統領選挙では、「環境保全」を重視する民主党のバイデン氏が「勝利」し、株式市場では再び、「環境」や「再生エネルギー」に対する注目度が上昇しています。
それに先立つ10/26(月)、菅首相は、この日に開会した臨時国会の所信表明演説の中で、米国の「政策転換」を先取りするかのように、2050年に温暖化ガス排出を実質ゼロとする「カーボンニュートラル宣言」を表明しました。これにより、「太陽電池」など「再生エネルギー」や「電気自動車(EV)」に対する注目度はさらに高まっているようです。
そうした中、12/8(火)付の日本経済新聞では、日本政府が国内での「水素」利用を2030年時点で1,000万トン規模とする目標を設ける調整に入った旨、報道しました。民間の取り組みも強まっており、12/7(月)には、トヨタ自動車(7203)や岩谷産業(8088)など88社が、水素インフラの整備を進める「水素バリューチェーン推進協議会」を立ち上げたことを発表。また、12/9(水)には、トヨタ自動車が航続距離を3割伸ばし、使い勝手を向上させた燃料電池車の新型「ミライ」を発売するなど、関連する話題が続いています。
今回の新興株ウィークリーでは、SBI証券の銘柄検索ウインドウに「水素」または「燃料電池」と入力することで出力される関連銘柄と、報道等で「水素」関連または「燃料電池」関連銘柄と紹介される銘柄から、ジャスダック市場または東証マザーズ市場に上場する銘柄に絞り、図表3にご紹介します。ただし、直近四半期が営業赤字であったり、「継続企業の前提」に疑義が生じているような経営不振とされる企業は除外しています。
図表3 新興市場の「水素」「燃料電池」関連銘柄
取引 | チャート | ポート フォリオ |
コード | 銘柄 | 株価 (12/9) |
活躍が期待される分野 |
4080 | 4080 | 4080 | 4080 | 田中化研 | 1,280 | 住友化学の子会社。電極材料 |
4394 | 4394 | 4394 | 4394 | エクスモーション | 1,436 | 自動運転、燃料電池車開発等を支援 |
6497 | 6497 | 6497 | 6497 | ハマイ | 1,734 | 燃料電池向け高品質バルブ |
6824 | 6824 | 6824 | 6824 | 新コスモス電機 | 1,790 | 水素関連設備の保安 |
6834 | 6834 | 6834 | 6834 | 精工技研 | 2,638 | 燃料電池セパレーター |
7298 | 7298 | 7298 | 7298 | 八千代工業 | 630 | 水素ステーション蓄圧タンク |
7826 | 7826 | 7826 | 7826 | フルヤ金属 | 6,100 | 水素製造用材料。有機EL向けも |
9888 | 9888 | 9888 | 9888 | UEX | 502 | 水素ステーション用ステンレス鋼板 |
- ※報道等をもとにSBI証券が作成。
- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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